本日は、市立奈良病院のレジデントデイでmultimorbidityのレクチャーをしました。
日本におけるmultimorbidityの総説としては以下が非常に優れています。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/generalist/42/4/42_213/_pdf/-char/ja
この総説でも述べられているように、multimorbidityの定義、介入すべき患者、介入方法、アウトカムの選定などが課題となっています。
一般的にはmultimorbidityは慢性疾患を2つ以上有することと定義されますが、その慢性疾患を何を選択すべきが完全に統一されていません。
日本におけるmultimorbidityの研究の最近のフラッグシップは、やはり青木先生の研究ですね。
私も、先日のプライマリケア学会で発熱外来におけるmultimorbidityの研究を発表した際もこの研究におけるmultimorbidityの定義を採用しました。
なお、座長が青木先生出会ったのもありがたかったです。
ここでは以下の慢性疾患が2つ以上あることとmultimoribidyと定義しています。
これらを因子分析することで5つのパターンを同定しました。
特に心血管/腎/代謝パターンは10個以上の薬剤を内服していると定義されるexcessive polypharmacyと特に関連があることが示されています。
これらは、大浦誠先生が医学界新聞の連載で紹介されています。
このパターンで典型的なのは、コテコテの糖尿病があり糖尿病性腎症となっており、高脂血症と心筋梗塞および脳梗塞の既往歴があり、心不全となっているような症例ですね。
当然、内服薬も多くなってきます。
これらのパターンを分けることで、パターンによって介入方法が異なる可能性が、ありえると考えます。
最近の青木先生の研究ではmultimorbidityとQOLの関連についての前向きコホートを論文化されています。
これは以下の青木先生のブログで詳細を見ることが可能です。
論文はこちらBMJ open誌になります。
前述のmultimorbidityとQOLとの関連をみた研究になります。
QOLはSF-36で測定されています。
SF-36は以下のホームページに日本語版が記載されています。
京都大学の福原先生が研究されてきた領域です。
結果は以下の通り
・心血管代謝疾患パターンは身体的・社会的QOLの低下と有意に関連し、悪性疾患パターンは身体的QOL低下とのみ有意に関連していました。
なお、当院の発熱外来で行った研究では、発熱外来を受診した303人のうち37%がmultimorbidityでした。
前述の青木先生の研究では、一般人口の18歳以上では29.9%、65歳以上では62.8%がmultimorbidityでした。
発熱外来は一定数既往歴が少ない若年患者もいますが、高齢者が多い内科の定期外来では、もっとmultimorbidityが多いと思います。
当院での研究ではmultimorbidity群は高齢者が多く(76歳 vs 31歳 中央値)、ポリファーマシー(薬剤5つ以上)が多く(48% vs 0% 中央値)、clinical frailty scaleも高い傾向を認めました。(3 vs 1 中央値)
multimorbidity群は高齢であるという交絡因子の影響もありますが、年齢を含めた交絡因子を調整してもmultimorbidity群は緊急入院のリスクであることが判明しました。
調整オッズ比(95%信頼区間): 6.3(1.98-22.4)
発熱外来でもmultimorbidityの患者さんは要注意したほうがよいと言えるかもしれません。
それでは実際にどうすれば、よいかとなると大浦先生が普及されているバランスモデルとアリアドネの原則が重要になるかと思います。
バランスモデルは以下の連載
アリアドネの原則は以下のブログ
患者さんの意向やQOLを中心に起きつつ、最も肝となる病態がどこか見極めつつバランスを取ることが個人的には重要かと考えています。
最近は以下のような書籍も発売されており、勉強しやすくなっていますね。
ということでmultimorbidityは総合診療の研究のど真ん中なので、今後、ますます盛り上がることが期待されますね!