コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

COVID19への抗体カクテル療法

COVID19の抗体カクテル療法について調べてみた

病態を考えれば重症化リスクが高い患者が軽症でありvirus loadが高いが症状が乏しい初期に使うことで重症化を抑えることが期待される。

 

査読された論文では以下が有名

REGN-COV2, a Neutralizing Antibody Cocktail, in Outpatients with Covid-19

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2035002

 

P COVID19が証明された外来患者で酸素は93%を超えている ハイリスク患者

発症して72時間以内

I 2.4 g of REGN-COV2, or 8.0 g of REGN-COV2 

C プラセボ

O ウイルス量 COVID19に関連して医療機関を受診する回数

 

結果としては

ウイルス量は抗体を投与した患者で有意に低下

特に、抗体価が作られていなかったり、高ウイルス量ではその効果は顕著

 

血清抗体陰性のサブグループでは、プラセボ群では33人中5人(15%)、抗体療法使用群では80人中5人(6%)が医療機関を受診した。

 

ということで、ウイルス量は減らして、医療機関の受診も減らすとのことでも、ちょっとアウトカムが微妙。。

 

 

そこで、査読前論文を読んでみた

 

https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2021.05.19.21257469v1.full.pdf?fbclid=IwAR30t7kW1u2aqho3bQxyzhCjDFABY_JznGfqT0qltLwuvNa7aRM3x_xWURI

 

REGEN-COV Antibody Cocktail Clinical Outcomes Study in Covid-19 Outpatients

 

 

P COVID19が証明された外来患者で1つ以上の重症化リスクを持っている

発症して72時間以内

I 2.4 g of REGN-COV2, or 1.2 g of REGN-COV2 

C プラセボ

O 入院or死亡の複合エンドポイント

ダブルブラインドの多施設RCT

解析者はブラインドされていない

ベースラインは同等だが、肥満が多い BMI30前後の患者が対象

具体的なベースラインの基礎疾患はTable1に記載なし

サンプルサイズは不明

 

脱落も多い印象

脱落群は解析しておらず

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5607人をランダム化しているが、解析しているのは4057人→72%のみ解析

脱落の原因は、フォローアップ不足、主観的な決定?などが主因

 

 

結果としてはカクテル療法群のほうが入院or死亡が少ない

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2.4g 71.3% (1.3% vs 4.6% placebo; 95% CI: 51.7%, 82.9%; p<0.0001) NNT:30

1.2g 70.4% (1.0% vs 3.2% placebo; 95% CI: 31.6%, 87.1%; p<0.0024) NNT:45

 

なお、副作用は先のNEJMの試験も今回の試験も同様で抗体療法による明らかな増加は認めない。

 

●感想

抗体療法は思っているより効果が定かではないのかも。

NEJMの論文はアウトカムの設定が代替アウトカムなので、なんとも言えない。

査読前論文はhard outcomeであり最もこちらの知りたい疑問に答えてくれるが、脱落が多すぎるため、real wordでは思っているより効果は出ないのかもしれない。

なおBMI30の8割以上が白人の集団を対象としているので痩せているアジア人にも効果があるかは、わからない。

ただし、軽症のCOVID19に早期に投与することで重症化を防ぎ得る薬は、他になく、短期的な副作用は許容範囲

現状は、ハイリスク群で発症早期で酸素を使用していない症例に対して、使用するほうがよいと思われる。。

 

 

追記 

NEJMに皮下注射の抗体カクテル療法についての最新のエビデンスが掲載されていました。

Subcutaneous REGEN-COV Antibody Combination to Prevent Covid-19

https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa2109682?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori:rid:crossref.org&rfr_dat=cr_pub%20%200pubmed

 

P 家族内の濃厚接触者で無症状(家族がSARS-CoV-2感染の診断を受けてから96時間以内)

E 1200 mg of REGEN-COV  抗体カクテル 単回皮下投与

C プラセボ

O 28日日以内に、症候性のSARS-CoV-2感染が発生した割合

 

