コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

ラピアクタの効果について

ラピアクタを使うかどうか・・

 

Up to Dateによると・・

In patients suspected of having influenza in whom treatment is indicated, we recommend treatment with a neuraminidase inhibitor (zanamivir or oseltamivir), provided that oseltamivir-resistant influenza is not suspected. Patients who cannot receive zanamivir or oseltamivir (eg, those who cannot tolerate inhaled or enteral agents) should receive intravenous (IV) peramivir. Although the US Food and Drug Administration has only approved IV peramivir for patients with uncomplicated influenza, we think it is also reasonable to use it for patients with severe influenza who cannot receive oral oseltamivir or inhaled zanamivir; in such patients, we would use either oseltamivir by a nasogastric tube or IV peramivi

 

→ということで基本はタミフルリレンザを使うべし(ただし治療対象はハイリスクの患者や重症の患者)

ちなみにハイリスク患者の一覧は下記のサイトにまとまっています。

間違いだらけ!インフルの正しい「怖がり方」 | 病院に行かないという「選択肢」 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

 

重症で経口が難しい場合には、ラピアクタを使っても良いとのこと。タミフルをNGチューブで投与しても良い。

ではラピアクタの効果はどうなのか。

 

 

 

Efficacy and Safety of Intravenous Peramivir for Treatment of Seasonal Influenza Virus Infection

P 20-64歳のインフルエンザと診断された健常者 発症48時間以内

I ラピアクタ300mg , ラピアクタ600mg

C プラセボ

O 症状軽快までの期間

 日本の多施設研究 double blind, RCT

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50歳前後の患者が対象。

 

結果

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ラピアクタ300mg、600mgのほうがプレセボより症状改善の時間は20時間ほど早い傾向あり。

 

副作用は変わりなし

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タミフル同様にプレセボよりも1日弱症状を早く改善すると言える。 

 

 

 

 

 

Phase III Randomized, Double-Blind Study Comparing Single-Dose Intravenous Peramivir with Oral Oseltamivir in Patients with Seasonal Influenza Virus Infection

P 20歳以上のインフルエンザの患者 

除外基準

呼吸不全、うっ血性心不全、コントロール不良の糖尿病、免疫抑制(免疫抑制剤、抗腫瘍剤など)またはAIDS、腎障害 、虚血性心疾患または重篤な不整脈、QT延長or徐脈、入院を必要とする重症例、全身抗菌治療例

→つまり健常者を対象とした試験

I  ラピアクタ300mg単回投与、ラピアクタ600mg単回投与

C  タミフル75mg1日2回×5日

O  症状改善までの時間

多施設のRCT 、 double blind、非劣性試験

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タミフルラピアクタで効果は特に変わりなし。

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副作用はラピアクタ300mgのほうが少ない

 

ラピアクタの効果はタミフルに劣っていない。ラピアクタは600mgになると副作用が増えるかもしれない。

 

 

 

 

Intravenous Peramivir for Treatment of Influenza A and B Virus Infection in High-Risk Patients

P  リスクを有するインフルエンザ患者

リスク:コントロール不良のDM、治療を要する慢性呼吸器疾患、免疫抑制薬

I  ラピアクタ300mg 必要に応じて1-5日

C   ラピアクタ600mg 必要に応じて1-5日

O 症状改善までの時間

日本のstudy ,RCTでdouble blindだが 投与期間は個人の裁量に委ねている。

Since it was deemed to be very difficult to enroll many

high-risk patients with influenza virus infections, the 90% CI, not 95%, was
utilized. T

95%信頼区間は難しいので90%信頼区間を使用していると。ただ、そもそも十分なサンプルサイズか不明・・

 

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→症状改善までの時間は600mgのほうが短い傾向がある。

とはいえサンプルサイズが足りていない可能性もあり。

 

 

 

 

 

 

 

 

Evaluation of Intravenous Peramivir for Treatment of Influenza in Hospitalized Patients

P インフルエンザで入院した患者

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●1つ以上のリスクファクターあり

60歳以上、治療が必要なCOPD心不全狭心症、DM、呼吸不全、腎不全

I    ラピアクタ600mg iv 単回投与

C  通常のケア、通常のケア+タミフル

O  症状改善までの時間

ダブルブラインドのRCT 多施設研究 

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タミフルを使用する郡(NAI)と使用しない郡に分けて、さらにそこからラピアクタを使う郡と使わない郡に分けている。

平均年齢は40-50歳前後

 

結果

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症状改善までの時間はラピアクタを使っても使わなくても、変わりなし (P = .97).

 

48時間以内に使用すれば少し症状改善の時間が早くなるかも (42.9 vs 58.2)

ICU入室者も症状改善の時間が早くなるかも(31.5 vs 50.2 )

ただ、有意と言うには数は足りない模様

 

副作用も両郡で変わりなし

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結果

ラピアクタ600mgを使っても症状改善までの時間は変わらない(少なくともタミフルで良い。)

ICU患者や48時間以内に使用した患者ではラピアクタ600mgの単回投与は症状改善の時間が短い傾向があるかもしれない。

 

 

 

●まとめると・・

タミフル同様に症状改善の時間を1日弱早くする。

タミフルに劣っているわけではなさそう。

ICUに入るような症例では300mgより600mgのほうが効果はあるかもしれない。

 さらにラピアクタは600mgは300mgに比べて副作用が多い傾向。

なお、ラピアクタアナフィラキシーの報告も出てきている

http://mainichi.jp/articles/20160422/k00/00m/040/134000c

 

ちなみに・・

タミフルの値段は2830円(5日間飲みきった場合)

ちなみにラピアクタ300mg単回投与の値段は6216円 600mgだと12432円

タミフルの2-4倍の値段・・

 

 

●結論

基本的にハイリスク患者や重症の患者が抗ウイルス薬の適応。

内服が出来るのであれば、タミフルリレンザを使用すべきであり、ラピアクタを使用しないほうがよいだろう。

ラピアクタを使用するとすれば、重症で経口が難しい場合に300mgを単回投与する

ICUに入るような超重症例にのみラピアクタ600mgの単回投与を考えても良いかもしれないが意見は別れる・・