髄膜炎マニュアル
細菌性髄膜炎のマニュアルを一部公開します。
・細菌性髄膜炎は抗菌薬投与が1秒遅れるたびに予後が悪化する超緊急疾患である。
・総合的な判断が要求されるため、単独の病歴や身体所見、検査所見で髄膜炎を否定してはいけない。
・細菌性髄膜炎では1時間以内に抗菌薬投与を行うべきであり、髄液検査や頭部CTで抗菌薬投与が遅れることは、あってはならない。
・少しぼーっとしている程度の軽度の意識障害を見逃してはいけない。必ず家族や知人に実際に診てもらい、いつもと違うかどうか確認してもらう。
・意識障害、神経学的巣症状を認める場合は、細菌性髄膜炎の可能性が高い。
・尿路感染による敗血症は髄膜炎のように意識障害と頭痛をきたすこともあるが、高齢者では膿尿を認めても無症候性細菌尿であることもあるため安易な髄膜炎の除外は慎む。
・項部硬直が明らかであれば髄膜炎を考えるが、項部硬直がないという理由で髄膜炎を否定してはいけない。
・項部硬直よりも痛みで顎を胸につけることができないというneck fection testは項部硬直よりも感度が高い可能性があり、有用である。 家庭医療 6: 10-15, 1999 髄膜刺激症状の検出における Neck Flexion Test の有用性
・jolt accentuationで髄膜炎が除外できるのは、意識清明で、病歴、患者背景、バイタルから総合的に判断し、髄膜炎の可能性が十分に低い場合のみである。
- 細菌性髄膜炎の治療
・細菌性髄膜炎は超緊急疾患であり、1秒の遅れが命取りになりうる。
・来院後1時間以内に抗菌薬を開始することが必須である。
・市中発症の細菌性髄膜炎では、抗菌薬投与前~抗菌薬投与と同時にデキサメタゾンを投与するべきであるが、院内感染や手術関連ではその限りではない。
サンフォードガイドライン2019/日本神経治療学会ガイドライン 参照
・50歳未満,免疫不全 , 慢性臓器疾患の既往歴なし
第1選択
CTRX 2g 12時間毎 +VCM45~60mg/kg/日 を6-8時間毎に分割して投与(トラフ値20を目標にTDMを行う)
第2選択*
MEPM 2g 8時間毎 ±VCM 500-750mg 6時間毎(最大2-3g/日まで)
*ただし日本ではカルバペネムによる肺炎球菌耐性率が高く、筆者はMEPMを積極的に勧めない。神経治療学会のガイドラインでもCTRX+VCMでも可とされている。
・50歳以上,免疫不全 , 慢性臓器疾患の既往歴あり
第1選択
CTRX 2g 12時間毎 +VCM45~60mg/kg/日 を6-8時間毎に分割して投与(トラフ値20を目標にTDMを行う)+ABPC 2g 4時間毎(APBC/SBT 3g 4時間毎でも代用可能)
第2選択
MEPM 2g 8時間毎 ±VCM 500-750mg 6時間毎(最大2-3g/日まで) (トラフ値20を目標にTDMを行う)
・肺炎球菌性髄膜炎に対して予後を改善しうる。
・市中発症の細菌性髄膜炎では抗菌薬に併用する。
・抗菌薬投与前に投与することが重要であり、遅くとも同時に開始する。
デキサメタゾン0.15mg/kgを6時間毎 4日間 (初回抗菌薬投与前に開始)