コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

救急×緩和ケア

今度、勉強会で使用するため読んでみました

素晴らしい本ですね。

実際、総合診療医らしいER診療や急性期診療をやっているなと、自覚するときってほぼこの本に書いている内容なんですよね。

特に、急性期での看取りをどのようにするか。症状緩和をどうするかというのはとても重要な視点で、総合診療医にとっては必須の視点です。

自分がしていることと、ずれてなくて安心しましたし、それが言語化されているので後輩に伝えるにもよいと感じました。

 

以下、印象に残ったところを。

ERでもIllness trajectoryが大切というのはその通り 

医学書院/週刊医学界新聞(第3047号 2013年10月14日)

医学書院/週刊医学界新聞(第3047号 2013年10月14日)

特にフレイルな高齢者が増えているので、今までの経緯やADLの低下のスピードなどillness trajectoryを意識して病歴をERでも確認することは極めて重要です。

 

Karnofsky Performance StatusなどでADLを評価することはERでも確かに重要です

https://oncolo.jp/dictionary/kps

図1

予後予測をある程度外さずにできると、確かに家族への説明も非常にスムーズになると思いますし、先を読んだ病状説明が出来るようになります。

 

救急の不安定な患者へのアプローチとして、ACP、症状改善、代理意思決定者、患者の意思決定能力を評価するというのは分かりやすいですね。

本来はERでも多職種での評価が重要で、救急外来から緩和ケアチームや看護師、ソーシャルワーカーと連携できることが理想なのでしょうね。。

 

スピリチャルペインは重要だと思う反面、宗教感の違いで難しいといつも思いますが、やはり傾聴とお別れの時間を作る、医師としての自分自身をメタ認知して悲嘆反応を和らげるようにんするなどの工夫が必要なのでしょうね。

救急外来でチャプレンを呼ぶというのは本当は必要で、日本でも臨床宗教師が広がってほしいなと感じます。

スピリチュアルペインに関しては、臨床宗教師にコンサルというのが日本でも浸透してほしいと感じますね。

 

Bad news tellingで有用なSpikeはERでも重要と言うのはその通りですね。

S:setting  面談のセッティング。

P:perception 患者の理解度を把握する。

I:invitation  患者がどこまで何を知りたいかを把握する。

K:knowledge 知識、情報を伝える。

E:empathy  患者のおかれている状況や感情に共感的に接する。

S:strategy  理解度を確認し方針を提示する。

 

死亡を伝えるときのGRIEV INGという覚え方面白いですね。

自分が普段やっているときのアプローチとほぼ同じですが、言語化されると改めてスッキリしますね。

家族を集めて、十分説明し、受け入れる時間を作り、質問に丁寧に答え、最後に御遺体に対面していただき、声をかけるという感じでしょうか。。

 

あとERからホスピスに紹介することができるというのも非常に面白いですね。日本ではまだ難しいかもですが、麻生飯塚みたいに救急をガンガンとりつつ、緩和ケアがアクティブなら可能かもしれません。

当院も、そういう取り組みしたいですね!

 

心肺停止中止のステップも銘記されていて実践的と感じました。

終末期におけるactive dyingというのも直感的に行っていましたが、きちんと言語化することも重要ですね。

最後に臨床倫理と救急という章もありますが、この本でも非常に重要なポイントですね。

実際に意思決定支援をどうするか、代理意思決定者はだれか、どのように話すか、など悩ましい問題がありますね。

さらに在宅や病棟と違って多職種でゆっくりと話す時間がないですし、そもそもDNARを考えたことがないという場合もよくあります。

さらに治療をどこまでやるか、いつ中止するかというのも非常に難しい問題ですが、倫理の原則に準じ、患者にとってQOLを含め最善はなにかをその都度自問自答するしかないのでしょうね。。

全てのERに関わる医師にお勧めできます。

総合診療やERを目指す先生は読んで損はないと思います。