コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

Celiac artery compression syndrome(正中弓状靭帯圧迫症候群)について

謎の心窩部痛でCeliac artery 周辺がモヤモヤして変だなと当直医が感じ、造影CTを撮像したら放射線科からは上記病名の疑いと。知らなかったので調べてみた。

 

下記に詳しくまとめられている。画像も確かに典型的かも。

正中弓状靭帯圧迫症候群の画像診断

 

Celiac artery compression syndrome(CACS)とほぼ同意語のよう。

reviewがあったので調べてみた。

https://journals.viamedica.pl/acta_angiologica/article/viewFile/AA.2015.0005/28649

 

CACSは0.4%の頻度の稀な病気。ただ無症状な圧迫は2.4-8%に認められる。

30-50歳の若年者に多く、75-91%が女性とされている。

正中弓状靭帯圧の下方への肥大が原因。

呼気時に症状が出現する(訳注 正中弓状靭帯圧が横隔膜を介して下方に移動するから

腹部の跛行を起こす。

celiac arteryの神経叢の圧迫が病態

食後の上腹部痛、悪心、嘔吐、軽度の体重減少が特徴的な症状

まれに、下痢、胸焼け、腹部膨満、便秘、不整脈、失神などが起こる

 

腹腔動脈の解剖 下記から引用

http://www.ususus.sakura.ne.jp/053pancreas.html

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20170210205114p:plain

 

12胸椎と第1腰椎の間に位置している。

膵臓の上縁の15mm上から起始。

正中弓状靭帯は横隔膜の下部と融合している。

正中弓状靭帯が腹腔動脈に進展すると、神経叢を圧迫し痛みが出現し、最終的に腹腔動脈自体を圧迫する。

 

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20170210205929p:plain

 

 

 

●診断について

CACSの診断には以下の3つが必要

①CACSに特徴的な症状があること

胃潰瘍や癌など他の疾患が除外されていること

③腹腔動脈の狭窄が動脈硬化によるものでないと、エコーやCT、MRI,アンギオなどで確認されていること

現在のところ造影CTがgold standardである。

MRI,ドップラーエコーで血流低下することも有用。

これらは、呼気と吸気で行うとよい。

深い呼気で圧迫が最大になり、血流が落ちることが分かる。

ただ吸気では必ずしも血流の低下は見られない。

⇒ドプラーエコーで腹腔動脈を描出し、呼気でpeak systolic velocityが増大すればCACSを疑う!!

さらにドプラーエコーは動脈硬化による狭窄との鑑別にも有用。

さらにドプラーエコーは術後の評価にも有用とされている。

あるstudyによると術前に381cm/sだった平均peak systolic velocityが術後は235に低下したとされている。

 

 

○治療

治療は正中弓状靭帯を切開して、神経節を切除すること。 腹腔鏡でも回復でもよく、安全で効果的である。

手術による死亡は報告されておらず、85%で改善を認めた。

手術しても症状が改善しない場合は、血管内ステントによる血管内治療も考慮される。

ただ血管内治療をしても狭窄が再発して、何度も入れ替えをすることもあるとのこと。

基本的には、腹腔鏡 or 回復による正中弓状靭帯の切開が第1選択とのこと。

 

 

本症例では。。。

痛みは自然に改善したため、今回は手術はしない方向に。

今後症状を繰り返したら、腹腔鏡 or 回復で正中弓状靭帯切開をしたほうが良いかもしれない。

 

 

 

 

 
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