コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

COVID-19診療における妥当性があり科学的な根拠がある推奨

https://www.nature.com/articles/s41591-021-01439-x.pdf

岡秀明先生からご紹介いただいた論文です。

COVID-19における科学的に妥当な推奨になります。

意訳しております。

 

●一般の方向け

① フィット感のあるマスクを使用してください 

適切に、公共の場でいつでもフィット感のあるマスクを使用してください 

観察研究は、感染のリスクがフェイスマスクで大幅に減少したことを示しました (調整済みオッズ比(aOR)、0.15、および95%信頼区間(CI)、0.07〜0.34、

なおN95マスクでは感染リスクの減少の効果はより明らかでした。

ちなみに具体的には不織布マスクが推奨されます。

ウレタンマスクや布マスクは推奨されません。


② 特に屋内の混雑した場所は避けてください 

観察研究で、1メートル以上の物理的な距離を取ることで感染リスクが大幅に減少したことを示しました

aOR、0.18、および95%CI、0.09〜0.38、調整済み研究の場合)

物理的な距離が遠ければ遠いほど、感染の可能性は低くなりました。

ドアや窓を開けて適切な換気を維持することは、感染の拡大を減少するための重要な手段です

→つまり三密を避ける!


③ 症状がある場合はコロナのPCRや抗原などの検査を受けてください

発熱などのCOVID-19の症状を持っている場合は、自宅待機と早期の検査が推奨されます。他には、喉の痛み、咳、嗅覚および/または味覚の喪失も具体的な症状です。

早期の検査と自宅隔離が感染の拡大を防ぎます。

リスクがない患者は自宅での療養で回復します。

発熱にはアセトアミノフェン、充分な水分補給が推奨されます。


④ 呼吸困難や酸素飽和度の低下【92%未満】を認めれば医療機関を受診してください。   

入院での治療が必要になります。

 

⑤ すぐにワクチン接種を受けてください

いくつかのランダム化試験は、ワクチンの有効性を実証しました

COVID-19による重症化、死亡率の低下に、ワクチンはきわめて有効です。

過去にCOVID-19に感染したことがある場合でも、ワクチンが推奨されます。

 


●医療従事者向け

⑥ COVID-19に対して科学的に効果が証明されていない治療法は使用しないでくださいファビピラビル、イベルメクチン、アジスロマイシン、ドキシサイクリン、オセルタミビル、ロピナビル-リトナビル、ヒドロキシクロロキン、イトリズマブ、ベバシズマブ、IFN-α2b、フルボキサミン、COVID-19の治療における回復期の血漿またはハーブ製剤などは、科学的な根拠が乏しいので現時点では使用を推奨しません。

*もちろん、今後のエビデンスが待たれます。

最近、喘息の吸入薬であるブデソニドがCOVID19の軽症かつ発症早期の例に投与することで重症化を防ぐエビデンスが発表されましたがまだ知見が確立されておらず、今後のエビエンスが待たれます。。

Inhaled budesonide for COVID-19 in people at high risk of complications in the community in the UK (PRINCIPLE): a randomised, controlled, open-label, adaptive platform trial - ScienceDirect

 

*軽症例に早期に投与することで重症化リスクを防ぐ可能性が高いのは現時点では抗体カクテル療法のみとなっています。

COVID19への抗体カクテル療法 - コミュニティホスピタリスト@奈良

 


⑦ レムデシビルやトシリズマブは特定の状況に絞って使用してください

トシリズマブは、重症で、酸素投与量が急激に悪化して、炎症の証拠があり、ステロイド投与中の患者にのみ有用です。

レムデシビルは、回復までの時間を短縮するのにわずかな効果しかありません 

また酸素を使用する患者に早期に使用した場合にしかエビデンスはないです。

 

ステロイドエビデンスが豊富で、極めて有用だが、酸素が必要な患者にのみ使用し血糖のモニターが必要

ランダム化試験では、次のようにステロイドを短期間(10日)使用することで効果が示されています。

標準治療はデキサメタゾン6mg/日だが、代替治療としてメチルプレドニゾロン(16mgを1日2回)またはプレドニゾロン(20mgを1日2回)を代替として使用することができます。酸素を使用しない患者では、ステロイドは利益をもたらさず、害を及ぼす可能性があります


⑨ 採血やCTスキャンなどはルーチンで定期的に使用する必要はありません。

フェリチンやCRP、CTをルーチンでフォローする意義はいまのところ、証明されていません。*ただ必要に応じては当然使用する。ルーチンには用いない。


パンデミックでもCOVID19以外の疾患の管理を無視しないようにしましょう。

癌、結核、心臓および腎臓などの疾患の治療、メンタルヘルス、出産、周産期ケア、新生児などもしっかりとマネジメントする必要があります。

 

など、具体的な推奨がまとめられています。 

 

新しい論文が出ない限り、これらの推奨から外れた推奨をする医師は勉強不足か、思い込みが強いか、どちからかの可能性が高いと思われます。もちろん、専門医として経験と知識が豊富で、きちんとした妥当な根拠があれば、別ですが。俺の経験というだけで、これらの推奨を否定するのは無理がありますね。

 

 

コロナのワクチンに関しては以下の本がお薦めです!!