重症の横紋筋融解症による低カルシウム血症
重度の横紋筋融解症で入院したかた
AKIを認めているが、高P血症、低Ca血症も遷延
Hypocalcemia and hypercalcemia in patients with rhabdomyolysis with and without acute renal failure
古い報告だが重度の横紋筋融解症とAKIでは、AKIの乏尿期に低カルシウム血症となり、30%以上が利尿期に高カルシウム血症を発症となる
AKIの有無にかかわらず横紋筋融解症の全患者は、テクネチウム-99スキャンで記録された軟部組織へのカルシウム沈着を有していた。
横紋筋融解症+AKIのの患者では、利尿期に25-ヒドロキシビタミンDと1,25-ジヒドロキシビタミンD[1,25(OH)2D]の血清レベルが著しく増加し、これらは高カルシウム血症の患者において有意により大きかった
①低カルシウム血症はAKIとは無関係に横紋筋融解症で起こり、損傷した組織へのカルシウム沈着に関係している可能性が高い
②横紋筋融解症およびAKI患者の利尿期における高カルシウム血症の発生に、血清レベルの1,25(OH)2Dの上昇が重要な役割を果たしている
これらの患者では1,25(OH)2Dの腎外産生が起こっている可能性がある。
つまり、重度の低カルシウム血症は軟部組織沈着で起こるため、利尿期では沈着していたカルシウムが血中に戻る。
Rhabdomyolosis and its pathogenesis - PMC
また上記の論文では、病態的には以下の説明もなされている
筋肉細胞が破壊される際に、無機リン成分と有機リン成分が溶解し、多量の無機リンが血漿中に放出され、高リン血症となる
高リン血症は、破壊された筋細胞や他の組織にリン酸カルシウムの沈着を引き起こし、横紋筋融解の際に早期の低カルシウム血症を引き起こす。
その後、筋肉細胞と結合していたカルシウムが、再び血漿中に放出される。
さらに初期の低カルシウム血症とビタミンD上昇(糸球体細胞で大量に産生される)のために起こる、二次性副甲状腺機能亢進症との組み合わせにより、のちには高カルシウム血症が起こる。
→やはり最初は低カルシウム血症として補充していたにもかかわらず、あとになって高カルシウムに転じるとのこと。
慎重なカルシウムのフォローが重要。
さらに最近では横紋筋融解症の原因としてCOVID19が極めて重要
個人的にも経験があります。
特にワクチン未接種群では要注意。
実際に、BMJ case reportから以下の報告あり
この報告のキーメッセージは以下
・横紋筋融解症は、最初に重度の低カルシウム血症を呈し、その後、高カルシウム血症が続くことがある。
・横紋筋融解症はCOVID19の合併症として認識されており、COVID-19感染症の主訴であることさえある。しかし、横紋筋融解の他の一般的な原因を除外することが重要である。
・初期の低カルシウム血症は、壊死した筋肉組織へのカルシウムの沈着による二次的なものであると考えられる。
・その後の高カルシウム血症の原因は、筋壊死からのカルシウムの放出によるものと推定され、副甲状腺ホルモンを介さないため、標準治療が効きにくい。
・高カルシウム血症は重症化し、持続的な血液濾過が必要となることがある。
つまり高カルシウム血症は副甲状腺ホルモンの役割は少ないため、一般的な透析や補液しか効果がないだろうとのこと。
ビスホスホネートやシナカルセト、ステロイドは効果は乏しいだろうと。
個人的には、納得できます。
なお本症例でのカルシウムの推移は以下
最初は低カルシウムですが、day7からは高カルシウムになり、血液透析が開始
しかし間欠的透析ではカルシウムが低下しきれないので低カルシウムの濾過液による持続透析に変更しカルシウムが低下したと
重症の横紋筋融解症状ではカルシウム濃度の推移に非常に気を使う必要があるようですね。。