6月から週1回臨床推論カンファレンスを開始しました!
嚥下困難を主訴にきた中年男性についての臨床推論カンファレンスでした。
嚥下の5期モデルを解剖学的にざっくり考えると以下のようになります。
〇認知
〇舌
〇口腔
〇咽頭
〇食道
嚥下困難ではどこの障害であるかを意識します。
さらに、咽頭と食道は以下のように分類します。
①咽頭
①-A 機能的障害(神経筋疾患)
②- B 機械的障害
咽頭の問題では、 嚥下を始める時点で or 嚥下直後に症状が出ることが多いです。
機能的な咽頭の問題であれば、球麻痺や偽性球麻痺、反回神経麻痺などを伴うことが多いです。つまり嗄声を伴うことが多く重要な随伴症状になります。当然、脱力や痺れ複視などの神経学的随伴症状を伴うことが多いです。
咽頭の解剖学的問題では悪性腫瘍を念頭に、タバコなどのリスクを聴取しつつリンパ節腫脹の有無を確認します。
②食道
②-A 機能的障害(食道運動障害)
・アカラシア
・び漫性食道痙攣(嚥下時の絞り出されるような痛みを伴なう)
・強皮症(レイノーや四肢硬化、毛細血管拡張を伴う)
・好酸球性食道炎(多数のリング状狭窄あり)
②- B 機械的障害
●閉塞など
・異物
・悪性腫瘍
・外からの圧排(縦隔腫瘍、大動脈etc)
・Plummer-Vinson症候群(舌炎、青色強膜、結膜蒼白)
・消化性潰瘍による食道狭窄
・憩室/索状物/粘膜襞
●粘膜障害(原則痛みを伴うことが多い)
・放射線
・急性食道壊死
食道の問題では嚥下直後ではなく、通常嚥下運動の後15秒以内に症状が出ることが多いとされます。
飲み込んだ食物がのどや胸につかえる感じという表現になることが多いです。
解剖学的な問題は 流動物の嚥下は大丈夫だけど、固形物の嚥下障害のみを認める場合に考える。
一方で、冷水が飲み込みにくいけど固形物は大丈夫というような逆説的な症状があればアカラシアなども考えます。
食道炎などでは嚥下時痛を伴うことも多いので鑑別に有用です。
基本的には上部消化管内視鏡を行うことが診断的になります。
〇本症例では
本症例では耳鼻科に何度か受診しても原因が不明と言う病歴がありました。
また呼吸困難感も伴うという病歴もあり神経筋疾患も念頭に置きましたが、神経筋疾患を疑う随伴症状も乏しい状態でした。
舌、口腔の視覚的問題も耳鼻科受診歴もあり考えにくく、先行期の症状もなさそうであり、食道の問題と考えました。
嚥下時痛は乏しいものの、上部消化管内視鏡は必須と考えました。
労作時呼吸困難があることからは肺、心臓、貧血の問題も考えますが一元的に説明することは難しそうな印象でした。
倦怠感もあるので副腎不全も鑑別に挙げました。
あとは強皮症による食道機能不全なども鑑別に挙がるかと考えました。
心因性ではないかという鑑別も出ましたが、そのトリガーとなるような心理社会的要因が皆無だったので、その診断は慎重にしたほうがよいと考えました。
結果的には高Ca血症と貧血、蛋白アルブミン解離を認め、多発性骨髄腫±アミロイドーシスという診断でした。
診断は非常に難しく病歴と身体診察からは予測が困難でしたが非常に勉強になりました。
アミロイドーシスの食道病変による嚥下困難と考えました。
実際に、多発性骨髄腫からの light chain amyloidosisによって巨舌をきたし嚥下困難をきたした症例も報告されています。
ということで、とても勉強になった症例でした。
これからも臨床推論カンファレンスを継続していく予定です!!
興味があれば、見学を!!
〇臨床推論を勉強するなら以下の本がお勧め!