コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

誤嚥性肺炎レビュー

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMra1714562

 

誤嚥性肺炎は市中肺炎と院内肺炎の延長線上にある疾患であり、市中肺炎の15%を占めるが、誤嚥性肺炎における特徴的な診断基準は存在しない。

健康な成人であっても睡眠時には微小誤嚥をしているし、市中肺炎でも微小誤嚥が原因となっている。

誤嚥性肺炎の起因菌として嫌気性菌のカバーは徐々に必要ではなくなっている。

 

リスクファクター

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誤嚥性肺炎のリスクの一覧

食道疾患、神経疾患、挿管、薬物、心停止、認知症、変性疾患、逆流など

 

嚥下障害がある人は肺炎を繰り返すリスク

認知症や寝たきり、睡眠薬も肺炎のリスクである

心停止後65%で肺炎が起こり、挿管後24時間内の抗菌薬投与で誤嚥性肺炎が予防。

 

誤嚥性肺炎は様残な臨床像を起こす

軽症~重症

急性経過~亜急性経過まで様々

嫌気性菌は亜急性経過で、好気性菌は急性経過になりやすい

 

酸の逆流で化学性肺臓炎を起こすが通常は無菌性

制酸剤を使うと細菌性肺炎のリスク

 

診断は臨床所見、誤嚥リスク、胸部画像所見などを総合して行う。

画像は重力に従った分布になるが初期には画像は陰性になっても良い。

 

市中発症でも口腔内衛生が不良なら抗菌薬(アンピシリン・スルバクタム、モキシフロキサシン)など嫌気性菌カバーの抗菌薬が必要。

口腔衛生が良ければ、上記に加えてクラビットなどでも良い(個人的意見としてはセフトリアキソンも使えると思われる。)

院内感染なら抗菌薬を使うほうが無難

耐性菌リスクが少なければアンピシリン/スルバクタムでもよいが耐性菌リスクがあれば、ピペラシリン/タゾバクタム、セフェピム、メロペネムなど緑膿菌をカバーした抗菌薬が必要

多剤耐性菌にはコリスチンを使うことも

MRSA検出歴があればバンコマイシンなども考慮

 

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誤嚥性肺臓炎では軽症~中等症なら抗菌薬は通常不要だが、制酸剤の使用や腸閉塞では考慮

重症例では抗菌薬を使わざるおえない

 

 

予防については以下が推奨

・緊急挿管24時間以内の予防的抗菌薬

全身麻酔の周術期の絶飲食

脳梗塞後、抜管後の嚥下評価

脳梗塞後のACE阻害薬使用(シロスタゾールも?)

・口腔ケアの徹底

 ・脳梗塞患者における45℃ギャッチアップでの食事(臥位は避ける)

 

一方で、クロルヘキシジンによる口腔洗浄や脳梗塞後の嚥下リハビリについてははっきりと定まった推奨ではないと。

リハビリ栄養は有用かもしれないと。

⇒journal of general and family medicine の総説を引用している!

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5675146/

 

NGチューブが誤嚥性肺炎を予防するかは不明でエビデンスは乏しい

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個人的な意見を述べると、リハビリ、栄養、口腔ケア、薬剤調整、せん妄予防などの超急性期CGAとも言うべき包括的介入が重要だと考えている。

本論文ではその視点は足りない点は物足りなさを感じるが、感染症の先生の論文なので仕方ないかも。