コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

宇井先生 カンファ 2018年 1月26日

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モルヒネを症状に合わせて漸増し過量に使用しなければモルヒネが死期を早めるエビデンスはない

Nsは使い慣れていないと抵抗があるので、足並みを揃えながらモルヒネを使う。

腎不全患者の呼吸困難にモルヒネを使うべきか?
⇒腎機能障害にはモルヒネは使用しないほうが望ましいとされるが、減量して慎重に使うことは有効であることも多い。呼吸困難への効果はモルヒネがやはり優れている。
自尿がない、もしくは透析患者ではモルヒネは溜まっていくので原則禁忌で、肝代謝フェンタニルも考慮する」

〇呼吸困難への強さの順番
モルヒネ
②オキファスト
フェンタニル
効果があればあえてモルヒネに変えなくても良い。

 

呼吸数は20台ぐらいにできると、ご家族も落ち着いて見ていられることが多い
緩和ケアのプライマリーアウトカムは患者の症状・QOL
家族の満足度も大切(家族は第二の患者である)


〇症状が強く鎮静を考慮する時に考えたいこと。
本人が意思表示できなければ代理意思決定者・医療スタッフと相談して決定するが、声がもともと出せない。認知症などの患者さんの鎮静の可否は、本人の意思確認が非常に難しい。
セレネースサイレースなど、ほかの方法も常に考えたい。

緩和の状態で皮下点滴で投与できないのは、概ねアセリオ・ロピオンの鎮痛薬のみ。ステロイドセレネースも皮下で投与可能。

〇コミュニケーションが難しく予後予測が短い患者さん。
身の置き所がなさそうにしている場合に、がんの症状が辛いのか、死の兆候を示唆する死前せん妄なのかの判別は難しい。
モルヒネのレスキューを試して落ち着くようなら、症状が辛い可能性は高くなる。

 

ステロイドの使用法

漸減法・漸増法がある。すぐに症状を抑えたくて時間がない場合は漸減法、予後が月単位の方の食欲不振などには漸増法を用いることが多い。
リンデロンまたはデカドロン4mg錠の採用がない場合、2mgを内服しようとすると食欲不振の方に0.5mg錠を4錠も飲ませることになる。内服量は嚥下状態や全体像も捉えながら判断したい。

症例カンファ 2018年 1月25日

 

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本日は症例カンファでした。

若年女性の有痛性片側性下腿浮腫の症例でした。

片側性下腿浮腫では、DVT、感染、炎症(ベーカー嚢胞破裂)を考える。

身体所見が大切で、局在していない、発赤が乏しい場合は、感染よりもDVTを積極的に考える。

2-point echoが陰性でもDVTの事前確率が高いのであれば、積極的にwhole echoを行うべきなど、学びが多かったです。

また妊婦のDVTには、ワーファリン、DOACは催奇形性の問題で使用すべきではなく、ヘパリンのみ使用可能と学びました。

バルサルタンの疑惑のRCT

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以下、感想

日本の黒論文として有名な論文を読んでみようという趣旨。

普通に読んでみましたが、介入、アウトカム、PROBE法がネックかなと思いました

primary outcomeが複合エンドポイントですが、死亡率などのHard outcomeに差が出ておらず、狭心症による入院という医師の主観が入る項目で優位差を出しています。

PROBE法を使用していることを考えれば、信頼性に欠けると思いました。

また、例の疑惑を知らなくても、冠動脈疾患と心不全がある患者の第1選択薬はACE-Iなので、ACE-Iとの比較が知りたいところです。

いずれにせよ、このRCTだけでACE-Iではなく、バルサルタンを使おうとはならないと感じました。

ただ、普通に読むだけでは、意図的な改ざん を疑うことは不可能だと思います。

いずれにせよ、ひとつのRCTだけで臨床的な判断をすべきではないという教訓になると思います。

救急外来診療の原則

【献本御礼】

著者に頂いたので、感想を書きます。

著者とは個人的な親交があり、本を献本をしてただいたのでCOIもありありなのですが、それを差し引いていただければと思います。

 

管理人は、今の職場ではあまり救急外来に携わることはありませんが、後期研修医時代は内科系救急の暴露はそれなりにしていました。

今も、内科に携わることもあり、内科系救急はそれなりに経験もあります。

通常教科書を読むだけではなく、経験を積むことでしか実践知は積み上げることができません。

本書は、そのような実践知のエッセンスが凝縮されています。

たとえば、細菌性髄膜炎を疑えば全例ヘルペス脳炎の治療をすべきというのも、実践知そのもので、なるほどと感心しました。

救急外来の本と言いながら、誤嚥性肺炎や病状説明など通常の救急の本では扱わないような、しかし大切なポイントが扱われているのも、非常にユニークです。

しかし、本書の最も大きな特徴は、基本の徹底です。

常に、病歴、身体診察、バイタルサイン、基本的な検査(エコー、血液ガス、心電図)を疎かにしないという姿勢が徹頭徹尾、貫かれています。

救急外来で失敗するパターンのうち、病歴や身体診察やバイタルサインが不十分であったことは良く経験されます。

本書を読むことで、研修医は救急外来で覚えるべき基本を身につけることが出来ます。

指導医も、自分自身の診療を顧みる良い機会になるのではと考えます。

 

