コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

MM (Maltimorbidity)は肺炎の予後悪化要因か?

https://www.clinicalmicrobiologyandinfection.com/article/S1198-743X(14)00084-6/fulltext

 

Maltimorbidityは肺炎患者の予後悪化要因か?

 

市中肺炎で入院した患者の退院後の予後を追跡する多施設前向きコホート研究

 

◯Patient

市中肺炎(CAP)の患者が対象

6874人の患者のうち5%は入院中に志望したため除外

入院情報がない患者や介護施設入居者も除外

→5565人をinclude

 

. Mean age  57 (SD 20) years, 2240 (40%) were 65 years of age or older, 2977 (54%) were male, 3283 (59%) were treated as outpatients (i.e. treated for CAP and discharged to the community from the ED),

5054 (91%) were functionally independent prior to their CAP

mean PSI was 75 (SD 39), and 1649 (30%) had severe (PSI class IV or V) pneumonia. 

→普段の日常診療で見ている患者よりも若い

 

◯Exposure

Maltimorbidity(2つ以上の併存疾患があると定義)

併存疾患は以下の疾患を使用

Chronic conditions included a history of any nonskin cancer, chronic liver disease, heart failure, stroke, ischemic heart disease, renal disease (including chronic kidney disease and end-stage renal disease requiring dialysis), asthma, COPD, diabetes, seizures, and neuropsychiatric disorders

理由はPSIスコアやチャールトンスコアで使用されているから

 

◯Outcome

主要アウトカムは、退院後90日以内の死亡または入院

副次的アウトカムには、主要アウトカムの構成要素(死亡または入院)と救急外来受診。

 

◯結果

MM患者は非MM患者より高齢で重症度も高く、入院する傾向。

MMは90日以内の死亡 or  入院のいずれかの複合アウトカムと強く関連

37% vs. 17%, adjusted hazards ratio [aHR]: 1.43, 95% CI: 1.26 to 1.62)

死亡と入院のどちらも同様にMMで増加

(7% vs. 1%, aHR: 3.02, 95% CI: 1.98 to 4.62 for death within 90 days of CAP discharge; 35% vs. 16%, aHR: 1.43, 95% CI: 1.26 to 1.63 for hospital admission within 90 days of CAP discharge)

 

さらに3つ以上の併存疾患がある場合は、90日死亡or入院がさらに悪化する。

(42% vs. 12%, aHR: 2.13, 95% CI: 1.76 to 2.58).

 

MMは65歳以上でも65歳未満でも同様に効いてくる。 interactionも検討

Second, we found that multimorbidity was significantly associated with prognosis in both young (<65 years aHR: 1.71, 95% CI: 1.39 to 2.11) and old (≥65 years aHR: 1.31, 95% CI: 1.13 to 1.52) alike (p 0.02 for interaction).

 

 

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診断困難症例への対応 @ 順天堂大学 総合診療科

順天堂大学総合診療科で、診断困難症例への対応をレクチャーさせていただきました。

その内容を一部、公開します。

順天堂大学総合診療科は活気があり非常によい雰囲気でした。

内藤教授、宮上先生、本当にありがとうございました!

 

診断力をアップさせるために、以下の本はお薦めです!

繰り返す横紋筋融解症

小児期から横紋筋融解症をなんども繰り返す

聞けば双子も同様のエピソードがあると。

これは、先天性の要素がある?

 

 

ojrd.biomedcentral.com

 

 

先天性の横紋筋融解症のレビュー

横紋筋融解症だと薬剤やウイルス、中毒などを考えがちだが、先天的な要素もあると記載されいてる。

麻酔による悪性症候群を起こしやすい遺伝子もあると。

先天性の要素と、後天的な要素が組み合わさって横紋筋融解症を発症する可能性あり

 

 

家族歴、運動で誘発される横紋筋融解症がこれらの病態を疑うきっかけとなる。

なお、発熱やウイルス感染もトリガーとなりえる。

 

→繰り返す横紋筋融解症のトリガーによって遺伝子変異とやるべきことがわかる。

運動、気温、感染、薬剤/アルコール、精神的ストレス、食事などがトリガーとなりえるとのこと。

→皮膚生検、筋生検、遺伝子検査などを行う。

 

小児科領域では知られているのかもしれないが、小児期から特定のトリガーで繰り返し、家族歴を伴う横紋筋融解症の病歴がある場合は、これらの遺伝子変異の可能性を念頭におく必要がある。

