コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

2020年12月11日 大浦先生マルモレクチャー

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南砺市民病院の大浦誠先生にマルチモビディティ(マルモ)のレクチャーをしていただきました!!
 
 
誤嚥性肺炎でマルチモビディティどうする??
 
①ABCDEアプローチ
②薬剤関連副作用
 ⇒薬剤関連副作用もフレームワーク
③Social Vital sign
本人の意向、人との繋がり
④バイオマーカーはあまり有用ではない
 
multimorbidityは多併存状態
2つ以上の慢性疾患が併存
本邦では18歳以上の65歳以上の62.8%がマルモ
 
定義も介入すべき患者も介入方法もアウトカム指標も決まっていない
 
高齢になればなるほど併存疾患が増えていく
加齢に応じてメインとなる疾患が変遷する
 
 
christiancer muth ariadne princples  haow to handle multimoribidity
①相互作用の評価
②嗜好と優先順位
③個別化された管理
 
 
マルモの情報収集モデル
・関心毎をたずねる
・完璧なケアプラン
・実際に順守できるか
・患者の好みは?
・重要な結果に関連するエビデンス
・予後を考慮
・治療間の相互作用
・治療計画の利点と害を比較検討(出血と害)
・介入/治療の実施/継続に反対するかを対話して決定
・利益、実現可能性、アドヒアランス、好みとの整合性
これを本人にとって意味があるかを定期的に評価する
好みと対話で決定する
 
雑談や趣味で好みを引き出す
 
 
ただ誤嚥性肺炎の問題は以下の通り
①本人の好みが不明
②ケアプランが複雑
エビデンスがない
④予後が不透明
 
 
〇米国老年医学会によるmulmorbidity
①患者の健康の優先順位と健康の軌跡をとらえる
②ケアの利益と害のバランスを考える
③意思決定支援を行う
 
 
 
 
 
誤嚥性肺炎のマルモ診療の難しさ
・背景疾患の1つ1つが大変
・糖尿病などの栄養制限の意味は?
パーキンソン病などの治療の辞めときは?
・ポリファーマシー、ポリドクター
COPD心不全の合併ではガイドラインは役にたたないかも?
 
 
誤嚥性肺炎のマルモ診療
・心理社会的問題の難しさ
・本人の意思決定が難しい
加齢、認知症への偏見 認知症への聞き方を工夫
・原因疾患や嚥下障害の内服治療をいつまでするのか?
・多職種介入が有効だが職種が足りなければ?
・過剰な生活指導は避ける
 
multimorbidity patternの全てに誤嚥性肺炎は関連する
 
マルモのパターンごとに攻略法が決まっている
心血管/腎/代謝パターンはガイドラインである程度、やるべきことも決まっている。
 
マルモパターンを意識することで、骨折の有無などが理解することができる。
 
複数の診療科もプロブレムリストに挙げる
ポリファーマシーでは、出血パターンや誤嚥パターン、腎機能パターンなど副作用のパターンを意識する
心理社会的問題はネガティブなことを書かない
貧乏ではなく質素な暮らしを好む スティグマにならないように
認知症で徘徊を繰り返しているというネガティブワードは書かない⇒認知症のBPSDあり
 
 
Multimorbidityのバランスモデル
①患者の出来そうなこと(疾患理解、社会サポート、レジリエンス/しなやかさ) 
レジリエンスは薬を飲んでいるかなどの質問から推し量る
②治療負担(処方薬⇒ポリファーマシー、厳格な生活指導⇒
ポリアドバイス、分断された専門家診療⇒ポリドクター)
 
ただ減らすだけではなく、増やすことも重要
その2つでバランスをとる
バランスを取ることで、Patient experienceの重視
患者中心のアウトカム設定を共同で行う
治療負担を減らし患者を含めた社会全体の費用負担を減らす
ポリドクターは治療負担であることが問題
治療負担がなければ問題ではない
 
 
 
マルモの4演算
特に、掛け算と割り算は総合診療医の腕の見せ所!
足し算をして、その後足し算をする
最後に、レバレッジポイントで俯瞰的思考で掛け算、割り算を
 
①足し算 必要な介入を増やす
②引き算 余分な介入を減らす
③掛け算 レバレッジポイントを患者、家族、地域という遠い視点で考える ⇒最も効率が良い
④割り算 多いプロブレムの整理 ⇒ポリドクターは1つのドクターにまとめることで貧困の改善  ポリファーマシーは処方カスケードを止める 複雑な家庭事情なら家族カンファレンスを
 
マルモ診療では、家庭医療の考え方が重要!
 
とても勉強になりました!
大浦先生ありがとうございます。
 
大浦先生のマルモの連載も必見です!

www.igaku-shoin.co.jp

 

 

また大浦先生が編集された話題作、終末期の肺炎もお勧めです!

森川も誤嚥性肺炎について執筆しています。