コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

低炭水化物ダイエットでは体重が減る?

Weight Loss with a Low-Carbohydrate, Mediterranean, or Low-Fat Diet

 

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa0708681

 

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  • PICO

Patient p.230, Eligibility and Study design

Inclusion criteria:40-65歳かつBMI>27 の患者 or 年齢にかかわらず2型糖尿病・冠動脈疾患の既往のある患者。

Exclusion criteria:妊娠中・授乳中・血中Cr>2・肝障害・胃腸疾患の存在・癌・他の食生活研究に参加中。

 

Intervention and Comparison p.230-231, Low-fat diet-Low carbohydrate diet

Low-carbohydrate:導入期にCarbohydrate 20g/日に制限し、宗教休暇以降体重を維持しつつ120g/日まで許容する。カロリー・タンパク・脂質に関しては制限しない。

Mediterranean(地中海式):男性<1800kcal・女性<1500kcal/日、野菜を多くとり、赤い肉の代わりに鶏肉・魚をとる。脂質をカロリーの35%までおさえる。

Low-fat:男性<1800kcal・女性<1500kcal/日、脂質をカロリーの30%に制限、コレステロールは300mg/日へ制限。

 

Outcome p.230-231

Primary outcome:体重

Secondary outcome:BMI・腹囲・血圧空腹時血糖・HbA1c・肝機能・T-cho・HDL・LDL・TG・空腹時血中Insulin・HOMA-IR

 

 

  • ランダム割付されているか?ランダム割付の方法は? P.230 Eligibility and Study Design

ランダム化の方法は触れられていないが、シミュレーションとあるのでコンピュータベースか。性別・年齢・BMI・糖尿病の既往・冠動脈疾患の既往・スタチンの使用で層別化されている。

 

  • ベースラインは同等か? P.233 Table1

おおむね同様だが、Insulin治療中・ホルモン補充療法中の人の数は有意差がありそう。

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  • 研究対象となった介入以外は両方のグループで同じような治療がされていたか?p.230 Methods・P.233 Table1

上記のようにInsulin治療中・ホルモン補充療法に関しては有意差あり。また、降圧薬や高脂血症治療薬の内容については触れられていないため、差があるかも。両群ともに介入の過程で小グループを形成して食事に関してセッションを行ったり、定期的なワークショップを施行するやり方は変わらず。

 

  • 研究対象者、現場担当者、研究解析者は目隠しされている?

Study designの問題から患者・現場担当者はblind不可能。解析者に関しては記述なし。

 

  • ITT解析か? P.232, Intention-to-treat analysis
  • その研究のための対象患者数は偶然の影響を小さくとどめるのに十分な数か?P.232

 2±10kgの変化量に関して、100人そろえれば検出力90%、Type 1 errorの確率が5%。三群とも100人は確保できている。

 

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  • 結果は?p.236 Fasting Plasma Glucose, HOMA-IR, and Glycated Hemoglobin,

p.236-237 Table2, p.238 figure2, p.239 figure3, p.240 figure4

体重に関しては5-6か月目での変化が一番大きく、その中でも低糖質は平均約-6~7kgとなっている。しかしその後ゆるやかに体重が上昇している。食物繊維摂取量・不飽和脂肪酸摂取量は地中海式で最も上昇し、LDL・糖尿病患者における空腹時血糖においても地中海式が最も低下している。なお、A1cは低脂肪で0.4±1.3%、地中海式で0.5±1.1%、低炭水化物で0.9±0.8%の減少となった。

 

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  • 臨床にこの結果はどのように応用できるか?
  • 低炭水化物食事で体重は減るだろうが、真のアウトカムにつながるかは不明。
  • 低炭水化物食は最初のほうは体重が減るが、地中海食事と低炭水化物食で最終的な最終的には低炭水化物食と変わらない。
  • 実臨床では、まずは総カロリーの制限を含めた指示が重要(そもそも、割付通りの食事を守ってもらうのが難しい。。)

 

溶血性貧血 レビュー

www.aafp.org

 

●最初に 

溶血は、急性または慢性の貧血、網状赤血球増加、黄疸として現れる。

診断は網状赤血球増加、非結合ビリルビンおよびLDHの増加、ハプトグロビンの減少、および末梢血塗抹検査所見が含まれる。

赤血球の破壊がが血管内または血管外に生じる。

溶血の病因は後天性か遺伝性に分類される。

溶血性貧血のコモンな原因は、自己免疫、微小血管障害、および感染症である。

免疫介在の溶血は、抗赤血球抗体によって惹起され、悪性腫瘍、自己免疫疾患、医薬品、輸血反応が原因となる。

微細血管性溶血性貧血(Microangiopathic hemolytic anemia)は、赤色細胞膜が血液中で損傷を受けることで、血管内溶血および 破砕赤血球を認める
マラリアバベシア症などの感染症赤血球に侵入しうる。
赤血球酵素、膜、ヘモグロビンの障害は遺伝性溶血性貧血の原因となる。

グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼの欠損は、赤血球膜の酸化的ストレスの原因となる。

遺伝性球状赤血球症は、球状細胞、家族歴、クームス試験陰性が特徴的である。

鎌状赤血球症およびサラセミアは、慢性溶血を特徴とする。

 

●血管内溶血

膜の破壊が溶血が高度であれば循環中に溶血が起こる。

 

●血管外溶血

高度ではなければ循環中にダメージを受けた赤血球脾臓でトラップされて溶血

⇒脾腫になる

 

 

溶血性貧血の診断フローチャート

 

①まずは溶血性貧血らしいかを吟味

間接ビリルビン上昇、貧血、網状赤血球増加、LDH増加、ハプトグロビン低下

 

②溶血性貧血らしい場合は分類を行う。

●末梢血目視

●直接クームス

 

この2点が極めて重要

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直接クームス陽性⇒自己免疫性溶血性貧血

破砕赤血球陽性⇒微細血管性溶血性貧血 →TTP、HUS、DIC、子癇、悪性高血圧、機械弁など

●破砕赤血球

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特徴的な形態⇒サラセミア、鎌状RBC

ほか、目視で芽球などWBCの異常もチェック

輸血後なら、輸血に関連した溶血も

 

サラセミアの標的赤血球

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発熱 →血液培養、血のスメア、バベシア

マラリアとバベシアが重要 旅行歴に注意。

clostridium perfringensの敗血症も溶血をきたすため注意が必要。腹腔内感染や人口流産など。α毒素の放出で電撃性の経過をたどる

 

 

 

 球状赤血球+家族歴⇒遺伝性球状赤血球

●球状赤血球

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免疫に関連した溶血性貧血を起こす薬剤(特に高容量ペニシリンに注意)

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G6PDの欠乏があると下記の要因で溶血が促進

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溶血性貧血の概要

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脾臓の偶発的腫瘤の精査は不要??

https://pubs.rsna.org/doi/pdf/10.1148/radiol.2017170293

 

https://www.jwatch.org/na46445/2018/04/04/incidental-splenic-mass

 

たまにCTとったら、偶発的に脾臓に腫瘤が見つかる人がいますよね。。

ジャーナルウォッチから。。

The Incidental Splenic Mass at CT: Does It Need Further Work-up? An Observational Study

 

ボストンの単施設の後ろ向き観察研究。

CTで脾臓に腫瘤が見つかった患者を3つのグループに分類。

 

①悪性腫瘍の病歴があるグループ

145人の患者に悪性腫瘍の病歴があった。これらの患者のうち49人(リンパ腫を有する13人および他の転移性がんを有する36人)において、それらの脾臓腫瘤は悪性であると考えられた。

ほとんどの転移を有する患者は、少なくとも2つの他の臓器の異常があった。

 

②症状がある患者

29人の患者は、全身性の症状または左上腹部痛のいずれかを有したが、悪性疾患の既往はなかった。

これらの患者のうち8人は最終的にリンパ腫と診断され、そのうち6人は他の部位のリンパ節腫脹を認めた。

 

③偶発的に見つかった患者

205人の患者(「偶発的」群)に悪性疾患の病歴はなく、全身症状もなく、上腹部痛も認めなかった。悪性腫瘍と診断されたのは2人(リンパ腫1例、卵巣癌1例)のみであり、いずれも悪性腫瘍を示唆する別の腹部CT所見を併せ持っていた。

フォローアップ時に拡大病変を有する2人の患者が脾摘出術を受け、いずれの場合もsclerosing angiomatoid nodular transformation(良性病変)であった。

 

●感想

あくまで観察研究だが、全く無症状で悪性腫瘍の既往歴もなく、腹部造影CTで脾臓の腫瘤以外の所見がないのであれば、精査すら不要かもしれない。

少なくともフォローアップで拡大傾向がないか、新たな症状やリンパ腫を示唆するような採血の異常がないかをフォローすれば充分かもしれない。

 

 

 

重症喘息への対応

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https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMra1608969

 

Difficult-to-treat asthma は高用量の吸入ステロイドや他のコントローラーを使用しても、コントロールが難しい喘息のこと。

重度の喘息は、Difficult-to-treat asthma のひとつ
高用量のICS+LABAに加えて、ロイコトリエン or テオフィリンを使用しても、コントロールが難しいか、全身性グルココルチコイドによる治療が必要な喘息

 

 喘息診療の流れ

まずはしっかりとLABA+ICSの吸入を行う。きちんと吸入手技を行うことが大切

 

・合併症の評価

副鼻腔炎があれば副鼻腔炎の治療を

タバコを吸っている場合はCOPDとの合併を疑う。

鬱や不安障害も合併しうる

 

生物学的製剤を使用する前にLAMAやテオフィリンなど安価な方法を考慮

 

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●炎症の機序

左がType2 inflammation

Th2細胞を介してIL4,IL5が活性化 

IL5は好酸球を活性化 ⇒(メポリズマブ(ヌーカラ)、ベンラリズマブ(ファセンラ)の経路)

IL4はB細胞、IgEを介してマスト細胞を活性化⇒オマリズマブ(ゾレア)の経路

 

