大規模病院での総合診療の専門性?
昨日、母校の大学病院で誤嚥性肺炎の講義をさせていただきました。
大学病院はまさに専門科の集まりでエキスパートの集団です。
総合診療医は不要なのかなと思いましたが、ただ皆誤嚥性肺炎に困っている印象を受けました。
それも、純粋に誤嚥性肺炎で困っているというよりも、誤嚥性肺炎に高率で付随する困難な問題に困っているという印象でした。
病院総合診療は診断学というイメージが強いですが、それは総合診療がエキスパートがカバーする領域の一部です。
藤沼先生のブログがいつもこの話題ではわかりやすいです。
未分化な問題、多併存疾患、複雑困難事例、下降期慢性疾患が総合診療の専門性を存分に発揮できる領域です。
診断学がカバーしているのは未分化な問題の一部です。
これらを自分の専門性とするには、やはり家庭医療学のアプローチが必須になります。
特に、都会で総合診療医が必要とされるのはこの領域なんですよね。
これって、専門医の先生がひとりで抱えるには相当に気力が必要とされる領域かなと思います。
誤嚥性肺炎を例にとっても、パーキンソン病があり認知症が進行しており、慢性心不全と慢性腎不全を合併しており、嚥下機能低下とフレイルが進行している高齢者。
さらに、アルコール依存もあり、妻は介護で鬱病になっているというケース。
これが心不全があるからと循環器内科の先生が主治医になるというのは、専門医の先生の専門性を十分に発揮できないのは容易に想像ができます。
ここで主治医となり、上記の専門性を存分に発揮し、神経内科や循環器内科、精神科などの医師と連携しつつ、ケアマネージャーやMSW、リハビリセラピストなどの多職種で連携しQOLを重視したターミナルケアを行う。 これは総合診療医じゃないと、ちょっと厳しいと思います。
こういう状況をトータルマネージメントする能力は専門性が高いですし、残念ですが片手間にできるような技能ではないです。
こういう総合診療の専門性、エキスパートとしての総合診療を確立するというのが僕のひとつのミッションだなと改めて思いました。
そういう意味では昨日も紹介した慢性臓器障害というのは総合診療のど真ん中だなと、改めて思います。
また、僕が誤嚥性肺炎の本を総合診療医で執筆したのは、総合診療の専門性を最もわかりやすく表現しているのが誤嚥性肺炎診療だなと日々感じているということがあります。
誤嚥性肺炎を本当に真剣に診療すると、感染、呼吸、心臓のみならず、リハビリ、老年医学、緩和ケア、臨床倫理、栄養と幅広い領域をカバーし、さらに誤嚥性肺炎にまつわる未分化な問題、多併存疾患、複雑困難事例、下降期慢性疾患などもすべてマネージメントする必要があることがあります。
それは、総合診療の専門性そのものだなと思っています。
この本の裏のテーマは、総合診療医がその専門性を存分に発揮して誤嚥性肺炎を診療するとどうなるのか、というところでもあります。
ということで、総合診療の現場の臨床から、未分化な問題、多併存疾患、複雑困難事例、下降期慢性疾患(慢性臓器障害)に関する研究をやる必要がありますね。。