コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

亜急性甲状腺炎 診断と治療

亜急性甲状腺炎について簡単にまとめてみました。

 

亜急性甲状腺炎の日本の診断基準は以下。

 

a) 臨床所見 有痛性甲状腺

b) 検査所見

1. CRPまたは赤沈高値

2.遊離T4高値、TSH低値(0.1μU/ml以下)

3.甲状腺超音波検査で疼痛部に一致した低エコー域

 

1) 亜急性甲状腺炎 a)およびb)の全てを有するもの

2) 亜急性甲状腺炎の疑い a)とb)の1および2

 

除外規定 橋本病の急性増悪、嚢胞への出血、急性化膿性甲状腺炎、未分化癌

【付記】

1. 上気道感染症状の前駆症状をしばしば伴い、高熱をみることも稀でない。

2. 甲状腺の疼痛はしばしば反対側にも移動する。

3. 抗甲状腺自己抗体は高感度法で測定すると未治療時から陽性になることもある。 4. 細胞診で多核巨細胞を認めるが、腫瘍細胞や橋本病に特異的な所見を認めない。 5. 急性期は放射性ヨード(またはテクネシウム)甲状腺摂取率の低下を認める。

 

診断のポイントは甲状腺機能亢進症に加えて、甲状腺の圧痛と炎症所見を認めるということです。

バセドウ病や無痛性甲状腺炎にはない特徴ですね。

ただし、細菌性甲状腺炎では同様に甲状腺圧痛や炎症所見を認める点には注意が必要です。

 

https://www.aafp.org/afp/2014/0915/p389.html

実際には除外診断が必要ですが、下記のフローチャートが分かりやすいです。

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20200102223339p:plain

甲状腺の圧痛があっても、外傷や放射線、細菌性甲状腺炎、甲状腺出血を除外する必要があります。

やはり、病歴とエコー所見が鑑別に有用です。

 

なお、亜急性甲状腺炎のエコーは以下。

http://thyrosite.com/thyroid/1800/index

低エコー領域を認め、血流も低下しているのが特徴的な所見。

Image result for subacute thyroiditis  echo"

 

 

なお薬剤性の甲状腺機能亢進症も鑑別になるため薬剤歴が重要です。

アミオダロンは甲状腺機能低下症も甲状腺機能亢進症も引き起こす不思議な薬です。

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〇治療

治療の第1選択はNSIAIDS

Up To Dateにも以下の記載あり。

For pain relief, antiinflammatory therapy with either aspirin (2600 mg daily) or a nonsteroidal antiinflammatory drug (NSAID) (eg, naproxen [500 to 1000 mg daily in two divided doses] or ibuprofen [1200 to 3200 mg daily in three or four divided doses]) is usually effective.

⇒日本の容量で言えばナイキサン600mg分3とかですね。高齢者なら、ナイキサン300mg分3程度でしょうか。

ロキソニン3錠分3でも良いと思います。

 

NSAIDSで効果が乏しかったり、痛みが強ければプレドニンを使用します。

Up to DateではPSL40㎎/dayで開始し痛みが改善すれば、徐々に減量と記載。

If there is no improvement in pain in two or three days, the NSAID should be discontinued and prednisone (40 mg daily) initiated. Prednisone can be used as initial therapy for patients with severe pain.

Effective therapy should be continued until pain and tenderness have subsided and then gradually tapered

 

 

なおネパールのstudyではPSL20mg/day2週間⇒PSL10㎎2週間の合計4週間のレジュメで効果的であったと報告あり。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4606259/

The patients were administered prednisolone in a starting dose of 20 mg/day (10 mg twice daily) tapered over four weeks. The dose was 10 mg twice daily for 2 weeks and 10 mg once daily day for next 2 weeks.

 

確かに、40mg/dayは多い気もします。

このあたりの感覚は、痛風や偽痛風と似ていますね。

ただ、コルヒチンが使えない分、徐々に再発しないか確かめながら減量することになるでしょうかね。。