コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

SGLT-2阻害薬とGLP1アゴニスト、DPPⅣ阻害薬の比較

https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/2678616?redirect=true

 

P:2型糖尿病

I:SGLT-2阻害薬、GLP-1アゴニスト、DPPⅣ阻害薬

C:プラセボ or 治療しない

O: 

priyary outcome:全原因死亡率

secondory outcome:心血管死亡、心不全(HF)事象、心筋梗塞(MI)、不安定狭心症、および脳卒中

safety endpoint:有害事象,低血糖

 

RCTのネットワークメタアナリシス

MEDLINE, Embase, Cochrane Library Central Register of Controlled Trials,
and published meta-analyses

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ベースラインは各郡で変わりなし

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●結果

全死亡率

For all-cause mortality,heterogeneity was 12% when analyzed by drug class and by
individual drug type. →異質性は低め

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SGLT2阻害薬:[HR], 0.80 (95% CrI, 0.71 to 0.89)

GLP-1 agonists,: HR, 0.88 (95% CrI, 0.81 to 0.94)

DPPⅣ阻害薬:HR, 1.02 (95% CrI, 0.94to 1.11)

⇒SGLT2阻害薬とGLP-1 agonistで全死亡率は低下する傾向だが、DPPⅣ阻害薬はプラセボと著変なし

 

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⇒心血管死亡も同様にSGLT2阻害薬とGLP-1 agonistで低下傾向

 

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心不全はSGLT-2阻害薬で低下傾向

 

 

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⇒SGLT-2阻害薬でAMIは少ない傾向

 

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⇒不安定狭心症脳梗塞を特に減らすわけではない

 

 

●副作用について

GLP-1 agonistsが離脱するような副作用がSGLT-2阻害薬(HR, 1.80 [95%CrI, 1.44 to 2.25])やDPPⅣ阻害薬(HR, 1.93 [95%CrI, 1.59 to 2.35])に比べて多い傾向あり。

 

 

●感想

メトホルミンの次の第2選択薬は何かという話題。

DPPⅣ阻害薬は心血管リスク減少効果は乏しい。

SGLT-2阻害薬の長期間投与による副作用などまだわからないことも多いが、心血管リスク低減作用はありそうで、心不全やAMIも減少させる傾向があるかも

GLP-1アゴニストは心血管死亡を軽減させる傾向がありそうだが、副作用は多い。皮下注射製剤しかないので実臨床でもやや使いにくい。。

 このネットワークメタアナリシスの結果だけ見ると、SGLT-2阻害薬が一歩リードしている印象。

 

アメリカのホスピタリストの病院別の働き方

とある会議で話題になった論文

少し見てみました。

 

Job characteristics, satisfaction, and burnout across hospitalist practice models. - PubMed - NCBI

アメリカのホスピタリストの現状調査

 

下記の図のようにデータを収集

 

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業務に占める臨床の割合は大学関連の病院では低くめで、逆に教育や管理業務、研究の比率が高くなる

非臨床の業務も大学病院で多い。

ナイトシフトも大学病院で少ない傾向

給与も大学病院で少ない傾向

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細かい違いはあるが全般的な仕事への満足度やバーンアウトの割合などはどのタイプの病院でも変わりはない

 

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下肢潰瘍を伴う下肢動脈閉塞におけるSkin perfusion pressure(SPP)について

下肢動脈閉塞の評価でSPPが使えると聞いたが、良く知らなかったので調べてみた。

 

SPPとは?

以下のページより引用

SPP: Skin Perfusion Pressure|循環器医療のお勉強

SPPはSkin Perfusion Pressureの略で、皮膚組織灌流圧を意味する。末梢血管領域の治療において、特に重症下肢虚血の重症度(血流動態)を評価する検査のこと。レーザードップラーにより、皮膚の微小循環を測定する。レーザー光が皮下組織に照射されると、微小循環内の血球や組織で反射し、その反射レーザー波を測定して皮膚灌流圧を数値化する。ABIと異なり、血行を調べたい部位で測定ができ、また、毛細血管の血流まで調べることができる。石灰化の影響も受けないため、糖尿病患者や透析患者にも監査が可能。製品にはKanekaのPAD4000がある。

で、実際のところどうなのか?

