コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

急性上気道感染症に対する患者の意思決定支援に関するツールによる介入 RCT

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P プライマリ・ケア医

I 急性上気道感染症に対する患者の意思決定支援に関するツール(動画によるトレーニングパッケージを用いる)

C 介入なし

O 

Primary  抗菌薬処方率

Secondory 

プライマリ・ケア医の抗菌薬使用に関する知識,有益性と有害性のエビデンス,処方への影響など

 

目的

急性上気道感染症に対する患者の意思決定支援に関するツール(動画によるトレーニングパッケージ)を用いることで抗菌薬処方率が低下し、抗菌薬に関する知識が増えるかどうか

 

研究デザイン

診療所ごとに1:1で割り付けるクラスターRCT

 

主要な統計解析

抗菌薬処方→Generalized estimating equations (GEE) negative binomial regression

知識→GEE analysis of covariance to adjust for baseline and clustering by GP practice

 

サンプルサイズ

臨床的に重要な差として、20%の抗菌薬処方率低下を検出することを目標とした。検出力80%、有意水準5%

→18の診療所が必要であると計算

 

○主要な結果

 

 

12ヵ月後、平均処方率は減少した(介入群2.9%、対照群2.6%)。

ベースラインから18%相対的に減少したが、両群に差はなかった(リスク比 1.01; 95% CI, 0.89-1.15 )。

知識の増加は、対照群よりも介入群でより大きく認められた。抗菌薬の有益性と害の知識に関する質問に対する正答数は、有意に増加した(平均3.6;95%CI、2.4-4.7、P <.001)。

その他の副次的結果については、群間差は認められなかった。

介入はよく受け入れられ、有用であると認識され、介入したGPの約3分の2がツールを利用していると報告された

 

結論

プライマリ・ケア医に提供された、急性上気道感染症に対する意思決定支援ツールは、通常のケアよりも抗生物質の調剤を減らすことはなかったが、抗菌薬の知識は増加した。

 

感想

Discussionにも書いているが、支援ツールと動画というシンプルな介入でリマインダーなどもないため、negativeな結果となっているか。

ちなみにFacebookなどでプライマリ・ケア医を募集したというのは興味深い。

Cluster randomizationは、Practice Based Research Network(PBRN)においても有用な手法だろう。

個人的には限界はあっても実行力と発想力からは、興味深いし学ぶべきものが多い研究と考える。