ベースラインは各群で同様 RCT

ハイリスクの患者は3割程度、 65歳以上、CKD、BMI≧35、糖尿病、免疫不全、心血管疾患、高血圧、COPD などがハイリスクに相当

Double blind

 

人数は合計1248人必要→サンプルサイズも足りている

脱落もしておらず、ランダム化した群をすべて解析

 

●結果

全体として、症状のあるSARS-CoV-2感染が発生したのは、REGEN-COV群では753人中11人(1.5%)、プラセボ群では752人中59人(7.8%)であった(相対リスク減少率81.4%、オッズ比0.17、P<0.001)。

→NNT:16

 

 

 

重篤な副作用は認めず、あっても軽微な副作用

 

 

 

 

●感想

発症前の無症状状態における抗体カクテル療法は非常に有用。

もっとも、よい使い方はハイリスクの患者の家族がCOVID19と診断された場合に、発症前に抗体カクテル療法を使う方法と思われる。

クラスターでの使用も有用か。

 

感染症の専門医も、ロナリープを推奨している

 
今後のエビデンスの蓄積が必要だが、可能な限り早期に、ハイリスク群に使用することで、COVID19の重症化や発症を防ぐことが期待できると思われる。

誤嚥性肺炎×マルモレクチャー Zoom @隠岐

本日は、マルモ×誤嚥性肺炎で隠岐病院にてZoom講演をさせていただきました。

大浦誠先生の最も得意とする領域ですが。。

自分の勉強を兼ねてさせていただきました。

お呼びいただき、感謝です。

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○もっと詳しく勉強したい方は以下がオススメです。

オニマツ現る! ぶった斬りダメ処方せん

 

読みました。

COIなし。

これ、本当にすごい本ですね。

内科外来の極意が詰まっています。

ダメ処方箋のダメさは自省を促すとともに、深く共感できるのは後期研修医時代に総合診療の指導医に外来について徹底的にフィードバックをいただいたことを、改めて思い出しました。

後輩の外来指導も改めて考えないといけないなと思いました。

総合診療の専攻医の先生、内科外来をする内科専攻医の先生にとって、本書は必読ですね。

コモンなめるな!というのはまさにそうで、コモンディジーズをいかにきっちり診療するかでその医師の内科力がわかります。

自省もこめて。

個人的には咳喘息にはβ刺激薬不要でICS+シングレア、咽頭の炎症を抑えるためのNSAIDSを早期にという概念は勉強になるとともに、自分の未熟さを痛感しました。

頓服に対する國松先生の指導の深さも勉強になりました。

偏頭痛のマクサルト頓服のまえにNSAIDSで頓服の練習をさせるというのは実践的ですね。

酸棗仁湯、安中散、桂枝加芍薬湯などの漢方の使い方も、勉強になりました。

内科初診外来をおこなうすべての医師におすすめです。

ベテランであっても新しい知見があります。

内科初診外来をする医師は必見です。

最後の、処方箋も勉強になります。

熱中症における処方箋など目からウロコです。

いや、本当にすごい。。

 

 

献本御礼 フレームワークで考える内科診断

MEDSi)株式会社 メディカル・サイエンス・インターナショナル / フレームワークで考える内科診断

 

 

 田中先生から献本いただきました(COIあり)

そもそも、なぜ私に献本いただいたかというと、拙書の総合内科ただいま診断中がきっかけです。

 数年前の本ですが、意外にまだ学生さんが読んでくれていて嬉しいです。

 

 

同書で扱った概念が「フレーム法」で、フレームワークで臨床推論を考えようという趣旨でした。

特に、初学者が直感的診断を急に考えることは難しいため、まずは型を覚える。

その型が、フレームワークであるという方法です。

例えば、不明熱は、感染症膠原病、悪性腫瘍、薬剤の4つで考えるというのもフレームワークです。

また失神は、心血管、起立性低血圧、頭蓋内疾患、迷走神経反射の4つで考えるというのもフレームワークです。

特に、研修医の先生が臨床推論を学ぶ際は主訴ごとのフレームワークを先に学ぶとよいと言って来ました。

詳細は以下。

jyoutoubyouinsougounaika.hatenablog.com

 