 

日本からの症例報告

The Effectiveness of Skin Perfusion Pressure Measurements during Endovascular Therapy in Determining the Endpoint in Critical Limb Ischemia

下肢動脈閉塞に伴い下肢潰瘍ができた症例

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上記のように潰瘍が形成

 

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血流不良でSPPは12㎜Hgのみ

 

 

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⇒ステント留置したがいまだに狭窄している動脈がある。しかしSPPが46㎜Hgまで回復したので追加のステントをせずに様子を見たら潰瘍は改善

⇒SPPはステントの治療効果判定に使える可能性あり。

 

 

 

 

SPPを評価した日本の研究 前向きの観察研究?

Skin Perfusion Pressure is a Useful Tool for Evaluating Outcome of Ischemic Foot Ulcers with Conservative Therapy

 

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SPPが40以上と 40未満でその後の下肢潰瘍の転帰を評価

 

 

ベースラインでは、SPP≧40mmHgのほうが若年の傾向

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内服薬は両郡で大きな差なし

 

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ロジスティック回帰分析を行うとSPP≧40mm Hgは独立した潰瘍における予後予測因子

オッズ比(14.2)

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SPP≧40mmHgは1か月後の予後を感度75%、特異度82.6%で予測

以下SPPのROCカーブ

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●感想

日本のローカルな検査と言う印象だが、意外に使えるのかもしれない。

下肢動脈閉塞を伴う下肢潰瘍の評価には、補助的に使ってみるのは、ありかもしれない。。

24時間血圧測定と心血管イベントとの関連

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http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1712231

 

成人 63,910 例を含む、スペインの全国的なコホート研究

24時間血圧測定を行い以下の4つに分類

持続性高血圧(診察室血圧,24 時間血圧ともに高値)

白衣高血圧(診察室血圧は高値,24 時間血圧は正常)

仮面高血圧(診察室血圧は正常,24 時間血圧は高値)

正常血圧(診察室血圧,24 時間血圧ともに正常).

 

診察室血圧はsystolic blood pressure ≥140 mm Hg or diastolic
≥90 mm Hg で高値と定義

24時間血圧はsystolic pressure ≥130 mm Hg or diastolic
≥80 mm Hgで高値と定義

 

 

COX回帰分析を用いて診察室血圧、24時間血圧、交絡因子を補正。

 

ベースライン(生存郡と死亡郡で比較)

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●結果

クリニックの血圧は心血管イベントや死亡率にあまり関与しないが、24時間血圧は日中、夜間問わず心血管イベントや死亡率に関与する傾向

 

●全死亡率(Model1 :adjusted for age, sex, smoking status, body-mass index, and status with respect to diabetes, dyslipidemia, previous cardiovascular
disease, and number of antihypertensive drugs used.)

24 時間収縮期血圧(HR 1.58,95%信頼区間 [CI] 1.56~1.60)

診察室収縮期血圧(HR 1.02,95% CI 1.00~1.04)

日中の収縮期血圧(HR1.57,95% CI 1.55~1.60 )

夜間の収縮期血圧(HR1.57,95% CI 1.55~1.59 )

 

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Model1の解析において全死亡率は仮面高血圧が最も関連する 

しかし白衣高血圧も死亡率と関連

仮面高血圧 HR2.92

白衣高血圧 HR2.24

持続性高血圧 HR2.36

 

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●感想

COX回帰分析を使用したコホート研究で解釈は難しいが。。

臨床で考えれば、やはり血圧手帳が重要になるということか。

仮面高血圧はむしろ持続性高血圧より予後が悪いので、診察室の血圧が正常でも血圧手帳で高血圧が持続していれば、積極的に降圧を図るべきであると言えそう。

これは今までの臨床的な感覚とも一致。

しかし、白衣高血圧も決して予後良好というわけではなさそう。とはいえ診察室の血圧高値自体はあまり死亡率に関与してなさそうだが。。

 

透析患者の緩和ケアについて

ふと透析患者の終末期ケアや緩和医療が、気になったので。。

透析って、当たり前ですけど家ではできませんしね。。

かといって緩和ケア病棟で透析するわけにもいかないし。。

意外に透析施設をもつ地域包括ケア病棟が担うことになるのかも。。

 

 

日本透析学会から下記の提言が発表されている。

維持血液透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言

 