 

 

 

JPCA 学術大会 2023 医科歯科連携 教育セミナー

活動報告 JAPEP JPCA学術大会 JAPEPからの提言 活動報告

 

 

企画責任者:森川 暢(市立奈良病院 総合診療科)

座長:松本 真一(悠翔会在宅クリニック葛飾

橋本 忠幸(大阪医科薬科大学

 

演者:

松本 朋弘(練馬光が丘病院)
宮上 泰樹(順天堂大学医学部総合診療科)
戸原 玄(東京医科歯科大学摂食嚥下リハビリテーション学分野)
今田 良子(東京医科歯科大学摂食嚥下リハビリテーション学分野)

福添 恵寿(川西市総合医療センター 診療看護師)

 

私が代表を務める、Japan Aspiration pneumonia inter Professional team Educational Program(JAPEP)では、今まで誤嚥性肺炎に関する多職種連携のプログラムを実施していました。この度、新しいメンバーとして、歯科医の今田先生と看護師の福添さんに、メンバーに入っていただきました。今回は、新しいメンバーも加えて医科歯科連携をテーマに、日本プライマリ・ケア連合学会学術大会2023@愛知において、教育講演を行いました。その内容をダイジェストでお伝えします。

 

 

*JAPEPは「2019年度GSK医学教育助成」による事業です。これは、医学関係学会/医会が独立して企画・運営する医学教育事業を助成する事業であり、日本プライマリ・ケア連合学会の正副理事長会議の承認を得て実施されています。

 

今田先生・宮上先生コラボ

前回のセッションで取り上げた今田先生と宮上先生の「夢のコラボ」をテーマに教育講演をしていただきました。歯を喪失しているのに義歯を使用しないことは上昇と関連があるとされています。義歯は噛む力が弱くなるため、健康歯と口腔機能を保つことが重要です。さらに口腔環境の悪化は、肺炎の発症のみならず、フレイルの悪化、認知機能低下との関連があるとされています。このように重要な口腔ケアは重要で、高齢者ほど、う歯が増加し、歯科受診が重要ですが、75歳を境に歯科受診がむしろ減少することが重要な課題となっています。

要介護者の大半は歯科コンサルトが必要にも関わらず、実際に歯科受診になるのは3割弱となるというデータもあり、高齢者の歯科受診を行うことが重要となります。

 

そのためにも訪問歯科も利用しつつ高齢者を歯科受診につなげることが重要となります。さらに抜歯に関する全身状態の対診などくらいが医科と連携する機会がないということも課題となります。また、歯科介入のエビデンスが不足しているということも課題です。よって、今田先生と宮上先生の夢のコラボである臨床試験を開始しました。江東高齢者医療センターに入院した誤嚥性肺炎患者に対して週に1回、今田先生が口腔ケアをしてくださった結果、1か月以内の誤嚥性肺炎の再発率が76.1%→45.9%まで減少しました。この臨床試験でも使用したのがOHAT(Oral Health Assessment Tool)です。使い方としては明らかに病的所見なら歯科依頼ですが、義歯不良、口腔不衛生、齲歯・残存歯も、歯科依頼を行うことがポイントになります。

*OHAT 赤文字のところが1つでもあれば、歯科介入をする。



では口腔ケアは実際にどのようにすればよいでしょうか?ポイントは、以下のとおりです。

口臭が強ければ速やかに口腔ケア徹底をすることを心がけること

痰があれば、痰を取る

乾燥痰はそのままとらず、保湿剤でふやかしてからとる(特にジェル状がお薦め)

舌苔があれば保湿剤塗布後、柔らかい部分歯ブラシやスポンジブラシを使用し粘膜を傷つけないように除去する。(こちらも乾燥は天敵)。

就寝時などは特に乾燥しやすいので注意。

気付いた時に、湿潤にする(口腔ケア、飲水、その他)

 

また、具体的な手順も以下のとおりです。

  • 口腔内咽頭内に貯留した唾液や痰を吸引
  • 乾燥した口腔内痂皮は保湿剤で湿潤
  • 歯があれば歯ブラシでプラーク除去
  • スポンジブラシ、ガーゼ、ワンタフトブラシなどで痂皮を除去

 

