コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

Case 17-2018: A 40-Year-Old Woman with Leg Swelling and Abdominal Distention and Pain

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20180603175751p:plain

 

40歳の女性が進行性の下腿浮腫と腹部膨満で受診
10か月前までは問題なかったが、それ以降に足の腫脹と疼痛が出現した。
最初は夕方にしか症状はなかったが、そのうち一日中症状が出現した。
下腿浮腫の範囲も徐々に拡大した。
5か月前から痛みが側腹部や腰部にも出現した。
痛みが継続するのでERを受診。
腎機能、血糖、電解質は正常だった。
B型肝炎C型肝炎も正常だった。
ALBは1.9と低下し、WBC12500と増加していた。
D-dimerも20μg/mlと増加していた。
CTでは石灰化した肉芽腫を右肺に認め、多発した肺塞栓を認めたため、入院で低分子ヘパリンが開始された。
その後痛みは改善し、アピキサバンが導入されて退院した。
血液内科の診察で誘因がないので、抗凝固療法の継続が提案された。
しかし、退院後に下腿浮腫が再度増悪し、腹痛及び腹部膨満も出現し、再度来院した。
悪心、排便停止、腹痛も認めた。
食事量は変わらないが、体重が10kg減少した。
CTでは右腎静脈血栓、胃幽門および小腸壁の肥厚、腹腔内リンパ節腫脹、腸間膜の浮腫、少量腹水を認めた。
頻尿と口喝を認めたが、胸痛、血尿、喀血、血便、寝汗、倦怠感、関節症状、目や耳の症状は認めなかった。
甲状腺機能低下と潜在性結核の指摘があった。
バイタルは比較的安定して発熱なし。
下腿浮腫が著明で、JVPは8cm。
腹部は全体的に張っていて、圧痛があった。

以下、採血と尿検査

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20180603175831p:plain

診断は??

過凝固状態なので、悪性腫瘍関連や抗リン脂質抗体症候群
しかし、尿たんぱくの説明は??
腎静脈の血栓があること、尿たんぱくがあること、ALBの低下があることより膜性腎症に伴う過凝固が示唆。

 

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20180603175854p:plain

PLA2R が陽性で膜性腎症と診断。

 

以下参照

特発性膜性腎症の標的抗原としての M-Type ホスホリパーゼ A2 受容体 | 日本語アブストラクト | The New England Journal of Medicine(日本国内版)

 

 

〇感想

腎静脈血栓+過凝固+尿蛋白陽性+ALB低下では、膜性腎症を疑う。