コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

JPCA 学術大会 2023 医科歯科連携 教育セミナー

活動報告 JAPEP JPCA学術大会 JAPEPからの提言 活動報告

 

 

企画責任者:森川 暢(市立奈良病院 総合診療科)

座長:松本 真一(悠翔会在宅クリニック葛飾

橋本 忠幸(大阪医科薬科大学

 

演者:

松本 朋弘(練馬光が丘病院)
宮上 泰樹(順天堂大学医学部総合診療科)
戸原 玄(東京医科歯科大学摂食嚥下リハビリテーション学分野)
今田 良子(東京医科歯科大学摂食嚥下リハビリテーション学分野)

福添 恵寿(川西市総合医療センター 診療看護師)

 

私が代表を務める、Japan Aspiration pneumonia inter Professional team Educational Program(JAPEP)では、今まで誤嚥性肺炎に関する多職種連携のプログラムを実施していました。この度、新しいメンバーとして、歯科医の今田先生と看護師の福添さんに、メンバーに入っていただきました。今回は、新しいメンバーも加えて医科歯科連携をテーマに、日本プライマリ・ケア連合学会学術大会2023@愛知において、教育講演を行いました。その内容をダイジェストでお伝えします。

 

 

*JAPEPは「2019年度GSK医学教育助成」による事業です。これは、医学関係学会/医会が独立して企画・運営する医学教育事業を助成する事業であり、日本プライマリ・ケア連合学会の正副理事長会議の承認を得て実施されています。

 

今田先生・宮上先生コラボ

前回のセッションで取り上げた今田先生と宮上先生の「夢のコラボ」をテーマに教育講演をしていただきました。歯を喪失しているのに義歯を使用しないことは上昇と関連があるとされています。義歯は噛む力が弱くなるため、健康歯と口腔機能を保つことが重要です。さらに口腔環境の悪化は、肺炎の発症のみならず、フレイルの悪化、認知機能低下との関連があるとされています。このように重要な口腔ケアは重要で、高齢者ほど、う歯が増加し、歯科受診が重要ですが、75歳を境に歯科受診がむしろ減少することが重要な課題となっています。

要介護者の大半は歯科コンサルトが必要にも関わらず、実際に歯科受診になるのは3割弱となるというデータもあり、高齢者の歯科受診を行うことが重要となります。

 

そのためにも訪問歯科も利用しつつ高齢者を歯科受診につなげることが重要となります。さらに抜歯に関する全身状態の対診などくらいが医科と連携する機会がないということも課題となります。また、歯科介入のエビデンスが不足しているということも課題です。よって、今田先生と宮上先生の夢のコラボである臨床試験を開始しました。江東高齢者医療センターに入院した誤嚥性肺炎患者に対して週に1回、今田先生が口腔ケアをしてくださった結果、1か月以内の誤嚥性肺炎の再発率が76.1%→45.9%まで減少しました。この臨床試験でも使用したのがOHAT(Oral Health Assessment Tool)です。使い方としては明らかに病的所見なら歯科依頼ですが、義歯不良、口腔不衛生、齲歯・残存歯も、歯科依頼を行うことがポイントになります。

*OHAT 赤文字のところが1つでもあれば、歯科介入をする。



では口腔ケアは実際にどのようにすればよいでしょうか?ポイントは、以下のとおりです。

口臭が強ければ速やかに口腔ケア徹底をすることを心がけること

痰があれば、痰を取る

乾燥痰はそのままとらず、保湿剤でふやかしてからとる(特にジェル状がお薦め)

舌苔があれば保湿剤塗布後、柔らかい部分歯ブラシやスポンジブラシを使用し粘膜を傷つけないように除去する。(こちらも乾燥は天敵)。

就寝時などは特に乾燥しやすいので注意。

気付いた時に、湿潤にする(口腔ケア、飲水、その他)

 

また、具体的な手順も以下のとおりです。

  • 口腔内咽頭内に貯留した唾液や痰を吸引
  • 乾燥した口腔内痂皮は保湿剤で湿潤
  • 歯があれば歯ブラシでプラーク除去
  • スポンジブラシ、ガーゼ、ワンタフトブラシなどで痂皮を除去

 

他のポイントとしては、義歯は放置せず管理をすること、要介護高齢者では、普段口腔内をあまり動かさない方は食事の時急には動かせないため準備をしてから口を動かすようにする、ということが注意点になります。

最後に、医科歯科連携を通じて、医師と歯科がお互いの仕事を知ることが重要であると認識されました。今田先生のファンが江東高齢者医療センターで増えたというのも印象的でした。

