コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

COVID-19に対するデキサメタゾン

https://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMoa2021436?articleTools=true&fbclid=IwAR25azVCRVh_DrGaDbHkC18VGanQJ_CAE4PzQkb0j7vd-Bf2ThefnDCUlnY

 

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Covid-19 で入院した患者

デキサメタゾンをすでに使っている患者は除外

I デキサメタゾン6mg 10日投与 経口or静注

C 通常郡

O 28 日死亡率

 

ブラインドはしていない

デキサメタゾンと通常郡で2:1に割付

 

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ランダム化した時点でのベースライン

デキサメタゾン郡と通常郡の違いは大きくなさそう

人工呼吸に至った郡は入院してからの日数が長い傾向

 

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ITT解析

ちなにデキサメタゾンを投与するのが適さないという人は除外されているが、けっこうざっくり除外されている

 

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Coxで生存曲線を描いてみても明らかに人工呼吸郡はデキサメタゾンで予後が良い

酸素が必要ない郡はむしろデキサメタゾンで予後が不良

酸素が必要な郡はややデキサメタゾンが予後が良い

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フォレストプロットでも同様の結果 人工呼吸郡は信頼区間が広いがそれでも良い傾向は明らか

 

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28日死亡率だけでなく、人工呼吸が必要な割合も低下する傾向

ただ、最終的な死亡というアウトカムはあまり変わらない

 

 

○感想

ランダム化された時点で人口呼吸郡と酸素が必要がない郡に入院日数の差がある。

結局、デキサメタゾンをいつ開始したのかがよくわからない。

やや恣意的な印象もある。

ただ、人工呼吸郡が必要なほど重症なCOVID-19ではデキサメタゾンがよい傾向は間違いないだろうし、酸素が必要でなければデキサメタゾンは不要というのも確からしい印象。

ところで酸素が必要ない症例でも28日死亡率が20%近くというのは異常に高い印象。

ちょっと日本で診ている印象との乖離が大きい。

かなり重症度が高い郡を診ているのか?あるいは人種の問題?

少なくともいまの自分の病院のセッティングで酸素2L程度必要とする入院するCOVID19の死亡率ははるかに低い印象。

酸素が必要な症例に関して全例でデキサメタゾンが必要なのかに関する外的妥当性については疑問がのこる。

 

Up to Dateには以下のように記載あり。

 

For hospitalized patients with severe disease (ie, they have hypoxia) but who are not yet on oxygen, we suggest remdesivir, if available (Grade 2C). We suggest not using dexamethasone in such patients (Grade 2C). (See 'Severe (including critical) disease' above.)

 

For hospitalized patients with severe disease who are receiving supplemental oxygen (including those who are on high-flow oxygen and noninvasive ventilation), we suggest low-dose dexamethasone and, if available, remdesivir (Grade 2C). (See 'Severe (including critical) disease' above.)

酸素が必要になればデキサメタゾンを投与するという方向で良さそう。

 

⇒山本 舜悟先生からも「病態を踏まえつつ,患者の状態とデータをみながら考えたら,酸素1-2L吸入始めた時点でステロイドを敢えて使わない人は今はほぼいません。」とのコメントを頂きました。

基本的には酸素が必要ならデキサメタゾン6mg/日を使用する方向でよさそうです。