コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

読書感想 ひきこもりはなぜ「治る」のか?―精神分析的アプローチ

 

 

生きづらい時代なのだと思う。

非常に得るところが大きい本だった。

引きこもりをしたら、仕事をするように叱咤激励したくなるがそれは、逆効果であるというのは非常に勉強になった。

また引きこもりの青年は一見、プライドが高そうに見えるが、それは自信のなさの裏返しであり、プライドの高さを否定してはいけないというのもその通りだ。

また引きこもりの治療には、多くの人間関係を持つことが重要であるというのも、まさにその通り。

精神分析的には他者を取り込むという概念があるそうだが、自分自身の成長を振り返っても人の縁と人から頂いた生きた知恵が自分を成長させてくれた。

そしてゴールが自由になるというのは興味深い。

自由とは、文字通り自分に因るということである。

自分に因るには逆に、他者との関係が必要であるというのはパラドキシカルだが実に腑に落ちる感覚である。

何を隠そう自分も高校時代は、ほぼ引きこもりであった。

学校には行っていたが、ほとんど誰とも喋らずふてくされていた。

確かにそのころはプライドだけが妙に高かったが、成績も悪く友達もほとんどおらず自信なんてなかった。

とはいえそのような引きこもりは社会悪のようだが、必ずしもそうでもないのだと思う。

私も高校時代は独りの世界にこもって、本を読んでいたのを思い出す。

その経験が、今に生きているのだと実感できる。

親が押し付けてもダメで、いかに本人が自発的に何かをするように誘導するかが大切とのことだが、それもとても理解できる。

私が変ることが出来たのは、浪人前に自分で医学部専門予備校に行きたいと親に言ったことがきっかけだったと思う。

引きこもりが「治る」には、自発的に本人から言い出すことが大切なのだ。

大学になっても当初は、友達も少なかった私だが、部活のつながりや友達が増えることで自信も出てきた気がする。

やはり、人間関係を多く持つことが重要なのだ。

著者の斎藤氏は子供は座敷童なのだという。そのような距離感で押し付けるのではなく、お願いをして、願いを聞いてもらえれば儲けもの程度の態度が良いのかもしれない。

誰にでも一人の時間は必要で、時にそれが人生を豊かにするということなのだ。

教育者としての自分自身を見つめ直す、とても良い機会となった本だった。

最後に、頭を複雑に行動をシンプルにという言葉が確かにあったと思う。

このような知識や理論があることで、人間の深みが出ることを期待したい。