コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

Afに対するカテーテルアブレーションのRCT

Catheter Ablation for Atrial Fibrillation with Heart Failure

N Engl J Med 2018;378:417-27.


 

心房細動を有する慢性心不全患者では、有しない慢性心不全患者より予後が悪いことが知られている。薬物療法によるリズムコントロールはレートコントロールに比べ予後を改善させない。カテーテルアブレーションは心房細動を有する心不全患者の予後を改善させる可能性が複数の先行研究で示唆されているが、死亡や心不全増悪などのアウトカムを検証した大規模RCTは無い。本研究(CASTLE-AF)はそれを検証した研究である。

 

A この試験の結果は信頼できるか
①その試験は焦点が明確な課題設定がされているか
Patients

 Inclusion

18歳以上で抗不整脈薬に不応性、または副作用のため抗不整脈薬継続困難、あるいは内服を希望しない有症状の発作性または永続性心房細動をもつ、NYHAクラスII、III、IVの心不全で左室駆出率35%以下の患者

 Exclusion

Afibに対する左心系のアブレーションを受けたことがある

抗凝固薬内服またはヘパリンに対して禁忌

左室拡張期径が6cmを超えている

2ヶ月以内のACS、心臓手術、血管形成術、脳血管イベントがある

心血管に対するインターベンションが予定されている

心移植待ち

心補助デバイスが埋め込まれている

予後12ヶ月以下と予想される

コントロール不良の高血圧がある

未治療の甲状腺機能亢進症または低下症がある

末期腎不全のため透析が必要

研究への参加に精神的あるいは肉体的に耐えられない

妊娠中または授乳中の女性、または妊娠可能年齢で信頼の置ける避妊方法を取っていない女性

既に他の研究に参加している

心臓再同期療法を受けている(2010年に除外基準から削除)

 

 

I&C  

 Intervention

心房細動を洞調律に戻す目的の高周波アブレーション

(クライオアブレーションや超音波、レーザーによるアブレーションは施工されず)

アブレーション前に十分な抗凝固療法を行い、術前24時間以内に経食道心エコーにて左房内血栓がないことを確認。血栓が確認された場合、アブレーションは延期となり、延期後のエコーでも血栓が残存している場合にはアブレーションは中止。その場合もドロップアウト扱いではなく、解析に組み込まれた。

アブレーション後、すべての患者は少なくとも6ヶ月ワーファリンを内服した

 Comparison

内服加療(トライアル時の心房細動診療ガイドラインに沿って、なるべく洞調律を維持することが推奨された)

レートコントロール患者の目標心拍数:

安静時60-80bpm   中程度の労作時90-115bpm

 

Outcome

Primary end point

全死亡と心不全増悪による予期せぬ入院の複合エンドポイント

Secondary end point

Major

全死亡

心不全増悪による予期せぬ入院

心血管イベントによる死亡

脳血管疾患

心血管疾患による予期せぬ入院

あらゆる原因による入院

 

A②その試験は設定された課題に答えるための研究方法がとられているか? 

オープンラベルの多施設RCT

A③ 患者はそれぞれの治療群にどのように割り付けられたか?

コンピュータ化された中央割り付け。

心房細動のタイプ(発作性か永続性か)、埋め込み型デバイスのタイプ(ICDかCRT-Dか)およびICDの適応で層別化されている。

A④研究対象者、現場担当者、研究解析者は目隠しされている? 

研究デザインから、患者および現場担当者のブラインドは不可能。

解析者はブラインドされていると記載あり。

A⑤研究にエントリーした研究者が適切に評価されたか?  

解析はmodified intention-to-treatで行われた。

死亡と試験期間内の脱落者は解析から除外された。

 

A⑥研究対象となった介入以外は両方のグループで同じような治療がされていたか?  

ジギタリスの使用がアブレーション群18%に対して薬物治療群で31%(P=0.003)。

それ以外のACE阻害薬またはARB、ベータ遮断薬、利尿薬(スピロノラクトン含む)、抗不整脈薬、アミオダロンに関しては両群で優位な差はない。

 

 

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ランダム化時点での両群間の違い

 

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ランダム化の時点でもジギタリスの使用率については有意差あり(20% vs. 30%, P-0.020)

ランダム化時点での糖尿病(28% vs. 37%, P=0.053) 、心不全の原因(42% vs. 51% , P=0.051) はギリギリ有意差無いが、primary end pointを解析された患者のベースラインではそれぞれ有意差がある(それぞれ24% vs. 36%, P=0.010、40% vs. 52%, P=0.022)

しかし、著者は

Despite the fact, these imbalances did not affect the primary or secondary end points in CASTLE-AF.

と言っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

A⑦その研究のための対象患者数は偶然の影響を小さくとどめるのに十分な数か?

hazard ratioを0.67、powerを80%、片側alpha levelを0.025として、10-15%がドロップアウトすると仮定し、トータル420人の患者が必要と計算された。

しかし思ったように患者が集まらず、最終的なイベントは195必要とされていたが、試験期間を延長しても133しか集まらず、alpha levelとpowerを調整して2016年12月まで延長されそこで打切りとなった。

 

B結果は何か?  
B⑧a 結果はどのように示されたか? b 有意差はあるか? 

Primary end pointにおける両群間のhazard ratioは0.62(95%CI 0.43-0.87)と、有意差を持ってAblation群に有利な結果であった。生存曲線におけるlog-rankでもCox回帰分析でも有意差あり(Cox回帰では多変量解析は行なっていない)。

Intention-to-treat analysisでもper-protocol analysisでもAblation群の方が優位に成績は良かった。

 

Secondary analysisに関しては探索的なもので、多変量解析は行われていない。table S6にあるように、全死亡、心不全増悪による予期せぬ入院、心血管イベントによる死亡、心血管イベントによる予期せぬ入院に関しては有意差を持ってAblation群の方が成績は良かった。

 

その他の結果として、Ablation群では永続性心房細動患者の左室駆出率が明らかに改善した。また、埋め込み型デバイスから検出された心房細動負荷はAblation群で明らかに低かった。

 

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c 副作用は?

Ablation群で3人に心嚢液貯留を認め、1人は心嚢穿刺を必要とした。2人が穿刺部からの出血、1人が仮性動脈瘤により輸血を必要とした。フォローアップ中に、肺静脈狭窄が1人で認められた。

 

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C臨床にこの結果はどのように応用できるか?

長期間のフォローアップにおいて全死亡を減らした、という結果をDiscussionでは最も強調していた。しかし、Primary outcomeは全死亡と心不全増悪による入院であり、しかも予定していた患者数に到達していないことから、P値としては有意差が出ているが検出力は十分でないと考えられる。また、Discussion中でも述べられているが、デザインの問題で患者および現場担当者のブラインドが不可能であり、「心不全増悪による入院」というアウトカムの決定にバイアスがかかっている可能性が大いにある。

しかし、intention-to-treat解析でもper-protocol解析でもas-treated解析でもAblation群に有利な結果が出ており、今後EFの低下した心房細動患者では循環器への積極的な紹介を考慮する根拠にはなると考える。