コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

スピリーバレスピマットは死亡率を上昇させない??

Tiotropium Respimat Inhaler and the Risk of Death in COPD

N Engl J Med 2013; 369:1491-1501

 

 

 

A この試験の結果は信頼できるか
①その試験は焦点が明確な課題設定がされているか


P  

Inclusion

COPDと診断されている40歳以上で10pack-yearの喫煙歴がある。気管支拡張剤使用後のFEV1が予測値の70%以下。

Exclusion

6か月以内のMI。12か月以内のNYHAⅢ、Ⅳの心不全で入院歴、治療が必要な安定しないor致死的不整脈。他の肺疾患。4週以内のCOPD急性増悪。中~高度の腎障害。5年以内の治療を要する悪性腫瘍。12か月以内の薬物/アルコール依存。チオトロピウムで治療できない病態。LAMA以外の治療薬の使用有無は問わない

 

I & C  

レスピマット2.5μg VS レスピマット5μg VS ハンディヘラー18μg

の3群比較。プラセボが入ったもう一方のデバイスも吸入するダブルダミー法を採用している。

(日本の採用はレスピマット5)レスピマット2.5を使用した合剤が開発中なので本研究でレスピマット2.5も組み入れたと記載されている。

 

O 

Safety outcome→全死亡

Efficacy outcome→初回のCOPD急性増悪のリスク

 

 

A②その試験は設定された課題に答えるための研究方法がとられているか? 

ランダム化比較試験、ダブルダミー法を用いている。多施設・多民族を対象としている。(日本人は入っていない)

ハンディヘラーに対して、レスピマット2.5、5それぞれが死亡率に関して非劣性を評価した。

また、ハンディヘラーに対して、レスピマット5のCOPD急性増悪の優越性を評価した。

 

 

A③ 患者はそれぞれの治療群にどのように割り付けられたか?

ブロック法を用いている

 

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→ベースラインは同等

A④研究対象者、現場担当者、研究解析者は目隠しされている? 

全て目隠しされている

 

A⑤研究にエントリーした研究者が適切に評価されたか? 

mITT解析と記載がある

 

 

A⑥研究対象となった介入以外は両方のグループで同じような治療がされていたか? 

Table1ベースラインの特性、LABA、ICSの使用率は同等である

 

A⑦その研究のための対象患者数は偶然の影響を小さくとどめるのに十分な数か?

・死亡率

HR1.25までをマージンとした非劣性の検出力90%とすると、3.5年間の追跡機関に1266名の死亡が観察されるとして16800名が必要である

・急性増悪

ハンディヘラー群の60%に急性増悪が起こると見積もり、脱落35%、急性増悪の減少8%と予測した。

1回以上吸入し、解析に入ったのは17135名。13199名が最後まで薬を続けた。研究は早期終了していない。薬使用のコンプライアンスは90%(80-120%)だった。

 

 

B結果は何か? 
B⑧a 結果はどのように示されたか? b 有意差はあるか? 

死亡率に差はなかった。As-treated解析でも差はなかった。

急性増悪に差はなかった。

 

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c 副作用は? 

その他、心血管イベントなども差はなかった。

 

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C臨床にこの結果はどのように応用できるか? 

・製薬会社主導である点は差し引いて考える必要はある

・心血管リスクが高い人が除外されているのは注意が必要

・MI発症のP値は0.06なのでギリギリ差が出ていない。追試があればレスピマットで有意差を持ってMIが増える可能性がある

・本当に安全性を見たいならプラセボと比較すべき

・実際にはデバイスが使用できるかで処方を決めることがある