コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

世界史とつなげて学ぶ 中国全史 感想

[岡本 隆司]の世界史とつなげて学ぶ 中国全史

 

Audibleの聴き放題で読みました。

興味深かったです。
以下要点を

・中国もシルクロードを通じてオリエントの影響を古代から受けていた
・温暖化の時代はシルクロードで経済的な恩恵を受けたが寒冷化でその恩恵は潰えた
・中華は世界の中心という考えは秦および漢で芽生えた
・当初は南北では南が圧倒的に栄えていた
・南北で多元的な社会が漢王朝の次に出た
・隋や唐は仏教やイスラーム圏なども巻き込んだ多元国家として成り立っていた
・特に仏教は多国籍文化をまとめるという効果があった
・唐宋変革でエネルギー革命がおき、人口が増えて、都市化が進んだ 多元化が豊かさの源だった
モンゴル帝国は紙幣と商人の経済力をベースに多国籍国家として繁栄を極めた。しかし寒冷化で衰退した。
・北京はもともとモンゴル帝国の都だった
・明朝で北京に首都を移したことで南北問題が解決した。南部を抑圧した
・明朝では漢民族の単一国家を目指した しかし貨幣経済を否定
・江南デルタが発展した。また民間が発展したが、国家は民間を放置するという図式が先鋭化(現在も中国は民間がインフラを提供)
・明朝は鎖国をしていたが、実際は民間が貿易を積極的に行い、官民乖離が進んだ
・清は明朝を徹底的に先鋭した 非常に小さい政府だった。
中華人民共和国国民国家を目指した。
・東西問題が先鋭化 東の海側は栄えるが西は貧しいまま(現代もそう)
・都市部の南の豊かな蒋介石と、農村部を掌握した毛沢東
・日本は官民一体だったが、中国は官民が乖離していたので近代化を一挙に行うことが難しかった。
・近代の中華人民共和国は国をまとめるためのイデオロギーとして共産主義を使った
共産主義での経済は破綻した。よって官は共産主義のまま、民間を資本主義を導入し発展した
・しかし民間と国家の乖離は今も中国の課題 ささに東西問題は今も問題のまま
・さらに、少民族を無理に抑圧し現在もそれが問題となっている。


○感想

最近だと、キングダムの影響もありますし、中国の歴史はけっこう均質的な漢民族の歴史だと思っていましたが、全然違いましたね。

あるいは侵略者としての元寇などのイメージなど。

でも、中国は思っているよりも多元国家で、さらに民間の商人が多国籍で交流することで経済発展をしている歴史があったのですね。

確かに空海が留学した唐は、シルクロードを通じてオリエントの宗教や文化が持たされて華やかな多種多様な文化が花開いた多元国家だったんだろうなと、想像できました。

さらにモンゴル帝国は侵略者というよりも商業ベースに経済圏を発展させてその豊かさで多種多様な人種が共存する世界観だったというのも新鮮です。

現在の中国の発展はその多元国家かつ商人の力を自由資本主義で民間を開放することでもたらされている歴史がわかります。

実際に、いまの中国の経済都市は明朝以来の経済都市であった湾岸部を中心としています。

一方で、官民乖離はやはり今も問題であり、共産党の強権的なやり方に、民間の反発もあります。

香港での問題も実は歴史的には北の官が、南の経済圏の民を押さえつけるという構図を繰り返しているようにも見えます。

日本は比較的西洋諸国と同調するようなわりかし均質な歴史がありますが、中国史は実は非常に多彩で複雑であることがよくわかります。

陽明学でも見て取れるように中国の民間運動の興隆は中国のポジティブな面なのかもしれません。

中国は官と分けて考える必要がありそうですね。

勉強になりました。