右がnon type2 -inflammation

おもにヘルパーT細胞を介して、好中球が活性化する

アレルギー素因が少なく成人発症すし、air flow limitationが強く過敏性が強い喘息がある理由

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炎症の種類が好酸球優位 or 好中球優位で分類する

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●治療戦略

type2 inflammationかどうかで戦略を分類

type2 inflammationで吸入ステロイドをしっかり使用しても急性増悪を繰り返すなら、分子生物学的製剤を考慮

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●抗IgE

オマリズマブ(ゾレア)

アレルギー素因のある喘息。IgEが30IU per milliliter以上で、スキンテスト陽性 or 特定のアレルゲンのIgEが陽性

 

●抗IL-5

メポリズマブ(ヌーカラ)、ベンラリズマブ(ファセンラ)

血中の好酸球が300以上の症例でかつ急性増悪を繰り返す患者に適応

 

 

●新規喘息治療薬一覧

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重症喘息に対するベンラリズマブの効果

Predictors of enhanced response with benralizumab for patients with severe asthma: pooled analysis of the SIROCCO and CALIMA studies. - PubMed - NCBI

 

P 重症喘息でICS+LABAを使用している(必要に応じて全身ステロイドも)

I ベンラリズマブ30mg  4週間ごと、ベンラリズマブ30mg  8週間ごと

C プラセボ

O 年間の急性増悪の比率(ベースラインの好酸球数および年間の急性増悪の数毎に解析している)

double-blind, placebo-controlledのRCTであるSIROCCO (NCT01928771) and CALIMA (NCT01914757) の2つのpooled analysis

ITT解析をしている

 

ベースライン

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ベースラインは、ほぼ同等

 

 

結果

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年間の増悪率はベンラリズマブで良い傾向

 

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呼吸機能の改善もベンラリズマブで良い傾向

 

 

ベースラインの好酸球が高いほど、ベンラリズマブはより効果的である傾向

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さらに急性増悪を3回以上経験している郡でより、ベンラリズマブの効果が高い

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●感想

 ICS/LABAを使用していても、好酸球が高値で急性増悪を繰り返しているなら、ベンラリズマブもありかもしれない。

 ただ相当に高価であることが予想されるが。。

メポリズマブ の重症好酸球性喘息に対する効果

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https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1403290

 

P

12-82歳の喘息(臨床所見および呼吸機能から診断)

呼吸機能検査で特定の異常があり、吸入ステロイドなどの適切な治療をしているにも関わず、全身性ステロイドを使用するような喘息の急性増悪が数年内に2回以上あり、さらに血中の好酸球がスクリーニングで150以上orどこかで300以上という患者

I  メポリズマブ75mg 静注  or   メポリズマブ100mg 皮下注 

どちらも4週間ごとに32週間投与

C プラセボ

O 臨床的に優位な急性増悪の頻度

 

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●臨床デザイン

multicenter, randomized 、double-blind, double-dummy

 

ITT解析

各郡で180人いれば検出率90% →おおむね足りている

 

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ベースラインは同等

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●結果

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⇒急性増悪はで明らかに減少(静注も皮下注射も)

 

 

●副作用

⇒頭痛と鼻咽頭炎はメポリズマブで少し多いが重度な副作用はメポリズマブで多いわけではない

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●感想

好酸球を活性化させるIL-5に対する抗体。

ICS/LABAを十分使っているにも関わらず、喘息を繰り返しして、かつ末梢血好酸球が高値という限られた患者に関しては確かに考慮する価値があるかもしれない。

しかし。。 ヌーカラ皮下注100㎎が1V175,684円。。とても高価。使うべき患者は相当に選抜する必要があると思われる。

 

 

LDLのベースラインが高いほど心血管リスクは低下する傾向 JAMA

ベースラインのLDLが総死亡率、心血管死亡率に関連があるかを調べた試験

データベース(Cochrane、MEDLINE、EMBASE、TCTMD、ClinicalTrials.gov、major congress proceedings)でRCTを検索

スタチン、エゼチマブ、PCSK9阻害薬について検討

2人の研究者が独立して解析

 

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⇒結果的に34のRCTが解析された

 

●結果

強化療法郡で全死亡は少ない傾向

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全死亡率はLDLのベースラインが高いほど強化療法郡で低くなる傾向

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ベースラインのLDLが100mg/dl以上の郡でのみ強化療法郡で全死亡が減少する傾向

特にLDL≧160㎎/dlで全死亡は低下する傾向 RR0.72(0.62-0.84)

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心血管死亡率もLDLのベースラインが高いほど強化療法で低下する傾向

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全死亡と同様に、ベースラインのLDLが100mg/dl以上の郡でのみ強化療法郡で心血管死亡が減少する傾向

特にLDL≧160㎎/dlで全死亡は低下する傾向 RR0.65

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心筋梗塞はLDLのベースラインが高いほど強化療法で低下する傾向があるが、脳梗塞はその傾向は乏しい

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●感想

 確かにLDLのベースラインで、下げるかどうか、あるいはどれくらい下げるかを臨床でも決めているが、その根拠となりそうな文献。

 きれいに相関関係が出ているのが興味深い