コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

総合診療と離島医療

海、たそがれ、ビーチ、自然、空の画像のようです

沖縄の離島に2週間行ってきました。

実は、初めての離島でした。

実感したのは、総合診療と離島医療は、やはり相性がいいなと。

というか、離島での医療は総合診療そのものでした。

よく、内科と総合診療の違いとか言いますが、離島では内科とか外科とか関係なくて、ただ総合診療しかないなと感じました。

自分は内科だから、小児科とか外科とか見れませんというのは通用しませんし。

だって、他に診れる医療機関が島にないのですから。

もちろん、内科の経験は生きましたよ。

でも、それ以上に外傷が多いし、ひたすら縫合していました。

内科的なガイドラインに基づいた治療というより以前のアルコールの問題とか。。

 

ちなみに、小児科の内因性疾患を診るのは恥ずかしながら初期研修医以来でした。

実は、後期研修も総合内科でそのまま総合内科ベースの病院総合医として病院でやってきたので、小児科を診る機会があまりなかったのです。

小児の外傷は救急で診ていますが。

でも、自分は内科だから小児科診れませんというのは当然通用しません。

全科当直ですべて診ないといけないと気づいてから、小児科の本を買いまくりました。

初期研修医に戻った気分でしたね。。

内科ができりゃ総合診療できるという人は、ひとまず離島に行ってもらえればいいんじゃないでしょうか。

 ということで小児科救急に備えて小児科の本を5冊読んじゃいました。やっぱり、追い詰められないと勉強できませんね。

どれも、とても勉強になりました。

 

 

 

 

ただ、総合診療医としては以下の2つが特に参考になりました。

思考過程が似ているので。

特にHAPPYこどものみかたは総合診療医の先生が書いているため、小児科の基本的なフレームワークをおさえるうえで、非常に参考になりました。

絶対に見逃してはいけない疾患が主訴別に書いているのも本当によかったです。

小児科ファーストタッチも非常にわかりやすく、何をすべきかがよいかが明確な点が、気に入りました。

ただ、抗菌薬の使い方は他の方のレビューにも書かれているように違和感がありましたので、そこは修正して考える必要があるでしょう。

 

 

 

結局、小児科の内因性疾患は腹痛だけでしたが、基本的には内科救急の基本中の基本である最悪の疾患を主訴別に除外するという方法でまずは対応しました。

総合診療をやっていると、自分の経験が少ない領域でも本や文献などを調べて、経験からのアナロジーである程度はできます。

内科救急に対する自分と初期研修医の先生の違いから類推すれば、自分が小児科の先生には、はるか遠くおよばないことは、容易に想像はできました。

ただ、知識と経験から考えて今はこうするしかないというのが久しぶりの小児の内因性疾患でもこれらの有用なマニュアルを頭に叩き込むことで見えてきました。

 

ところで、小規模の病院であり地域との距離が圧倒的に近いのは、懐かしい感じがしました。

 

ケアマネとかが垣根低く病院に来て、医者がなにも言わなくても、退院前カンファレンスがいつの間にか開催されていて驚きました。

あとは、予防医療という意味でも地域特有の課題も見えました。

まあ、いまの急性期病院に比べると不明熱や膠原病的なGIMが少ないのは僕としてはちょと寂しかったですが。。

 とはいえ、総合診療やっていたら、やっぱりある程度どこに行っても通用するなということが実感できました。

特に、僕みたいな内科ベースの総合診療医よりも、家庭医療研修をして小児科や外傷の研修も受けた総合診療医は、本当にどこに行っても通用すると思いますよ。

専門医機構の偉い人たちも、2週間位離島で働いたらいいと思います。

 

ただ、総合診療医は離島や僻地で働く医者でしょというのも違うんですよね。

東京の小規模病院でも、地域の急性期基幹病院でも総合診療医のニーズがあるというのが僕の強い実感です。

総合診療は都会とか地域というベクトルだけでは必ずしもないんですよね。

東京の小規模病院にいたときのほうが、今の地方の急性期中規模病院にいるときよりも、圧倒的に地域が近くに感じることができていました。

離島でドクターヘリを飛ばすべきかの判断もしましたが、東京の小規模病院で転院搬送をすべきかの判断とほぼ、同様の思考過程で判断していました。

地域医療は都会にもあるのです。

 

あと、総合診療医は環境に応じて、変化できる存在なので、どこでもニーズに応じて自分を変化させることができます。

その専門性は理解しにくいとは思います。

ただ、多分僕のような素人が心臓血管外科の神の手を診ても、その凄さを明確に言語化はできないはずです。

エキスパートになるというのはそういうことで、総合診療のやっていることの専門性を総合診療の素人が診ても正直わからないと思います。

通常の内科外来をしていても、地域のコンテキストを比較的早期に理解して、それに応じた対応をするというのは、総合診療の専門性のなせるワザです。

夜間の救急外来もレントゲンや採血もすぐにできない状況で、病歴、身体所見、エコーでのみ意思決定をするというのも、総合診療の専門性のひとつです。

最後の内科外来で、時間が全くないなか、いろんな心理社会的背景をもった方の心身症の方のBPS的な問題点を即座に把握し、認知行動療法的なアプローチを短時間で行ったりとかしました。こういうのは、熟練が必要です。

最近、読み始めた佐藤健太先生の本にもそれが明確に記載されていて、共感なんてもんじゃないぐらい共感できました。

 総合診療医の専門性について知りたいかたは、ぜひ以下の慢性臓器障害の本を読んでほしいです。

理想は、総合診療医と専門医がお互いの専門性を理解した上で連携する方向であるというのは、本当にそのとおりだと思います。

 

僻地医療が総合診療のすべてではないですが、極めて重要なことを再認識できました。

現地の皆様にはたいへん、お世話になりました。

謹んで御礼を申し上げます。