今回、出版社から本書を翻訳するうえで、意見を求められました。

フレームワークを臨床推論に応用するということに関して、全く同じ考え方をする方が海外にもいることに驚きました。

また、内容も非常に緻密であり、これは素晴らしい本になると返事をしました。

そして、それがついに翻訳されました。

監訳の田中先生のご尽力に頭が下がります。

 

内容を見ると、主訴や検査以上、病名ごとにフレームワークがきれいに整理されていて、驚きました。

私も総合内科専門医ですが、内科診断学いや総合内科という分野自体が、「整理」の学問であると考えています。

 臨床や論文などで培った、臨床知が精緻にフレームワークとしてまとめられています。

内科や総合診療のシニアレジデントの先生は、外来や病棟で、本書のフレームワークを症例を経験するたびに、ぜひ参照してください。

また、臨床推論のカンファレンスを行う場合は、本書のフレームワークに沿って鑑別診断を整理すると格段にやりやすくなると思われます。その意味でも、教育ツールとしてもオススメ出来ます。

内科力を向上させたい、すべての先生にお薦めです。

 

 

 

multimorbidityのレクチャー

本日は、市立奈良病院のレジデントデイでmultimorbidityのレクチャーをしました。

日本におけるmultimorbidityの総説としては以下が非常に優れています。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/generalist/42/4/42_213/_pdf/-char/ja

 

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この総説でも述べられているように、multimorbidityの定義、介入すべき患者、介入方法、アウトカムの選定などが課題となっています。

 

一般的にはmultimorbidityは慢性疾患を2つ以上有することと定義されますが、その慢性疾患を何を選択すべきが完全に統一されていません。

 

日本におけるmultimorbidityの研究の最近のフラッグシップは、やはり青木先生の研究ですね。

私も、先日のプライマリケア学会で発熱外来におけるmultimorbidityの研究を発表した際もこの研究におけるmultimorbidityの定義を採用しました。

なお、座長が青木先生出会ったのもありがたかったです。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

ここでは以下の慢性疾患が2つ以上あることとmultimoribidyと定義しています。

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これらを因子分析することで5つのパターンを同定しました。

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特に心血管/腎/代謝パターンは10個以上の薬剤を内服していると定義されるexcessive polypharmacyと特に関連があることが示されています。

 

これらは、大浦誠先生が医学界新聞の連載で紹介されています。

 

www.igaku-shoin.co.jp

 

このパターンで典型的なのは、コテコテの糖尿病があり糖尿病性腎症となっており、高脂血症心筋梗塞および脳梗塞の既往歴があり、心不全となっているような症例ですね。

当然、内服薬も多くなってきます。

これらのパターンを分けることで、パターンによって介入方法が異なる可能性が、ありえると考えます。

 

最近の青木先生の研究ではmultimorbidityとQOLの関連についての前向きコホートを論文化されています。

これは以下の青木先生のブログで詳細を見ることが可能です。

academicgp.hatenablog.com

 

 

論文はこちらBMJ open誌になります。

bmjopen.bmj.com

 

 

前述のmultimorbidityとQOLとの関連をみた研究になります。

QOLはSF-36で測定されています。

SF-36は以下のホームページに日本語版が記載されています。

京都大学の福原先生が研究されてきた領域です。

SF-36 | Qualitest株式会社

 

 

結果は以下の通り

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・心血管代謝疾患パターンは身体的・社会的QOLの低下と有意に関連し、悪性疾患パターンは身体的QOL低下とのみ有意に関連していました。

 

 

なお、当院の発熱外来で行った研究では、発熱外来を受診した303人のうち37%がmultimorbidityでした。

前述の青木先生の研究では、一般人口の18歳以上では29.9%、65歳以上では62.8%がmultimorbidityでした。

発熱外来は一定数既往歴が少ない若年患者もいますが、高齢者が多い内科の定期外来では、もっとmultimorbidityが多いと思います。

当院での研究ではmultimorbidity群は高齢者が多く(76歳 vs 31歳 中央値)、ポリファーマシー(薬剤5つ以上)が多く(48% vs 0% 中央値)、clinical frailty scaleも高い傾向を認めました。(3 vs 1 中央値)

multimorbidity群は高齢であるという交絡因子の影響もありますが、年齢を含めた交絡因子を調整してもmultimorbidity群は緊急入院のリスクであることが判明しました。

