コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

症例カンファ めまい

#めまい

 

73歳男性

 

dizziness,食欲不振,倦怠感

めまいは40-50分継続 

肉体労働をしていた。休んだら良くなった。 来院時は症状なし

徐々に発症

歩行問題なく可能 明らかな脱力なし 

smocker 

特に既往なし ただ検診も行っていない

陰性所見:耳鳴り、悪心、複視、構音障害、嚥下障害、痺れ、頭痛 頚部痛、胸痛、呼吸苦

 

身体所見

バイタル:血圧SBP170と高い 他特記事項なし

胸部診察、腹部診察も問題なし。

眼振なし 他特に神経学的な異常は認めない。dix-hall pikeで誘発されない

 

◯めまいのフレーム

・pre syncope

・平衡障害

・頭位性めまい

・持続性めまい

 

⇒病歴からは頭位性、持続性、平衡障害は否定的。

椎骨脳底動脈不全も鑑別に挙がるが、随伴する神経学的症状が一切病歴でないところは少し否定的かも。。頸部後屈でも症状誘発されず

となるとpresyncopeか。 失神しそうになるかんじもあると。

pre syncopeの中でも起立性でもなさそう。

喫煙者で40-50分継続する症状で、安静でよくなるという点からは不安定狭心症が鑑別に挙がるか。。

⇒心電図でSTEMIと診断。 やはり病歴は大切。

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20171026113114p:plain

 

 

 

 

早期のCOPDに対するスピリーバの効果

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20171025062844p:plain

P:GOLD分類でStage1-2のCOPDの40-85歳の患者

4週間以内に急性増悪を起こしていたり、重大な肺疾患(肺癌etc)、喘息、重度の全身疾患は除外
I :チオトロピウム(スピリーバ) 18μg を1日1回吸入し
C:プラセボを1日1回吸入
O:

primary endpoint

ベースラインに比較したFEV1の変化

 

secondory endpoint:

ベースラインに比較したFEV1の24ヶ月の変化

ベースラインに比較したFVCの24ヶ月の変化

%FEV1の1年間の低下率

 30日から24ヶ月のFEV1%の変化率
CATスコアの変化
 CCQスコアの変化
 mMRCスコアの変化
COPD急性増悪の期間と重症度

COPD急性増悪がはじめて起こるまでの期間
レスキューの使用



A②その試験は設定された課題に答えるための研究方法がとられているか?
中国で実施された多施設の大規模RCT double blind
 
A③ 患者はそれぞれの治療群にどのように割り付けられたか?

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20171025064551p:plain

⇒ランダムな割り付け、 中央割り付け、blockで割り付け 施設毎に層別化

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20171025064657p:plain

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20171025064706p:plain

ベースラインに差はない

平均63-64歳 40%も現在も喫煙。。。

 
A④研究対象者、現場担当者、研究解析者は目隠しされている?
double -blindだが具体的な方法は不明
 
A⑤適切に評価されたか?

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20171025064849p:plain

脱落群の一部しか評価出来ていない。
ITTは、はっきりと記載なし。
脱落群の一部を含めて解析しているので、modified ITT ?
 
 
A⑥研究対象となった介入以外は両方のグループで同じような治療がされていたか?
どちらも、同じように治療されている
traditoinalな中国の治療は行われているが、ほぼ同等
Previous medication for respiratory diseaseの使用はチオトロピウム群で少し多い傾向?
 
 
A⑦その研究のための対象患者数は偶然の影響を小さくとどめるのに十分な数か?

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20171025065402p:plain

脱落を35%と仮定 400人と推定。

→数は足りていそう。

B結果は何か?
B⑧a 結果はどのように示されたか?

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20171025065625p:plain

 ・FEV1の変化量⇒介入で157ml(95%CI 123-192ml)改善(P<0.001) 

 

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20171025065635p:plain

FVCも介入群で高値の傾向 P<0.05 

 

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20171025065645p:plain

COPD急性増悪もチオトロピウム群で低い傾向、HRR0.60、95%CI 0.5-0.8 P<0.001。
初回急性増悪までの期間も介入群で長い傾向。

 
急性増悪も明らかにチオトロピウム群で少ない傾向
f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20171025070813p:plain
急性増悪全体では39.2%vs 28.9% →NNTは9.7
 

 

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20171025070514p:plain

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20171025070541p:plain

⇒FEV1の減少もチオトロピウム群で少ない傾向

 

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20171025070704p:plain

 
⇒CATスコア、 mMRCdyspnea scaleもチオトロピウム群で良い傾向
 
 
c 副作用は

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20171025071155p:plain

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20171025071203p:plain

⇒重度な副作用は有意差なし

ドライマウス、咽喉頭違和感はチオトロピウム群で明らかに多い

 

 

●どうするか?

