筑波大からの報告です
日本のナショナルデータベースを用いた観察研究
老人保健施設のデータベースを使用
http://www.roken.or.jp/english
65歳以上が対象
誤嚥性肺炎の診断は下記の文献の日本の基準を使用
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19857224/
ADL、年齢、脱水などの項目を、誤嚥性肺炎郡と非誤嚥性肺炎郡で比較
カテゴリー変数は%で、連続変数は中央値を用いて評価
カテゴリー変数は、 χ2 test か Fisher’s exact testで評価
連続変数は、 Mann–Whitney U or Kruskal–Wallis tests で評価
ステップワイズ変数選択を用いて、有意差が出た項目を多変量解析
propensity scoreでベースラインをそろえたうえで、ロジスティック回帰分析で多変量解析を行った
結果
〇単変量解析の結果
年齢は両郡で有意差なし
しかし、男性のほうが誤嚥性肺炎が多い傾向
機能低下は誤嚥性肺炎で多い(脳、視力、聴力、仮性球麻痺)
痰を吸っていたり、酸素をしている人も誤嚥性肺炎で多い
最近のADL、歩行、嚥下機能の低下は誤嚥性肺炎郡で多い
多発脳梗塞以外の併存疾患は関連は相対的に低そう ただCODPは関連ありそう
ADLと誤嚥性肺炎の関連
ICFステージングでADLや認知機能、嚥下機能が低下すればするほど、誤嚥性肺炎の比率が上昇する傾向
〇多変量解析の結果
喀痰吸引、男性、酸素療法、栄養療法(胃瘻、NG)、尿道カテーテル、嚥下機能低下、発熱性疾患、脱水、認知症はリスクファクターか
propensity matchedでベースラインをそろえた多変量解析
喀痰吸引、嚥下機能低下、認知症、脱水がリスクとなる
〇感想
Discussionでも述べているように誤嚥性肺炎の診断基準を国際的に統一することが必要かも。
また嚥下機能評価(フードテストなど)も全例では行われているわけではないかも
あと、個人的に最も気になるのは、propensity matchedでADLのベースラインをそろえたとのことだが、ADLこそ多変量解析にいれるべきではないか?
Table2はADLと誤嚥性肺炎の関連をかなり明快に示しているので、そこを中心に議論してほしかった気も。。
この論文の著者たちは、単変量で有意差が出た郡を多変量に回したようだが、多変量解析する項目は臨床的に意義があるリスクファクターを最初に決めるのが定石では?
認知機能低下、男性、喀痰吸引、嚥下機能低下、ADLなどか。。
脱水はあくまで誤嚥性肺炎の結果として起こっている事象なので、誤嚥性肺炎のリスクとするのはどうなのか。。
とはいえ、非常に意義深い素晴らしい論分ですね。