コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

DOACのネットワークメタアナリシス BMJ

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Oral anticoagulants for prevention of stroke in atrial fibrillation: systematic review, network meta-analysis, and cost effectiveness analysis | The BMJ

 

心房細動患者のDOACの有効性、安全性、費用効果を比較することを目的としたネットワークメタアナリシス。

Medline、PreMedline、Embase、およびCochrane Libraryのデータを使用

心房細動患者の脳卒中予防のためのDOAC、ワーファリン、抗血小板薬を比較した、出版されたRCTを対象としている。

94665人の患者を対象とした23件のRCTが分析

DOACは2.0〜3.0の目標INRを達成したワルファリンと比較している。

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ワーファリンと比較して脳卒中または全身塞栓症のリスクが低下

アビキサバン5mg 1日2回(オッズ比0.79,95%信頼区間0.66〜0.94)

ダビガトラン150mg 1日2回(0.65,0.52〜0.81)

エドキサバン60mg 1日1回(0.86,0.74〜1.01)

リバロキサバン20mg 1日1回(0.88,0.74〜1.03)

 

1日1回60mgのエドキサバン(1.33,1.02〜1.75)およびリバロキサバン20mg(20mg 1日1回、1.35,1.03〜1.78)の方が、ダビガトラン150mgを1日2回投与した場合よりも、脳卒中または全身塞栓症の危険性が高い結果であった。

 

全死亡のリスクも、ワルファリンよりもすべてのDOACで低かった。

 

 

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DOACはワーファリンと比較して重大な出血のリスクを減少させた。

ダビガトラン110mgを1日2回(0.80,0.69~0.93)

エドキサバン30mgを1日1回(0.46,0.40~0.54)

エドキサバン60mgを1日1回(0.78,0.69~0.93)

アピキサバン5mgを1日2回(0.71,0.61~0.81) 0.90)

 

出血のDOAC間の危険性(左のほうが危険性が高い)

ダビガトラン150㎎ 1日2回>アピキサバン5㎎ 1日2回 (1.33, 1.09 to 1.62)

リバロキサバン20㎎1日2回>アピキサバン5㎎ 1日2回 (1.45, 1.19 to 1.78),

リバロキサバン20㎎1日2回>エドキサバン60㎎ 1日1回  (1.31, 1.07 to 1.59).

 

頭蓋内出血のリスクは、ワルファリンと比較してほとんどのDOACでは低下していたが、消化管出血のリスクは特定のDOACでワルファリンよりも高かった。(特に、ダビガドラン150㎎、リバロキサバン20㎎)

 

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アピキサバン5mgを1日2回投与した場合、最も多くのベネフィットが得られ、ワルファリンに比べて費用対効果が高かった。

 

特定のDOACは、ワルファリンと比較してベネフィットがある。

 

・感想

DOACを使うならアピキサバン。

アピキサバンは、ワーファリンに比べて少なくとも劣ってはおらず、むしろコストを考えてもベネフィットがある可能性があり。

1日1回投与が必要であれば、エドキサバンか。リバロキサバンは、やや出血リスクが高い印象だが、あまり変わりないかもしれない。

 

ONRC 5th 阪南市民病院

ONRC 5th 阪南市民病院
 
今年も、勉強に来ました。
今回は、一般参加者として参加したら一般の部で優勝してしましました。。
なんだか、すみません。。
阪南市民病院の院長、職員の皆様のおもてなしのすばらしさに感動しました。
総合診療を阪南地域でやりたい先生には、お勧めです。
 
画像に含まれている可能性があるもの:1人以上、座ってる(複数の人)

土曜日の紹介は嫌われる  感想

www.nanzando.com

 

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【献本御礼】

 編集の先生方からいただきました(COIあり。)

私は内科ベースの総合内科医であり、この本で言うところの病院総合医という立ち位置になります。

家庭医の先生方と仕事をすることも多く、家庭医に紹介して連携できればよいなと夢想しながら、なかなかできなかった理想がこの本では実現されています。

正直に言うと、現在の日本ではこの理想郷を生み出すのには、奇跡的な状況がそろわないと難しいと思います。

浮間診療所のように家庭医がグループプラクティスを行う診療所は、診療所の形態として理想的なものだと考えますが、そもそもそのような診療所がまだ稀有であるという実情があります。

また、そのようなグループプラクティスを行う家庭医の診療所の近くに「たまたま」家庭医療のバックグラウンドを共通で認識している病院総合医がいる病院があるとなると、相当に奇跡的なことであるように思えます。

もちろん、実際にはこのような奇跡的な状況であっても、最初からお互いを完全に理解することは難しく、カンファを重ねることで病院や診療所の実状が徐々に分かってくる過程も興味深かったです。

ただし、後半になり顔が見える関係になってくると、よりお互いの連携がスムーズになっている様子が見受けられ、やはり病院総合医と家庭医の連携は理想的なプラクティスの一つであると確信しました。

そして顔が見える関係の重要性も改めて再認識できました。

この本は、実際のカンファレンスの内容をリアルに実況中継しています。

個人的には、そのようなリアルさがとても興味深かったのですが、某レビューでは評判があまりよろしくありません。

この本の内容は、家庭医療のバックグラウンドをある程度理解していないと、何を書いているかピンと来ないように思います。

そのような意味で病院総合医にとっては、実は試金石的な本であるようにも思います。

また病院総合医の立場としても、本症例で出てくる病院総合医の全人的なコメントを読むと、自分の未熟さが浮き彫りになります。

半面、在院日数の問題などで看取りや経過観察入院へのプレッシャーが病院総合医側では強いという意見が散見されました。

当院では病院が小規模であること(130床)、地域包括ケア病床がありいざとなれば60日間入院が延長できるという点から、このあたりのストレスはそれほど多くはないように思えました。

病院総合医の立場から言うと、自分の病院のプラクティスを客観的に再認識できる良い機会にもなると思います。

それでは、このような連携は難しいのでしょうか?

例えば、家庭医療の専門医がいなくても、共通の文化を共有できる信頼できる診療所も探せば見つかるので、そのような診療所と実際の紹介症例を共有するカンファレンスが出来ればよいなと思いました。

このような連携は地域医療において最高のプラクティスのひとつであり、今後の病院総合医の在り方を考えるうえでも非常に有用な本であると考えました。

 

 

Gノート2017年 12月号 精神科特集について

www.yodosha.co.jp

 

森川が編集に関わったGノートの精神科特集について、書いてみたいと思います。

もともと、森川が日本若手精神科医の会(JYPO)の先生方と縁があり、一緒にプライマリケア領域の精神科に関する活動をさせてもらっていた縁がありました。

認定特定非営利活動法人JYPO日本若手精神科医の会 | Japan Young Psychiatrists Organization

JYPOの先生方は同世代でしたが、とても熱心で非常に多くの刺激を受けました。

我々プライマリケア医も精神科的な問題に遭遇し何らかの対処をすることもありますが、本当にこれでよいのか悩むことも多いです。

例えば、うつ病にしてもどのような場合に精神科医にコンサルトすべきなのかという問題も悩ましかったりします。

そのような問題に関して、精神科医の先生方が専門的な立場からかみ砕いて教えて頂く機会に恵まれたことは非常に良かったと今でも思っています。

そして、本書はその集大成として記念碑的にJYPOの先生方と一緒に編集をさせていただいたものになります。

精神科医の先生が書かれたということで、向精神科薬についての本というイメージもあるかもしれませんが、実際は行動変容の技法や発達障害における面接の注意点など、プライマリケア医が現場で困る内容を精神科医の先生が書いていらっしゃるので大変勉強になりました。

 もしよろしければ、是非!