ICUにおける鎮静の中断について RCT
当院のICU出身のスーパーNPにジャーナルを読んでいただきました。
A この試験の結果は信頼できるか
①その試験は焦点が明確な課題設定がされているか
Patient:ICUに入室し、48時間以上人工呼吸管理を要したもので、鎮静とオピオイド使用
Exclusion;心肺停止後、外傷性頭部損傷後(after TBI)
Intervention:プロトコールにもとづき、鎮静を一日一回中断して管理した群(Interruption群)
Conparison:プロトコール化された鎮静管理で、1日1回の鎮静の中断を行わない群(Control 群)
Outcome:
Primary;抜管までの時間(抜管の成功は48時間)
Secondary;予定のデバイス抜去、身体拘束の使用、せん妄、ICUでの神経学的画像検査、気管切開、圧外傷、鎮静・鎮痛剤の総使用量、臓器機能不全、ICU・病院滞在期間、死亡
A②その試験は設定された課題に答えるための研究方法がとられているか?
・多施設、カナダと米国の16施設の内科・外科ICU
・無作為化比較試験
・盲検化は困難
A③ 患者はそれぞれの治療群にどのように割り付けられたか?
・自動化された電話登録システムで割付
・未開示の可変ブロックサイズで層別化
A④研究対象者、現場担当者、研究解析者は目隠しされている?
・Npne of the participants, study personnel, clinicians, or investigators analyzing data was masked to group assignment.
A⑤研究にエントリーした患者が適切に評価されたか?
・ITT解析
・Fig.1では、それぞれ4例と3例が同意取り消しにより、脱落したが同等
A⑥研究対象となった介入以外は両方のグループで同じような治療がされていたか?
・概ね同様
A⑦その研究のための対象患者数は偶然の影響を小さくとどめるのに十分な数か?
・7日目の抜管成功率をコントロール群で、2日間の減少とし、DIS群のHazard ratioは1.4と仮定した。
・それぞれ、205症例が必要と判断した。
・検出率は90%に設定し、αレベルは5%とした。
B結果は何か?
B⑧a 結果はどのように示されたか?
・抜管までの中央値は、両群共に7日だった
・Hazard ratio,1.08; 95%CI, 0.86-1.35; P=0.52
・年齢,BMI,APACHE II,入院経路等で補正しても同様の結果だった
・DIS群の方がMida(102 vs 82mg/day) /Fenta(1780 vs 1070µg/day)の量は増加した
・鎮静度は両群で同じ(SAS 3.28 vs 3.23)
・看護師の業務量はDIS群で増加した (VAS 4.22 vs 3.8 p=0.001)
・サブ解析では,外科と外傷患者では,DIS群の方が抜管までの期間は短かった(6 vs 13day 95%CI0.72-1.18)
B⑧c 副作用は?
・DISにより、統計学的に有意な有害事象の増加は認めていな
・非DIS群で、胃チューブと尿カテの事故抜去がDIS群でやや多い傾向にあった。
・気管挿管中の患者では、日本でのプラクティスの印象よりすべて多い?
Cその結果はあなたの現場で役に立つか?
●当院のICU出身のスーパーNPのコメント
・当院での鎮静は、Propがメインであり、Midaでの検討は参考にしづらい
・ただ、MidaとPropとDexを比較した研究(JAMA 2012;307:1151)もあり、それぞれの利点と欠点を踏まえて鎮静剤の選択はなされるべきかもしれない
・Midaは比較的長時間(発売当初は画期的なほど短時間だった)作用するので,鎮静が急に浅くなる事が少ないという欠点を利点にする事は可能
・Benzoでは、目標RASSの維持がはDEXなどには劣る
・これまでのトレンドとしては、DISを支持する研究が多数あり、Bundleでも推奨されているが、DISが重要なのではなく、適切な鎮痛・鎮静管理が重要だということが示された
・Kressらの研究や(N Engl J Med. 2000 May 18;342(20):1471-7. PMID:10816184),Girard らの研究(Lancet. 2008 Jan 12;371(9607):126-34.PMID: 18191684)などは,Ely先生らの研究グループが(多施設研究だが)出している研究が目立つ
・そもそも鎮静は必要なのか?Lancet. 2010 Feb 6;375(9713):475-80 PMID: 20116842
・今の話題は、Post intensive care syndrome(PICS)であり、以前のような28日死亡率の改善が主目的とされるべきではなく、長期予後を見据える事が必要
・ICUと一般病用の違いは、ICUという「箱」と「Intensivistの管理」と「ICUナース」+「Multidisciplinary team」
・オーストラリア等では、そもそも一般病棟でのMV管理はなされておらず、非常に危険だと認識されている,らしい
・Feasibilityを考慮すると、当院では、RASS−3程度の深鎮静が必要とならざるを得ないが、”多分”同じ患者さんを(ちゃんとした)ICUで管理すると長期予後やPICSを含めて合併症なども少ない(かもしれない)
●指導医のつぶやき。
比較的妥当性の高いRCT。
このstudyの結果からは鎮静薬の間欠的な中断は効果が乏しい??
では、一般的なエビデンスは?
Up to dateによると、過剰な鎮静は害であり少なくしたほうがよいが、その方法は未だに定まっていない。一般的なのは鎮静の中断。
古典的なRCTだが、2000年のNEJMで鎮静の中断の有効性が示された。
N Engl J Med. 2000;342(20):1471.
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/nejm200005183422002
1日1回鎮静を中断したほうが人工呼吸器の装着期間が短い
ICU入室期間も短い傾向。
2015年のメイヨー・クリニックから出たsystematic reviewでは6つのRCTを解析。プロトコールに従ったセデーションでは予後が良い傾向。
, protocolized sedation seems to decrease overall mortality (15%), ICU and hospital lengths of stay (1.73 and 3.55 days, respectively), and tracheostomy (31%) compared with usual care without protocolized sedation.
http://www.mayoclinicproceedings.org/article/S0025-6196(15)00189-5/pdf
では間欠的な鎮静の中断が良いのか?
2014年のコクランレビューでは今回のRCTも含めてmeta analysisを行っている。
中断郡のほうが、人工呼吸器の装着期間は短い傾向。ただその効果は限定的。
そして異質性も大きい。。つまりRCT毎のバラツキが大きい。
JSPTICのスライドでは今回のRCTは浅い鎮静なので、間欠的な中断の効果を示さなかったのかもと記載有り。
http://www.jseptic.com/journal/jreview_156.pdf
確かに、今回のRCTでは自己抜管などは比較的多い。出来るだけ浅い鎮静にしようとする努力なのかも。
この分野にはあまり明るくはないが。。
当院のような人手が少ない病院では、深い鎮静にならざるおえない。そういう環境では1日1回鎮静を中断するのは有用だろう。
でも、ICUがあって人手が充実しているところで浅い鎮静を行うのならば中断する必要は必ずしもない。。
自信はありませんが、そんなかんじでしょうか。