多剤併用する高齢者の降圧薬を中止したことによる血圧への影響
高齢者では特にフレイルになると降圧薬を中止することもあります。
ただ、実際に中止しても問題が無いのかというのはあまり調べられていません。
今回、高齢者を対象にしたRCTで降圧薬を中止することの影響を調べたRCTを読んでみました。
P かかりつけ医が減薬が適切であると判断した年齢 80 歳以上で、収縮期血圧が 150 mm Hg 未満で、少なくとも 2 種類の降圧薬を受けている高齢者
除外項目 過去 12 か月以内の心室機能不全or心筋梗塞or脳卒中、二次性高血圧症、または同意能力が欠如してる患者
I 減薬
C そのまま継続
O 12 週間の時点で収縮期血圧が 150 mm Hg 未満である
RCT 非劣勢試験
ベースラインは以下の通り
平均85歳
診療所に通院しており中等度以上のフレイルは1割未満の集団
慢性疾患が2つ以上ある(多疾患併存)は98%
BMIは比較的高め
結果は以下
降圧薬を中止しても継続しても12週時点の血圧は非劣勢であると
○感想
なかなか解釈が難しい研究です。
心血管イベントがある群は除外されており、選択バイアスもあるため今回の結果を当てはめることが出来るのは高齢者の中でも心血管リスクが低くフレイルの要素が少ない群であることに注意が必要です。
今回の研究は降圧薬を中止しても心血管リスクが悪化しないことまでは示されていないので、今後の課題だと思います。
今後のRCTにも期待ですが、コホート研究などの観察研究のほうがこういう疑問には向いているような印象も持ちました。
いずれにせよ、内服を中止するというRCTという発想は斬新であり興味深い研究です。
最近、NEJMのRCTで厳密な降圧が心血管イベントの発生率を低下させることが示されています。
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1901281
ただし、失神、腎不全、電解質異常などの副作用も厳密なコントロールで増加することが示されています。
実臨床では高齢でも健康で認知症もなくフレイルスコアも低い群では厳密な降圧による恩恵が高いかもしれません。
一方でポリファーマシーになっておりフレイルや転倒のリスクがあれば、降圧薬を中止する恩恵が高いかもしれません。