コラボレーションにより医療の質が改善し、さらに研究にもつながるというのは素晴らしいことだと感じました。

 

福添さん 講演

看護師は口腔ケアや誤嚥性肺炎診療で中心的な役割を果たしますが、実際は課題が多いようです。現実的に看護師の人数が足りないないという問題があり、病院によっては13:1看護で急性期病床を回すこともありえるため、口腔ケアまで手が回らないということが現実です。(7:1看護の急性期病棟であっても非常に忙しい状況では同様に手が回らないことが想定されます。)また、特に夜勤では看護師の数も少なく、さらに口腔ケアのみならず、認知症管理、褥瘡管理、手術のオペ出しやオペ迎え、緊急入院への対応など看護師の業務は多岐におよび、さらにデスクワークもあります。現実的な問題としては、看護師が行う口腔ケアにたいして加算がつくことや病院が充分な時間や研修を確保することが重要となると考えられます。また上記のような看護師の多種多様な分野とどのようにバランスを取るのかが重要になります。看護師は良くも悪くも横に倣えというところがあるので、看護師全体が口腔ケアに興味を持ち、行うように一歩を踏み出す取り組みが重要になるかもしれません。

 

松本先生講演

医師と歯科のダブルボードの立場でご講演をいただきました。問題点として急性期病院の80%は歯科部門を持たないということが挙げられました。宮上先生のご講演と同様の課題として、かかりつけ歯科を持つことが重要であり、急性期病院と診療所などを循環するPatient journeyを意識して、切れ目のない医科歯科連携を提供することが重要です。そのためにも、医科歯科連携の第一歩として、患者さんがもう一度、あるいは初めてかかりつけの歯科医を持つことが重要になります。特に高齢者ほど、かかりつけ歯科を持つことが重要です。医科歯科連携を勧めるためのステップは以下の3つに大別されます。

第1ステップ: 急性期病院を患者さんの歯科医療との出会いの場として確立する。

 第2ステップ: 在宅・介護現場での歯科介入をシステム化する。

第3ステップ: 歯科通院から訪問歯科診療まで、切れ目なく(亡くなるまで)患者さんに寄り添える歯科医療の確立(Dental Extensivist Model)

この一環として、歯科のない急性期病院における,“看護師が“かかりつけ歯科医への橋渡しモデルが紹介されました。



これは入院した患者を全例、看護師がOHATでスクリーニングを行い、OHATで基準を満たせば、院外の訪問歯科に介入を依頼するというシステムです。さらに訪問歯科は退院後も関わり続けることで、かかりつけ歯科を再構築するというシステムでもあります。実際に、入院中に訪問歯科が介入したうち43.8%は退院後も歯科が介入を継続することが可能になりました。

また練馬光が丘病院では総合内科チームに歯科が所属し、合同回診を行ったり、早期の歯科介入を行い、さらに退院後も訪問歯科と連携するという先進的な取り組みも始まっているようです。

 

戸原先生からのビデオメッセージ

戸原先生が歯科になってすぐは嚥下のことは実はほとんどご存知なかったようです。しかし、訪問診療を戸原先生がされるようになってから、実は嚥下障害の患者さんが非常に多いことに気づかれたようです。また口のみならず全身を診ることで嚥下障害の患者さんに対応することで改善する例を多数経験し、学会発表でも認められることで、嚥下障害に携わることの重要性に気づかれたようです。もともと、実家の歯科医院を継ぐことを考えておられた戸原先生ですが、これらの活動を通じて歯科医として嚥下障害にかかわることがライフワークとなられたようです。そして、嚥下内視鏡の普及、後進の育成、嚥下障害マップの作成、広報活動など多種多様な活動を通じて嚥下障害の診療に携わってこられました。戸原先生から我々の医科歯科連携の取り組みについて応援をいただき、本当に嬉しかったです。

*なお、戸原先生をはじめて東京で働いていた病院に講演にお招きしたときに、2人で錦糸町に飲みに行ったのは良い思い出です。

 

まとめ

JAPEPとして我々が提言したいことは、急性期病院や在宅医療など幅広い領域での医科歯科連携の推進、広い意味での歯科を中心とした多職種連携の構築、そして将来的には医科歯科連携のエビデンスの構築を目指し、急性期および在宅医療など幅広い領域で医科歯科連携に加算がつくような仕組みの構築を目指すことです。JAPEPの取り組みに賛同いただける多職種の皆様は、ぜひ、一緒に活動をしていただければ幸いです。

japep.jp