コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

日本における誤嚥性肺炎の特徴 多施設研究 後ろ向き観察研究

○タイトル

Characteristics of aspiration pneumonia patients in acute care hospitals: A multicenter, retrospective survey in Northern Japan

 

○ジャーナル

PLOS ONE

 

○PECO

P 宮城県の急性期中核病院に2019年の1年間に肺炎で入院した患者

E 誤嚥性肺炎群

C 非誤嚥性肺炎群

O 臨床転帰(院内死亡率 入院期間)

年齢,性別,栄養状態(BMI,入院前の食事),重症度(CRP,SpO2),既往歴(脳血管障害,認知症,神経筋疾患),居住状況,評価と治療(絶食,嚥下介入),転帰(入院期間,死亡率) 

 

○目的

(1)年齢別入院肺炎発生率

(2)入院した肺炎患者における誤嚥性肺炎の割合

(3)嚥下介入を受けた肺炎患者の割合と特徴

 (4) 嚥下機能評価および方法

 (5) 嚥下介入による院内死亡率への影響

(6)誤嚥性肺炎における原因微生物

(7) 抗生物質の使用状況について

 

○肺炎の定義

肺炎は、胸部レントゲン写真および/またはコンピューター断層撮影(CT)での新規浸潤影を伴う急性疾患として定義され、少なくとも2つまたは3つの呼吸器症状(咳、喀痰産生、喘息、発熱、および呼吸困難)があり、白血球(WBC)数とCRPで決定された炎症を伴う。

肺炎の診断基準は、日本呼吸器学会のガイドラインにより決定。

 

誤嚥性肺炎の定義

誤嚥肺疾患に関する日本の研究会の定義に基づいた

(1) 周囲の人が目撃した明らかな誤嚥を伴う肺炎

(2) 誤嚥が強く疑われる肺炎

(3) 嚥下機能異常や嚥下障害により誤嚥のリスクが高い肺炎

(4) 放射線学的所見で誤嚥性肺炎に適合するもの

 

 

○研究デザイン

多施設後ろ向き観察研究(探索的研究)

 

○主要な統計解析

単変量解析はStudentのt検定、Wilcoxon-Mann-Whitney検定またはFisherの正確検定

誤嚥性肺炎群と嚥下介入群を特徴づける因子は、ロジスティック回帰分析を用いて決定した。

探索的に誤嚥性肺炎群と嚥下介入群でそれぞれ、以下の要因を共変量として解析

データは平均値±標準偏差で記述した

 

誤嚥性肺炎

年齢,性別,栄養状態(BMI,入院前の食事),重症度(CRP,SpO2),既往歴(脳血管障害,認知症,神経筋疾患),居住状況,評価と治療(絶食,嚥下介入),転帰(入院期間,死亡率)

 

○嚥下介入

一年齢、性別、栄養状態(BMI)、重症度(CRP、SpO2)、過去の病歴(脳血管障害、認知症、神経筋疾患、誤嚥性肺炎の再発)、居住状態、評価と治療(絶食、嚥下評価)、転帰(入院期間、死亡)

 

 

 

○主要な結果

入院患者1800人のうち誤嚥性肺炎が692人、非誤嚥性肺炎が1108人

404人の2週間以上入院した患者のうち嚥下介入をしたのが208人していないのが196人であった

 

 

加齢に伴い肺炎の割合もふえ、さらに誤嚥性肺炎の肺炎に占める割合も増加

 

 

誤嚥性肺炎と通常の肺炎のベースラインの違い

単変量解析では誤嚥性肺炎のほうが高齢(平均81歳)、でBMIも低い

酸素かも悪い傾向  脳血管疾患、認知症、神経筋疾患、誤嚥性肺炎の既往歴は、誤嚥性肺炎群で多い

ただ慢性肺疾患があるのは通常の肺炎のほうが多い

誤嚥性肺炎では高齢者施設(23%)や慢性期病院に入院している割合が明らかに多い

嚥下食を食べている割合も誤嚥性肺炎で明らかに多い(34%)

絶食は誤嚥性肺炎で83%に認めれれており明らかに多い

NGチューブは誤嚥性肺炎で11%で実施

嚥下評価は誤嚥性肺炎の59%に、嚥下介入は誤嚥性肺炎の38%で実施

入院期間は誤嚥性肺炎 22.7日 通常の肺炎17.0 日

院内死亡率 誤嚥性肺炎  17%  通常の肺炎 9%

誤嚥性肺炎では入院前に常食が57%だが退院時は23%に減少している

 

誤嚥性肺炎と関連する因子 ロジスティック回帰分析

認知症、神経筋疾患、絶食、嚥下介入、脳血管疾患既往歴は誤嚥性肺炎と関連

 

 

○嚥下介入と関連する因子 ロジスティック回帰分析

 

嚥下介入された群は、嚥下食を57%で食べていた

嚥下介入している群は死亡率が8%でしていない郡は死亡率が17.7%だった

 

 

誤嚥性肺炎の起因菌ではブドウ球菌やクレブシエラ、肺炎球菌などが多かった

 

 

誤嚥性肺炎ではアンピシリンスルバクタムの割合が多い(64.5%)

 

 

○結論

誤嚥性肺炎は全肺炎患者の38.4%を占め,北日本の急性期病院における高齢者症例の肺炎の42.8%を占めている。

誤嚥性肺炎患者はよりBMIが低く,CRPが低く,入院前の自宅である比率が低く,脳血管障害,認知症,神経筋疾患の合併率が高いことが有意な特徴であった.

嚥下への介入は、誤嚥性肺炎患者の死亡率低下と関連する可能性がある。

 

 

○感想

自分の最も興味がある領域で気になっていた論文なので詳しめに読みました

日本の誤嚥性肺炎診療の実情を非常によく表現していて、普段の診療での実感からも納得できます。

ただ、ロジスティック回帰分析も交絡因子の調整というよりも探索的研究という意味合いが強く、研究デザインとしても誤嚥性肺炎郡と嚥下介入群の2つのデザインが混在している研究であり、インパクトに欠けるという印象を持ちます。

筆者らもそれをわかった上で、記述疫学的な立ち位置で論文を書いているのだとは思いますが。。

ただ、探索的に誤嚥性肺炎における嚥下介入の重要性や年齢と誤嚥性肺炎などの日本の現状を知るという意味ではとても意義がありますね。

 

なお、以前の日本の報告より誤嚥性肺炎の割合が低いことが印象的でした。

https://agsjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1532-5415.2008.01597.x

 

筆者らも議論で嚥下障害に対する認識が高まったことが誤嚥性肺炎の割合が低下した一因であると思われると記載しています。

ただ、個人的には誤嚥性肺炎ではないとされている高齢者肺炎のうちにも、実際は誤嚥性肺炎であった郡も入っているような気もしています。

誤嚥性肺炎の診断基準のスタンダードがないというのが一因というのはそのとおりかと。

 

baselineの誤嚥性肺炎と非誤嚥性肺炎の違いだけでも非常にこの論文の意義があるように感じます。

 

 

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