献本御礼
長野先生からいただきました!
臨床推論の直感的診断のエラーを防ぐための戦略であるPivot and Cluster Strategyの実践本であり若手医師の診断力を伸ばす本です。
臨床推論を実践するためには古典的には主訴別の分析的な方法が用いられています。
例えば、胸痛の鑑別として、心筋梗塞、肺塞栓、大動脈解離、気胸を考えるなどの方法になります。
この方法は経験が乏しい初心者でも実践が可能です。
臨床の経験を積むと、これらの疾患の経験を積むことになります。
よって、この胸痛は心筋梗塞らしいという直感的診断が可能になります。
ただし、直感的診断には落とし穴があるというのは、これが本書でいうミミッカーです。
つまり、心筋梗塞にぱっとみ見えるが、実は心筋梗塞ではないという状態がミミッカーになります。
心筋梗塞だと思って、ヘパリンを使用したら大動脈解離だったというのは典型的なミミッカーになります。
特に、ある程度経験を積んだ、後期研修医レベルではこの落とし穴にハマりがちです。
あるいは、リウマチ性多発筋痛症と診断し、治療をしてみたら、悪性腫瘍や感染し心内膜炎だったということが例に上がります。
これらを防ぐための戦略が、Pivot and Cluster Strategyで、心筋梗塞らしいと直感的に診断した場合に、大動脈解離のみならず、たこつぼ型心筋症、冠攣縮性狭心症、急性死筋炎、特発性冠動脈解離などのCluster(鑑別疾患)を挙げることをルーチン化して、ミスを防ぐという戦略です。
この戦略は関節リウマチやリウマチ性多発筋痛症などの慢性疾患でも重要となりますし、後期研修医からスタッフレベルになるために重要な考え方です。
本書はこのようなPivot and Cluster Strategyを実践するための入門書としてお勧めできます。
エビデンスに基づいた具体的な数字のみならず、実臨床での落とし穴についても言及されています。
初期研修医から後期研修医で診断能力をさらに伸ばしたいと考えている総合診療医や内科の若手医師、臨床推論を勉強し直したい内科医など幅広い読者層がターゲットかと思います。
私も総合内科としては中堅どころですが、本書を読みながら知識を整理することができて、非常に有意義でした。
是非、御覧ください。