コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

論文紹介 中心静脈栄養でアミノ酸投与量が少ないと死亡率が高くなる

入院患者で特に誤嚥性肺炎などで食事摂取量が少なくなります。

末梢静脈栄養ではBacillus cereus菌血症のリスクが高くなるとされており、特にビーフリードなどのアミノ酸製剤は避けられる傾向があります。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/yoken/advpub/0/advpub_JJID.2015.489/_article/-char/ja/

 

ただ、個人的には短期間、ビーフリードを単剤で使用する限りは、そんなに菌血症を起こす印象はありません。

むしろ、低栄養を防ぐという意味で、筆者は積極的にビーフリードを誤嚥性肺炎などで食事量が低下している患者に使用しています。

輸液でエネルギーを稼げるだけでなく、アミノ酸の補給で筋肉の異化も防ぐことができるかもという期待も込めています。

最近、東大の老年医学の先生方のグループから論文が発表されました。

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 

P 中心静脈栄養(C-Vポート)をうけた65歳以上の入院患者(10,153人)

E C-Vポート増設7日の時点でのカロリー / アミノ酸投与量が高い群 (カロリー20kcal/kg以上、輸液アミノ酸量0.8g/kg以上)

C C-Vポート増設7日の時点でのカロリー /アミノ酸投与量が低い群(カロリー20kcal/kg未満、輸液アミノ酸量0.8g/kg未満)

O C-Vポート増設後90日の死亡率

 

日本の入院患者のデータ(national inpatient database covering >1000 hospitals )を用いた後ろ向きコホート

 

結果

○中心静脈ポート挿入後90日目の死亡率

輸液エネルギー量が20kcal/kg未満および20kcal/kg以上でそれぞれ14.9%および14.0%(リスク差、0.9%、95%CI:-0.5%~2.3%、P=0.216)

輸液アミノ酸量が0.8g/kg未満および0.8g/kg以上でそれぞれ15.4%および13.2%(リスク差、2.2%、95%CI:0.9%~3.6%、P=0.001)

この差は、病院、年齢、性別、BMI、緊急入院、27の主要基礎疾患などの複数の変数で調整しても維持された。

 

○感想

重症な患者ではアミノ酸投与は避けられるという交絡因子の影響はあるかもしれませんが、緊急入院などの変数で調整しても差はないとのこと。

まだまだ、追加の研究は必要ですが、今後は急性期病院での末梢静脈栄養におけるアミノ酸製剤の有用性についても興味がありますね。