うかい先生 レクチャー

画像に含まれている可能性があるもの:1人、スマイル、座ってる、室内

 

うかい先生が当院に見学に来てくださりました。

都内の小規模病院の、実際を見ていただきました。

特に、当院の地域包括ケア病棟も見ていただきました。

見学に来ていただいたのに、レクチャーをお願いしちゃいました。

 

ICF

「ICF リハ」の画像検索結果

 

 

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リハの基本のフレームワークICFで、特に

 

機能

活動

参加

 

に分けて考えるのが大切と教えていただきました。

 

ICFフレームワークは、適宜、患者中心の医療の方法(PCCM)

http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02878_06

「患者中心の医療」の画像検索結果

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BPSモデルなどと組み合わせると分かりやすいとおっしゃっていましたが、確かにという感じです。

関連画像

 

 

 

地域包括ケア病棟には、他院から廃用症候群でリハビリをお願いされるケースも結構多いので、リハの概念はとても大切ですね。

うかい先生、ありがとうございました!

 

 

 

MBA的医療経営 目指せ!!メディカルエグゼブティブ

 

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著者から送っていただきました。

以下、感想になります。

 

。。。。。。

結論から言うと、非常に素晴らしい本である。
私は、8年目の総合内科医であるが、一応は当院総合内科の責任者であり、自分の上は副院長という立場である。
必然的に、科をどのようにマネージメントするか、どのようにブランディングするかなどを考えざるおえない立場にある(自分が出来るか出来ないかにかかわらず。)
また、病院の経営会議にも一応参加しているので、どのように経営を良くするかということも考えていた。
MBAにも興味を持ち、実際に説明会にも行ったのだが医師がMBAを持つ意義についていまいち腑に落ちない感じがしていた。
そんな時に、著者の角田先生とソーシャルネットワークでつながり、本書を送っていただいたのである。
本書を読み、これからの医師にとってMBA的な能力が必要であるという確信を持つことが出来た。
 
医療経営戦略の章では、MBAの考え方を医療の世界に翻訳し分かりやすく解説している。
MBAに関する本を医療者が見ても、自分の業界のことではないのでピンと来ないものの、現役医師が解説するとこうも腑に落ちるのかと感動した。
特に興味深かったのは、マーケティング、経営戦略、ブランディングの章である。
自院をどうするべきかを考えるよいきっかけになった。
病院の経営会議では、目先の利益に目がいきがちだが、それよりも大局的な戦略が必要であり、つまるところどのように社会貢献すべきかという理想が大切ということだと思う。
このような視点はドラッカーのマネージメントとも共通している。
また、多くの中小規模病院が大規模急性期病院の真似をしているという指摘も耳が痛い。
当院の、地域のニーズや立ち位置を考えれば、Post Acute、在宅バックベットに重点を置き、地域包括ケア病棟において業界1を目指すようなブランディング戦略が必要ではと思いをめぐらした。
 
他にも、戦略的な医師ブランディング、キャリアマネジメント、交渉術などにも言及がありとても興味深かった。
パーソナルブランディングを病院が後押しすべきであるという指摘は、まさに我が意を得たりである。
臨床+アルファで研究やマネージメントなどが必要というのもその通りで、これからはパーソナルブランディングをプログラムとして支援する仕組みが必要なのだと感じた。
特に、後期研修終了後の医師のキャリアプランは、病院総合医の業界ではないに等しく、パーソナルブランディングを支援する6年目以降のフェローシップの必要性を痛感する。
交渉術も、医療業界ではあまり取り上げられない概念だが、確かに非常に有用であると感じた。
 
本書のクライマックスは、アドラー真理学的病院経営の章であると考える。
他者との比較ではなく、理想の病院像と自院の比較を考えるべきというのはその通りだと感じた。
中小規模病院は、大規模病院に比べ、あれがないこれがないと悲観的になるべきではない。
中小規模は大規模病院にない強みがあるはずだ。
職員や地域との距離が近く、フットワークが軽い。
地域包括ケア病棟を有するので、患者さんのトータルマネージメントに関わることが出来る。
とにかく在院日数を短くしてひたすら回す必要がある大規模急性期病院にはない小規模病院の強みをいかにいかすべきか。
心を新たにすることができた。
 
経営学は、小手先のお金の問題というイメージがあったが、そうではないことを本書を読んでよく理解できた。
本質的に自院がいかに地域や社会に最大限貢献できるかを考えるための理論的背景が、医療における経営学の本質だと考える。
科の運営においても、自科が病院だけではなく地域や社会にどのように貢献できるかを考えるべきであると思う。
 
なお、著者が市立奈良病院出身というのも、奈良市出身の私にとっては親近感を覚えるポイントであった。
これも人の縁なのだと思う。
このような素晴らしい本を読む機会をいただいた著者の角田先生に感謝したいと思う。