コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

ジェネラリストのための内科診断キーフレーズ

昔からの友人の長野先生に献本いただきました。

一緒に、関西若手医師フェデレーションという勉強会をしていました。

当時から、爽やかで賢くて、素晴らしい後輩でした。

その後、僕が研修した丸太町病院でスタッフもされ、臨床推論に磨きもかけ、研究にも力を入れ、遠くの人になってしまいました。

そんな長野先生の単著

 

いや、本当に素晴らしいですね。

以下、目次ですが、総論もいいですね。

プロブレムリストを網羅して、さらに整理する手法が簡潔に説明されています。

また、以下の各論の項目が、本当に臨床では重要な項目ばかり。

 

 

第1章 総論 診断におけるキーフレーズとは
第2章 全身
No.1 初期にfocus がわかりにくい発熱をきたす感染症
No.2 CRP 上昇に乏しい発熱
No.3 脾機能低下患者の発熱
No.4 環境要因の少ない低体温症
No.5 食思不振を伴わない体重減少
No.6 徐脈を伴うショック
No.7 アルコール常用者のショック
No.8 血圧低下のない乳酸アシドーシス
No.9 肝機能低下のない高アンモニア血症
No.10 血糖降下薬の関与しない低血糖
No.11 脈拍の上昇に乏しい起立性低血圧
No.12 遅発性アナフィラキシー(delayed anaphylaxis)

第3章 神経
No.13 CT 正常のthunderclap headache
No.14 アルコール常用者の意識障害
No.15 高齢発症の頭痛
No.16 変動する/繰り返す意識障害
No.17 原因不明の脳梗塞
No.18 Polyneuropathy(多発神経炎)
No.19 感覚性運動失調(sensory ataxia)
No.20 両側性顔面神経麻痺
No.21 反復性めまい

第4章 頭頸部
No.22 急性発症の開口障害
No.23 痛みを伴う単眼視力低下
No.24 両側の急性視力障害
No.25 耳鳴
No.26 巨舌
No.27 持続性/難治性吃逆
No.28 片側性眼瞼下垂

第5章 胸部
No.29 II型呼吸不全
No.30 治らない肺炎(nonresolving pneumonia)
No.31 高拍出性心不全(high output heart failure)
No.32 Platypnea orthodeoxia syndrome
No.33 黒色胸水
No.34 家族歴を認める気胸

第6章 腹部
No.35 重篤感を伴う急性下痢
No.36 慢性下痢
No.37 全大腸炎(pancolitis)
No.38 回腸末端炎,回盲部炎
No.39 HBV,HCV 感染を認めない肝硬変
No.40 胃切除後の合併症
No.41 無石性胆囊炎
No.42 巨大脾腫

 

総合内科の臨床をずっと、やっていると、これらの特異的なキーフレーズを捕まえることで、診断の精度と速度が一気に上がることが実感できます。

通常、これらのキーフレーズは臨床を長年やっていることで、しか身につけることが出来なかったです。

症候学も主訴別が基本ですが、主訴別症候学のみでは、キーフレーズにはたどりつけないことも多く、経験と知識がものを言います。

 

しかし、なんとこの本はその総合内科医が経験と知識を積んだうえでたどり着ける領域に、ショートカットさせてくれるありがたい本です。

キーフレーズの鑑別疾患の妥当性もさることながら、深め方も丸太町病院のスタイルで論文をベースに緻密に記述されていて、素晴らしいです。

 

臨床推論を上達させたい、研修医や初期研修医の先生、総合内科的な臨床推論を学び直したい、すべての先生にお勧めです。