調整オッズ比(95%信頼区間): 6.3(1.98-22.4) 

 

発熱外来でもmultimorbidityの患者さんは要注意したほうがよいと言えるかもしれません。

 

それでは実際にどうすれば、よいかとなると大浦先生が普及されているバランスモデルとアリアドネの原則が重要になるかと思います。

 

バランスモデルは以下の連載

www.igaku-shoin.co.jp

 

アリアドネの原則は以下のブログ

moura.hateblo.jp

 

患者さんの意向やQOLを中心に起きつつ、最も肝となる病態がどこか見極めつつバランスを取ることが個人的には重要かと考えています。

 

 

最近は以下のような書籍も発売されており、勉強しやすくなっていますね。

 

 

 

ということでmultimorbidityは総合診療の研究のど真ん中なので、今後、ますます盛り上がることが期待されますね!

 

多剤併用する高齢者の降圧薬を中止したことによる血圧への影響

高齢者では特にフレイルになると降圧薬を中止することもあります。

ただ、実際に中止しても問題が無いのかというのはあまり調べられていません。

今回、高齢者を対象にしたRCTで降圧薬を中止することの影響を調べたRCTを読んでみました。

 

Effect of Antihypertensive Medication Reduction vs Usual Care on Short-term Blood Pressure Control in Patients With Hypertension Aged 80 Years and Older: The OPTIMISE Randomized Clinical Trial | Clinical Pharmacy and Pharmacology | JAMA | JAMA Network

 

P かかりつけ医が減薬が適切であると判断した年齢 80 歳以上で、収縮期血圧が 150 mm Hg 未満で、少なくとも 2 種類の降圧薬を受けている高齢者

除外項目 過去 12 か月以内の心室機能不全or心筋梗塞or脳卒中、二次性高血圧症、または同意能力が欠如してる患者

I 減薬

C そのまま継続

O 12 週間の時点で収縮期血圧が 150 mm Hg 未満である

 

RCT 非劣勢試験

 

ベースラインは以下の通り

Baseline Demographics and Clinical Characteristics

平均85歳

診療所に通院しており中等度以上のフレイルは1割未満の集団

慢性疾患が2つ以上ある(多疾患併存)は98%

BMIは比較的高め

 

結果は以下

Primary Outcome Difference in the Proportion of Patients With Clinically Acceptable Systolic Blood Pressure Lower Than 150 mm Hg at 12 Weeks

 

降圧薬を中止しても継続しても12週時点の血圧は非劣勢であると

 

○感想

なかなか解釈が難しい研究です。

心血管イベントがある群は除外されており、選択バイアスもあるため今回の結果を当てはめることが出来るのは高齢者の中でも心血管リスクが低くフレイルの要素が少ない群であることに注意が必要です。

今回の研究は降圧薬を中止しても心血管リスクが悪化しないことまでは示されていないので、今後の課題だと思います。

今後のRCTにも期待ですが、コホート研究などの観察研究のほうがこういう疑問には向いているような印象も持ちました。

いずれにせよ、内服を中止するというRCTという発想は斬新であり興味深い研究です。

 

最近、NEJMのRCTで厳密な降圧が心血管イベントの発生率を低下させることが示されています。 

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1901281

ただし、失神、腎不全、電解質異常などの副作用も厳密なコントロールで増加することが示されています。

実臨床では高齢でも健康で認知症もなくフレイルスコアも低い群では厳密な降圧による恩恵が高いかもしれません。

一方でポリファーマシーになっておりフレイルや転倒のリスクがあれば、降圧薬を中止する恩恵が高いかもしれません。

 

 

 