他のポイントとしては、義歯は放置せず管理をすること、要介護高齢者では、普段口腔内をあまり動かさない方は食事の時急には動かせないため準備をしてから口を動かすようにする、ということが注意点になります。

最後に、医科歯科連携を通じて、医師と歯科がお互いの仕事を知ることが重要であると認識されました。今田先生のファンが江東高齢者医療センターで増えたというのも印象的でした。

コラボレーションにより医療の質が改善し、さらに研究にもつながるというのは素晴らしいことだと感じました。

 

福添さん 講演

看護師は口腔ケアや誤嚥性肺炎診療で中心的な役割を果たしますが、実際は課題が多いようです。現実的に看護師の人数が足りないないという問題があり、病院によっては13:1看護で急性期病床を回すこともありえるため、口腔ケアまで手が回らないということが現実です。(7:1看護の急性期病棟であっても非常に忙しい状況では同様に手が回らないことが想定されます。)また、特に夜勤では看護師の数も少なく、さらに口腔ケアのみならず、認知症管理、褥瘡管理、手術のオペ出しやオペ迎え、緊急入院への対応など看護師の業務は多岐におよび、さらにデスクワークもあります。現実的な問題としては、看護師が行う口腔ケアにたいして加算がつくことや病院が充分な時間や研修を確保することが重要となると考えられます。また上記のような看護師の多種多様な分野とどのようにバランスを取るのかが重要になります。看護師は良くも悪くも横に倣えというところがあるので、看護師全体が口腔ケアに興味を持ち、行うように一歩を踏み出す取り組みが重要になるかもしれません。

 

松本先生講演

医師と歯科のダブルボードの立場でご講演をいただきました。問題点として急性期病院の80%は歯科部門を持たないということが挙げられました。宮上先生のご講演と同様の課題として、かかりつけ歯科を持つことが重要であり、急性期病院と診療所などを循環するPatient journeyを意識して、切れ目のない医科歯科連携を提供することが重要です。そのためにも、医科歯科連携の第一歩として、患者さんがもう一度、あるいは初めてかかりつけの歯科医を持つことが重要になります。特に高齢者ほど、かかりつけ歯科を持つことが重要です。医科歯科連携を勧めるためのステップは以下の3つに大別されます。

第1ステップ: 急性期病院を患者さんの歯科医療との出会いの場として確立する。

 第2ステップ: 在宅・介護現場での歯科介入をシステム化する。

第3ステップ: 歯科通院から訪問歯科診療まで、切れ目なく(亡くなるまで)患者さんに寄り添える歯科医療の確立(Dental Extensivist Model)

この一環として、歯科のない急性期病院における,“看護師が“かかりつけ歯科医への橋渡しモデルが紹介されました。



これは入院した患者を全例、看護師がOHATでスクリーニングを行い、OHATで基準を満たせば、院外の訪問歯科に介入を依頼するというシステムです。さらに訪問歯科は退院後も関わり続けることで、かかりつけ歯科を再構築するというシステムでもあります。実際に、入院中に訪問歯科が介入したうち43.8%は退院後も歯科が介入を継続することが可能になりました。

また練馬光が丘病院では総合内科チームに歯科が所属し、合同回診を行ったり、早期の歯科介入を行い、さらに退院後も訪問歯科と連携するという先進的な取り組みも始まっているようです。

 

戸原先生からのビデオメッセージ

戸原先生が歯科になってすぐは嚥下のことは実はほとんどご存知なかったようです。しかし、訪問診療を戸原先生がされるようになってから、実は嚥下障害の患者さんが非常に多いことに気づかれたようです。また口のみならず全身を診ることで嚥下障害の患者さんに対応することで改善する例を多数経験し、学会発表でも認められることで、嚥下障害に携わることの重要性に気づかれたようです。もともと、実家の歯科医院を継ぐことを考えておられた戸原先生ですが、これらの活動を通じて歯科医として嚥下障害にかかわることがライフワークとなられたようです。そして、嚥下内視鏡の普及、後進の育成、嚥下障害マップの作成、広報活動など多種多様な活動を通じて嚥下障害の診療に携わってこられました。戸原先生から我々の医科歯科連携の取り組みについて応援をいただき、本当に嬉しかったです。

*なお、戸原先生をはじめて東京で働いていた病院に講演にお招きしたときに、2人で錦糸町に飲みに行ったのは良い思い出です。

 