透析を見合わせる場合は以下の状況が考えられる。

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実際に透析を取りやめるときのアルゴリズムは下記。

DNARと同様に、本人の意思を最優先としつつ、多職種で方針を決定するという基本方針が見える。

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透析を見合わせた場合は以下の方針に。

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透析を見合わせれば確かに家に帰ることもできます。

 

 

 

以下症例報告。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsdt/45/4/45_375/_pdf

拡張型心筋症の末期でかつ透析をした症例を看取ったと。

心拍出が不良であり透析が出来なくなってしまうというジレンマ。

透析を止めると呼吸苦が出たときにモルヒネが使えないというジレンマ。

透析の見合わせを本人にどのように言うかというジレンマ。

非常に悩ましいですね。。

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以下は米国の心不全+透析患者の終末期についての症例報告

心不全+末期腎不全で透析をやめて家での終末期ケアを提案するも、本人が可能な限り透析を続けてほしいと願った症例。

最終的にはなくなる前日まで透析をした。

急性期病院から退院方向だったが、なくなる前日のHDで血行動態が不安定になり、透析を外来で継続するのは難しく透析を止める方向になったと。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5469574/

 

以下CKDのステージによる対応の変化についての表

末期になればなるほど、アドバンスケアプランニングが重要になってきて、多職種でのかかわりが大切

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End stageではメリットとデメリット、本人の価値観などを参考に透析の見合わせを検討していく

陶山先生 カンファ 2018年4月27日

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●陶山先生カンファレンス

蛋白・ALB解離を認めれば。。

IgG,IgA、IGMはルーチンでセットで出す。⇒どこが増えていて、どこが抑制されているか。

ESRとCRPの解離を診たら →SLE、シェーグレン、IgG4

ESR上昇を診たら

陰性電荷が減る:Hb↓ ALB↓

陽性電荷が増える:Ig上昇

PolyclonalにIgGが上昇⇒SLE、シェーグレン、AIH

ガムテストは味のしないガムを10分噛んで10ml以上唾が出なければ陽性

口唇生検は特定疾患を取りに行くときに必要。

腺外症状がないなら、無理に生検をしないことも。

治療は、腺外症状がないなら生活指導がメイン。 歯磨きが大切。

シェーグレンらしいキャラクターがある。

細胞質に首座があるSSAは抗核抗体が陰性でも陽性になりうる。

⇒スクリーニングにはSSAANAが有用

 

●シェーグレンでリンパ腫を合併するリスク

Predicting the risk for lymphoma development in Sjogren syndrome: An easy tool for clinical use. - PubMed - NCBI

唾液腺の腫脹, リンパ節腫大, 補体低下、リウマチ因子陽性など。

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リスクがある場合は、CTでリンパ節腫脹の検索を行う。

 

リスクが高ければ発症率も上昇する

 

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急性期脳梗塞のテネクテプラーゼとアルテプラーゼとの比較

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http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1716405?query=featured_home

P:4.5時間以内で内頸動脈,脳底動脈,中大脳動脈のいずれかに閉塞を認め血栓除去術が施行可能な患者

I テネクテプラーゼ (アルテプラーゼより作用時間が長く、ボーラス投与が可能)

C アルテプラーゼ

O  primary outcome:虚血性病変部位の再灌流(虚血部位の50%以上がもとに戻る  or  血管造影時に回収可能な血栓がない)

 

RCT オープンラベル outcomeはブラインドされている

両郡のベースラインは変わりなし

数は足りている

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●結果

プライマリーアウトカム(代替アウトカムだが。。)はテネクテプラーゼ郡で良い傾向。

テネクテプラーゼ: 22%,アルテプラーゼ: 10%( 非劣性の P=0.002,優越性の P=0.03)

 

セカンダリーアウトカムだが、modified Rankin scaleもテネクテプラーゼ郡で良い傾向がある。

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⇒副作用も大きな変わりなし

 

●感想

テクネプラーゼはこのStudyの結果をみると、アルテプラーゼよりも優れた治療であるような印象を受ける。

ボーラス投与でよいのもポイントが高い。

ただし、Primary outcomeが代替outcomeであり、真のアウトカムはSecondory outcome。

今後の治療が変わる可能性はあるが、追試を待ちたい。