第2世代と第1世代のフルオロキノロンはアキレス腱断裂のリスク

もともと、キノロンとアキレス腱断裂のリスクは知られています。

今回、家庭医療のトップジャーナルであるAnnals of family medicineに日本から発信された論文を見つけたので少し読んでみました。

https://www.annfammed.org/content/19/3/212?fbclid=IwAR0Ux0xgkf4diUdO7yO-mZUOvmseivuwwxz5EmOFd_gj_8u5tLzhkXLqf3M#ref-1

 

Self-Controlled Case Series Analysisという手法を用いてレセプトデータを解析した研究になります。

熊本の後期高齢者保険、医療保険の加入者を対象としているようです。

Self-Controlled Case Series Analysisの詳細は以下を御覧ください。

https://biostatistics.m.u-tokyo.ac.jp/wp-content/uploads/2019/09/pdf/20181127symp04.pdf

 

ケースコントロール研究の亜種のようです。

ケースコントロール研究はアウトカムが稀な研究において有用ですが、アウトカムが起こった群を後ろ向きに解析する手法になるので、対照群の設定が困難とされています。

ベースラインを同等にすることが難しく、交絡因子の調整が非常に困難であることが難しいとされていますね。

 

Self-Controlled Case Series Analysisはアウトカムが起こった群におけるリスクが無い期間をコントロールとすることでベースラインを揃える手法のようです。

 

今回の論文のPECOは以下のようになります。

 

P アキレス腱断裂を起こした患者

E 抗菌薬暴露期間

O 抗菌薬非暴露期間

O アキレス腱断裂の割合

 

Figure 1.

リスク期間は、過去の研究に基づき、抗生物質の処方から30日とし、異なる抗生物質のリスク期間が重なっている場合はリスク期間を合算しているようです。

 

第1世代のキノロンの代表格はノルフロキサシン

第2世代キノロンの代表格はレボフロキサシンとシプロフロキサシン

第3世代キノロンの代表格はガレノキサシンとモキシフロキサシンです

 

結果は以下のとおりです。

Antibiotic Type Incidence Rate Ratio (95% CI)
First- and second-generation fluoroquinolones 2.94 (1.90-4.54)
Third-generation fluoroquinolones 1.05 (0.33-3.37)
Nonfluoroquinolones

1.08 (0.80-1.47)

 

第1と第2世代キノロンはアキレス腱断裂の incidence rate ratioは3倍程度

 

Subgroup Incidence Rate Ratio (95% CI)
First- and Second-Generation Fluoroquinolones Third-Generation Fluoroquinolones Nonfluoroquinolones
Sex
  Male 2.94 (1.67-5.18) 0.63 (0.09-4.60) 1.06 (0.71-1.59)
  Female 2.86 (1.45-5.66) 1.67 (0.39-7.06) 1.14 (0.71-1.83)
Recent corticosteroid usea
  Yes 8.34 (2.27-30.67) 6.30 (0.61-64.81) 0.92 (0.27-3.12)
  No 2.52 (1.32-4.81) 0.00 (0.0 to ∞) 1.07 (0.70-1.64)

 

またステロイド使用でさらに incidence rate ratioは高くなるようです。

 

○感想

キノロンの世代間でリスクが違うというのは新たな発見です

またステロイド使用でリスクが高くなるというのも興味深いです。

incidence rate ratio(IRR)を用いているのはおそらく、観察期間の長さも考慮にいれる必要があるからでしょう。

https://www.igaku-shoin.co.jp/paper/archive/old/old_article/n2003dir/n2518dir/n2518_04.htm

 

Total Exposure Period and Number of Achilles Tendon Ruptures by Antibiotic Type

 
Antibiotic Type Total Exposure Period, Days No. of Achilles Tendon Rupturesa
First- and second-generation fluoroquinolones 15,000 24
Third-generation fluoroquinolones  4,290  3
Nonfluoroquinolones 64,590 29
Overlapping antibiotic types  7,187  3

今回の研究でも上記のようにesposure periodをdaysで記述し解析しています。

 

臨床的にもステロイド使用者では特にキノロンの使用を気をつける、激しい運動をする人ではキノロンの使用を気をつけるということは言えるかもしれません。

勉強になりました。