まとめ

JAPEPとして我々が提言したいことは、急性期病院や在宅医療など幅広い領域での医科歯科連携の推進、広い意味での歯科を中心とした多職種連携の構築、そして将来的には医科歯科連携のエビデンスの構築を目指し、急性期および在宅医療など幅広い領域で医科歯科連携に加算がつくような仕組みの構築を目指すことです。JAPEPの取り組みに賛同いただける多職種の皆様は、ぜひ、一緒に活動をしていただければ幸いです。

japep.jp

 

ミミッカーを探せ  感想

www.chugaiigaku.jp

臨床推論の落とし穴 ミミッカーを探せ!

 

献本御礼

長野先生からいただきました!

臨床推論の直感的診断のエラーを防ぐための戦略であるPivot and Cluster Strategyの実践本であり若手医師の診断力を伸ばす本です。

臨床推論を実践するためには古典的には主訴別の分析的な方法が用いられています。

例えば、胸痛の鑑別として、心筋梗塞、肺塞栓、大動脈解離、気胸を考えるなどの方法になります。

この方法は経験が乏しい初心者でも実践が可能です。

臨床の経験を積むと、これらの疾患の経験を積むことになります。

よって、この胸痛は心筋梗塞らしいという直感的診断が可能になります。

ただし、直感的診断には落とし穴があるというのは、これが本書でいうミミッカーです。

つまり、心筋梗塞にぱっとみ見えるが、実は心筋梗塞ではないという状態がミミッカーになります。

心筋梗塞だと思って、ヘパリンを使用したら大動脈解離だったというのは典型的なミミッカーになります。

特に、ある程度経験を積んだ、後期研修医レベルではこの落とし穴にハマりがちです。

あるいは、リウマチ性多発筋痛症と診断し、治療をしてみたら、悪性腫瘍や感染し心内膜炎だったということが例に上がります。

これらを防ぐための戦略が、Pivot and Cluster Strategyで、心筋梗塞らしいと直感的に診断した場合に、大動脈解離のみならず、たこつぼ型心筋症、冠攣縮性狭心症、急性死筋炎、特発性冠動脈解離などのCluster(鑑別疾患)を挙げることをルーチン化して、ミスを防ぐという戦略です。

この戦略は関節リウマチやリウマチ性多発筋痛症などの慢性疾患でも重要となりますし、後期研修医からスタッフレベルになるために重要な考え方です。

本書はこのようなPivot and Cluster Strategyを実践するための入門書としてお勧めできます。

エビデンスに基づいた具体的な数字のみならず、実臨床での落とし穴についても言及されています。

初期研修医から後期研修医で診断能力をさらに伸ばしたいと考えている総合診療医や内科の若手医師、臨床推論を勉強し直したい内科医など幅広い読者層がターゲットかと思います。

私も総合内科としては中堅どころですが、本書を読みながら知識を整理することができて、非常に有意義でした。

是非、御覧ください。

 

 

 

2022年の振り返りと2023年の抱負

2022年も終わりました。

2023年の抱負と振り返りを

 

臨床/教育:

振り返り:専攻医の先生が4人入ってきてくれたが、なかなかカンファレンスなどを定期的に継続できなかった。

抱負:院外講師のレクチャーも積極的に。レクチャー関連は長続きしないので、on goingの回診や振り返りの時間を確保すること。

 

JAPEPの活動

振り返り:なんとかメンバー以外の病院にも公開してハイブリッドセミナーを実施

抱負:JAPEPのハイブリッドセミナーを今後も継続できるようなシステム作りを行う。

 

原稿執筆

振り返り:大学院などが忙しくて、正直、あまり進まなかった。ただ、何でもかんでも原稿を受けることはやめて絞ることにしたのは良かった

抱負:総合診療のマニュアルは今年こそは出版。去年は出版するはずだったが。それだけは、なんとしても成し遂げたい。

 

症例報告

振り返り:症例報告やイメージを後輩と書き始めたのは良かった。

抱負:引き続き、コンスタントに発表し続ける。他の病院の先生の力もお借りしつつ、4本/年の発表を目指す

 

研究

振り返り:博士論文を書けたのは良かった。また、大規模な研究プロジェクトが始まった。

抱負:大規模な研究プロジェクトは絶対に成功させる。また自分自身の原著論文も筆頭2本/年を目指す。