尿路結石に対する タムスロシンの効果 RCT
Distal Ureteric Stones and Tamsulosin: A Double-Blind, Placebo-Controlled, Randomized, Multicenter Trial
オーストラリアのクイーンズタウンにある5つの救急外来(4つの三次救急病院と、1つの地域病院)で実施
- PICO
P
Inclusion
尿管疝痛の症状を有し、腎〜尿管〜膀胱のCT撮影で遠位尿管に結石を認める18歳以上の患者
Exclusion
38℃以上の発熱、eGFR 60mL/分未満、結石のサイズが10mmより大きい、単一腎、移植腎、尿管狭窄の既往、使用薬剤に既知のアレルギーあり、CCBあるいはαブロッカー内服中、低血圧(収縮期血圧100mmHg未満)、妊娠中あるいは妊娠計画中
I タムスロシン0.4mg 1日1回
C プラセボ
どちらも28日間あるいは排石が確認されるまで内服
O
○Primary outcome
28日後排石の有無と、排石までの時間(生存分析)
・28日後のCTで排石の有無を確認
・排石までの時間は、結石通過の自己申告、あるいは疼痛が48時間以上消失した日の初日(CT再検で結石の消失を確認)
○Secondary outcomes
・予定外の救急外来受診または入院
・鎮痛薬の使用量
・口頭での疼痛スケールスコア(0から10まで)
・泌尿器的な介入の必要性
・感染症を含む合併症(血液培養または尿培養が陽性)
・腎障害(eGFR 20mL/分以上の低下)
・休職日数
・使用薬剤による副作用
- ランダム割付されているか?ランダム割付の方法は?
コンピューターを用いて、病院と医師のサイズ(5mm未満の「小」と5-10mmの「大」に分ける)で層別化されたブロック法でランダム割付された
- ベースラインは同等か?
Table 1.参照。本文中に明らかな記載はないが、大きな差はなさそう。プラセボ群の方がやや男性が多い?
- 研究対象となった介入以外は両方のグループで同じような治療がされていたか?
鎮痛は診療医の裁量に任されていたが、インドメタシン25mgから50mgを1日3回およびオキシコドン5mgから10mgを1日3回、必要に応じて使用することが推奨された。
- 研究対象者、現場担当者、研究解析者は目隠しされている?
Investigators, the treating physician, and patients were blinded to the allocation for the duration of the study and data analysis.
→Triple blind
- ITT解析か?
Primary analyses were performed following the intention-to-treat principle.
- その研究のための対象患者数は偶然の影響を小さくとどめるのに十分な数か?
5-10mmの結石の排石率を改善するのが主な目的。参考にするデータが少なく正確な予想は困難だが、αlevelを0.05、パワーを0.8として、排石率を5%から25%に改善するとしたら各群49人の患者が必要と判断し、結石のサイズが5-10mmの患者が100人集まった時点で患者収集を終了することにした。
→結果的に5-10mmの患者はタムスロシン群50人、プラセボ群53人であり、数は足りている。5mm未満の患者を含めると合計393人がランダム割付を受け、316人がPrimary outcomeに関する解析を受けた。
- 結果は?
- 結果に有意差はあるか? NNTは?
CTフォローアップを受け、排石を確認されたのは
・タムスロシン群 140/161(87.0%)
・プラセボ群 127/155(81.9%)
→有意差なし difference of 5.0% (95% CI –3.0% to 13.0%; P=0.22)
大きな石に限った解析では
・タムスロシン群 30/36(83.3%)
・プラセボ群 25/41(61.0%)
→有意差あり difference between groups was 22.4% (95% CI 3.1% to 41.6%; P=0.03)
NNTは4.5人
排石までの期間の中央値は
タムスロシン群 7日(95%信頼区間 5-10日)
→log-rank試験でP=0.10と、両群間で有意差はなし
→Secondary outcomesはどの項目も有意差なし
eGFRの低下に関しては、何故か本文中に記載なし?
- 副作用は?
→両群間で有意差がある項目はなし。
- 臨床にこの結果はどのように応用できるか?
実はタムスロシンは、日本では尿管結石に対する保険適応がない(前立腺肥大症の排尿障害に対してのみ)。よって、女性には使えない。そして、日本では添付文書上、最大0.2mg/日までしか認められていない。なので、この結果が適応できるかどうかも不明。やっぱり5mmを超えた尿管結石は泌尿器科に紹介すべきであると思われる。
ただ、例えば入院中のADLが悪い高齢男性が尿管結石になったとき、血圧などが問題無かったら排石を期待してタムスロシンを処方してみてもいいかもしれない。(もちろん退院後に泌尿器科に紹介する前提で)