コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

中国史とつなげて学ぶ 日本全史



こちらも読みました。

jyoutoubyouinsougounaika.hatenablog.com

 

こちらの続編ということで楽しみにしていました。

前回の著書で印象的だったのは中国は思いの外、多元的国家だったということです。

・南北で多元的な社会が漢王朝の次に出た
・隋や唐は仏教やイスラーム圏なども巻き込んだ多元国家として成り立っていた
・特に仏教は多国籍文化をまとめるという効果があった
・唐宋変革でエネルギー革命がおき、人口が増えて、都市化が進んだ 多元化が豊かさの源だった

この認識のもとにこの本をよむととても理解が進みました。

 

第一章 日本史は中国の“コピー”から始まった 【古代~平安時代

・そもそも日本には国家がなかった。

・そこに中国に遅れて大和朝廷という統一国家が誕生

大化の改新白村江の戦いは日本の一大転機だった。

・隋の脅威に対抗するために中国文化の完全コピーで国を革新したのが大化の改新(これは外圧での改革という意味で明治維新と似ている)

・中国を完全に模倣することで中国に追いつこうとした時代

第二章 アジア・システムからの離脱 【平安時代鎌倉時代

平安時代になると遣唐使が中止となり、日本独自の文化が発展。

・しかしそれでも中国の影響下にあった。

・当時の日本の知識人は、当時の最先端の漢語に長けていたから知識人として最先端になれた。

遣唐使が中止になっても、中国との民間の貿易はあいかわらず盛んだった。

・温暖化が交流を盛んにしてモンゴル帝国が建国した。

・日本でも温暖化の影響もあり、鎌倉幕府ができた。

モンゴル帝国は東アジアの大経済圏を作り上げて、日本もその影響力にはいるようにしむけたのが、元寇だった。

・しかし、日本は東アジアの経済圏に入ることを拒否。

・この頃からも日本は独自路線に。

・中国の強い影響下にあった朝鮮半島とは全く別の歴史


第三章 「日本全体が入れ替わった」時代 【室町時代~戦国時代】

・寒冷化を迎えて鎌倉幕府が滅亡

・時を同じくして寒冷化の影響でモンゴル帝国も経済的基盤を失い瓦解。明の時代に

明朝はモンゴルと違い漢民族の単一国家で小さい政府、貨幣経済を否定

・貿易も朝貢貿易という形のみを認めていた。それに乗じたのが、足利義満

・日本の国王として、朝貢貿易し多大の利益を得た

・足利幕府も小さい幕府で守護大名の集団国家だった。

・長崎の平戸は民間の中国との貿易の拠点地だった。

・中国との民間貿易のさなかに、西洋列強も来日。

戦国大名も天下をとるという目的を持つものは少なかった。

・しかし例外の織田信長が登場。鉄砲や豊かな農耕地を背景に天下人へ。

徳川幕府の誕生へ。

・時を同じくして中国も清の時代に。

 

第四章 「国家」の成立 【江戸開府~元禄・享保時代】

江戸幕府は強力な統治システムだった。

・中国とも長崎の出島で貿易を続行していた。

・田沼の政治は商人の活性化という意味を持っていた。

・なお密かに薩摩藩琉球王国を制圧。しかし琉球は清との朝貢貿易は継続。日本に平定されたことを清にはひた隠しにしながら、朝貢貿易を継続。

琉球は江戸にも参勤交代をしていたが、あたかも海外から来たように異色な参勤交代をしていた。


第五章 「凝集」する日本 【享保時代~開国前夜】

第六章 開国と日中対立の始まり 【幕末~明治維新

・日本はもともと、天皇と将軍という2つのトップがいた。前者は象徴的な意味合いで、実務の汚れ仕事は後者

・しかし幕府のシステムは寒冷社会に適した小さいシステムであり、時代に合わなくなった。

・黒船開国で一層に幕府の権威が失墜した

国学によりナショナリズムが生まれ、天皇に帰るべきという思想が生まれた。

国学の台頭により中国蔑視の思想も生まれる

・結局、明治維新となり幕府は倒幕。

・日本は江戸幕府を通じて、江戸に文化も経済も一極化していた。

・また中国は官民はバラバラだったが、日本は官民が一つになっていた。

・それもあり、海外の脅威にさらされたときに、官民一体となり、凝集し、明治維新という大改革をなしとげた。

・しかし、清は海外からの侵略などの脅威があったが、官民バラバラだったため、一気に国が変わるということにはならなかった。

 

第七章 朝鮮半島をめぐる外交と戦争 【明治時代】

・明治時代は朝鮮半島を巡る戦いだった。

・清は日本と日清修好条規を交わして、お互いの邦土を侵さないと約束させたが、日本には効果がなかった。

宮古島島民遭難事件が起こったが、宮古島琉球王国であり清は日本ではなく自分の朝貢する国のひとつと認識。

・さらに台湾原住民は化外の民として一蹴

・ここから台湾出兵となる。

・さらに朝鮮半島の利害をめぐり、日本と清が対立。

日清戦争となるが、近代の徴兵制の軍隊を作った日本が圧勝。

下関条約となる。

・その後、中国はロシアと接近。南下したロシアと朝鮮の利害をめぐり、日露戦争となった。

・これらの勝利が日本の軍部の暴走に向かう。

・中国にも辛亥革命が起こり清が打倒された。

辛亥革命は日本の影響が大きかった。

・日本が西洋文明を取り入れるときにはひらがなでは限界があったため、漢字が明治時代に多様された。

憲法などの新しい漢字が生み出されて、それが西洋文明の摂取を加速させた

・中国人もその際に日本に留学し、漢字を用いて西洋文明を摂取した。

・中国は官民バラバラだったが、日本を見習って、統一国家を作り上げた。

・そこから、強力な統治国家の道へ。

 

第八章 アイデンティティの破滅へ 【大正時代~昭和時代初期】

・日本は日露戦争に勝ち、満州事変へ。

・中国で激しい抗日運動が起こる。

・南京に攻め入り、中国との全面戦争へ。

・今でも残る、反日感情の源泉に。

・中国は多元国家だったが、日本の影響でむしろ中央集権国家へ。

・現在の中国の国家の有り様は、むしろ異質で無理をしている。もともとは多元国家だったのが、無理をして中央集権国家になろうとしている。

・日本も天皇は象徴として、実務は摂政や将軍が汚れ仕事をするという二重システムだった。それを無理して天皇を集権させようとして失敗したのが戦前の日本

・戦後の日本はむしろ本来の形に回帰して天皇は象徴にもどった。

・現在の中国の国家体制は日本が種をまいた結果かもしれない。

 

 

○感想

非常に得るものが多い本でした。

日本の歴史は中国無くしてはありえないということがよくわかりました。

日本は基本的にコピー国家で、昔は中国をコピーして発展したということですね。

戦後の高度経済成長や明治維新もコピーした結果ですしね。

中国とも今までも政治上は緊密になった時代はありませんでしたが、ただ経済や貿易などの民間は不可分になっていたというのが歴史だったようです。

日中関係が悪化して抗日運動をしていても、お互いに貿易では依存する。

付かず離れずという関係ですね。

著者の岡本先生の記述は客観的でクールな文体なので、個人的には好きです。

日中関係の理解に役立つ、おすすめの一冊です。

 

 

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

中国史とつなげて学ぶ 日本全史 [ 岡本 隆司 ]
価格:1760円(税込、送料無料) (2022/4/23時点)