コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

急性腎不全における緊急腎代替療法 ジャーナルクラブ2022年5月9日

Timing of Initiation of Renal-Replacement Therapy in Acute Kidney Injury

 
本日のジャーナルクラブで読みました。
重症のAKIに早期に腎代替療法を導入すると予後は改善するか?
 
P 重度の急性腎不全 (18歳以上、KDIGO2 or 3) 除外基準(腎代替療法の既往、重度慢性腎不全、中毒など一般的な原因ではないAKIは除外)
I 患者が適格基準を満たしたら12時間以内に腎代替療法を開始(accelerated strategy)
C 腎代替療法の適応を満たしたら、臨床医の判断で腎代替療法を開始(standard standard strategy
O 90 日の時点での全死因
 
standard strategyでは以下のような腎代替療法の基準を満たした患者で最終的にはICUの臨床医の判断で透析を開始する
血清カリウム値が6.0mmol/L以上、pHが7.20以下、または血清重炭酸レベルが12mmol/L以下、重度の呼吸不全、またはランダム化後少なくとも72時間のAKIの持続
 
多国籍の大規模RCT 
ベースラインは両群で同等
サンプルサイズは優越性試験で90%の検出力で計算
サンプルサイズも足りている。
 
○結果
原疾患は58%が敗血症
75%が挿管され、70%が昇圧薬を使用している 
平均年齢は64歳
 
accelerated strategy 1,418 例(96.8%)とstandard strategy  903 例(61.8%)で腎代替療法が施行
90 日の時点で死亡はaccelerated strategy の 643 例(43.9%)とstandard strategy の 639 例(43.7%)で発生(相対リスク 1.00、95%信頼区間 [CI] 0.93~1.09,P=0.92)
90 日の時点で生存していた患者において腎代替療法accelerated strategyの 814 例中 85 例(10.4%)とstandard strategyの 815 例中 49 例(6.0%)で継続している(相対リスク 1.74,95% CI 1.24~2.43)
有害事象はaccelerated strategyの 1,503 例中 346 例(23.0%)とstandard strategyの 1,489 例中 245 例(16.5%)で認めた(P<0.001).
主な副作用は低血圧や電解質異常
 
○感想
非常に大規模でかつ質の高い臨床試験
優越性試験であり非劣勢を証明するための試験ではないが、それでもこれだけの大規模の質の高いstudyで優越性を示せなかったことは大きい。
ただ、非常に死亡率が高いICUの患者(4割が死亡)であり、一般病棟でも適応可能かは不明である。
とはいえ、逆に言えばこれだけ重症の患者であってもAKIへの早期の腎代替療法は死亡率を改善させないことがほぼ確からしい。
よって、特にsepsisなどによるAKIでは、まずは輸液、昇圧圧、必要に応じて利尿薬で粘り、粘りきれない場合は透析という戦略が妥当と思われる。
早期に敗血症バンドルとして早期の抗菌薬を投与、ドレナージ、輸液、輸液で反応しなければノルアドレナリンの早期投与、などの包括的な介入と治療を速やかに行うことがやはり重要であると再認識。
代替療法は焦らなくてよいと再認識。
ただし、中毒の透析やや血漿交換など個別な特殊な病態は除外されていることに注意。