土曜日の紹介は嫌われる 感想
【献本御礼】
編集の先生方からいただきました(COIあり。)
私は内科ベースの総合内科医であり、この本で言うところの病院総合医という立ち位置になります。
家庭医の先生方と仕事をすることも多く、家庭医に紹介して連携できればよいなと夢想しながら、なかなかできなかった理想がこの本では実現されています。
正直に言うと、現在の日本ではこの理想郷を生み出すのには、奇跡的な状況がそろわないと難しいと思います。
浮間診療所のように家庭医がグループプラクティスを行う診療所は、診療所の形態として理想的なものだと考えますが、そもそもそのような診療所がまだ稀有であるという実情があります。
また、そのようなグループプラクティスを行う家庭医の診療所の近くに「たまたま」家庭医療のバックグラウンドを共通で認識している病院総合医がいる病院があるとなると、相当に奇跡的なことであるように思えます。
もちろん、実際にはこのような奇跡的な状況であっても、最初からお互いを完全に理解することは難しく、カンファを重ねることで病院や診療所の実状が徐々に分かってくる過程も興味深かったです。
ただし、後半になり顔が見える関係になってくると、よりお互いの連携がスムーズになっている様子が見受けられ、やはり病院総合医と家庭医の連携は理想的なプラクティスの一つであると確信しました。
そして顔が見える関係の重要性も改めて再認識できました。
この本は、実際のカンファレンスの内容をリアルに実況中継しています。
個人的には、そのようなリアルさがとても興味深かったのですが、某レビューでは評判があまりよろしくありません。
この本の内容は、家庭医療のバックグラウンドをある程度理解していないと、何を書いているかピンと来ないように思います。
そのような意味で病院総合医にとっては、実は試金石的な本であるようにも思います。
また病院総合医の立場としても、本症例で出てくる病院総合医の全人的なコメントを読むと、自分の未熟さが浮き彫りになります。
半面、在院日数の問題などで看取りや経過観察入院へのプレッシャーが病院総合医側では強いという意見が散見されました。
当院では病院が小規模であること(130床)、地域包括ケア病床がありいざとなれば60日間入院が延長できるという点から、このあたりのストレスはそれほど多くはないように思えました。
病院総合医の立場から言うと、自分の病院のプラクティスを客観的に再認識できる良い機会にもなると思います。
それでは、このような連携は難しいのでしょうか?
例えば、家庭医療の専門医がいなくても、共通の文化を共有できる信頼できる診療所も探せば見つかるので、そのような診療所と実際の紹介症例を共有するカンファレンスが出来ればよいなと思いました。
このような連携は地域医療において最高のプラクティスのひとつであり、今後の病院総合医の在り方を考えるうえでも非常に有用な本であると考えました。