 市中でスクリーニングしたCOPDの患者。

本人の治療の意思は確認していない。

プライマリーアウトカムの呼吸機能の改善なので、微妙。。

10人に1人に急性増悪を防げるならよいが。。

しかしGOLDの1-2でこんなに急性増悪するのか?

プラセボは40%近くが急性増悪。急性増悪が多すぎる印象。中国だから??

急性増悪の定義は??

自覚症状がない人に吸入薬を吸わせるのは無理があるのでは?

試験に同意した人という時点でセレクションバイアスがある。

遵守できるかは別問題。。

 

 

深部静脈血栓、肺塞栓の安静度

当院のレジデントがまとめてくれました!
 
■DVT/PE患者が入院した場合、安静度はどうしたらいいのか??
・これまでは施設、個人での判断になっていた
・肺塞栓は離床・活動中に発症する⇔離床・活動と肺塞栓発症に関連しない(それぞれ論文がある)
 
・日本離床研究会のアンケート
 
■2016年のアメリカ理学療法士学会のガイドラインでは
深部静脈血栓に対し治療を開始し、治療域であれば早期に離床をすすめている
 
■uptodate
ーOverview of the treatment of lower extremity deep vein thrombosis (DVT)
・急性DVTにおいて早期離床は安全
・小規模のRCTやメタ解析で早期離床は再発リスク、致死的肺塞栓リスクを増加させない
 
・post-thrombotic syndromeはDVT後の慢性静脈不全(急性DVT後1年以内、抗凝固療法によらず約50%の頻度で発症、浮腫(2/3程度で多い)ほか痛み・静脈拡張・皮膚色素沈着・皮膚潰瘍)
・RCTでメリットが明らかでなく、PTS予防での弾性ストッキングのルーチン使用は推奨していない
・使用する場合は抗凝固療法後、2週間内に、2年続けること
・PTSでは下肢挙上や下肢運動、弾性ストッキングを推奨(grade2C)
 
ーTreatment, prognosis, and follow-up of acute pulmonary embolism in adults
・早期離床は塞栓を悪化させない、可能なら治療されている急性PEでも早期離床をすすめる
・術後のため安静、DVTや低酸素血症で重度の症状があれば制限する
 
■dynamed
ーDVT治療から
・DVT患者において、早期離床+抗凝固療法はベッド上安静+抗凝固療法と比較し、血栓塞栓の有害アウトカムのリスクを減らす
 
・3269例のDVTで早期離床 vs ベッド上安静に関してシステマティックレビュー
(PLoS One 2015;10(4):e0121388)
>LMWH、ワーファリン、UFHなど1剤以上抗凝固療法は開始、Day0-2時点で早期離床、3-14日間ベッド上安静、特に指定しない、に分け、7日~6ヶ月フォロー
>肺塞栓・DVT発生の複合アウトカムの減少
 
ーPE治療から
・ベッド上安静はDVT/PE患者において新規PEリスクへ影響しないと思われる
 
・2650例の症候性急性DVT(2038例)、PE(612例)の後ろ向きコホートスタディ
(Chest 2005 May;127(5):1631)
>DVTの52%、PEの63%では最初の15日間はベッド上安静の指示
>ベッド上安静 vs 通常の活動の比較
 ・新規PE 0.5% vs 0.9%(有意差なし)
 ・致死的PE 0% vs 0.4%(有意差なし)
 ・出血(minor) 2.6% vs 0%(p=0.02, NNH 39)
 
■まとめ
・リハビリに支障をきたす問題がないかぎり急性期DVT/PEで抗凝固療法を開始した上で離床をすすめる
・酸素が必要な状態、全身状態によってはリハビリは制限する

症例カンファ 腰痛

 

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20171019195218p:plain

 

本日は症例カンファ。

以前に扱った症例でしたが、新しい先生も来たので復習を兼ねて

腰痛の症例。

体動で悪化 筋骨格系か

しかし、kye pointは安静時痛があり、夜間に痛みで目が覚める。

この病歴の地点で精査をすべきことが決定。

さらに運動で改善するという点、若年男性という点から強直性脊椎炎を考える。

その他の脊椎関節炎、化膿性脊椎炎、結核性脊椎炎、悪性腫瘍骨転移も鑑別に。

ただ随伴症状やリスクは少ない。

 

強直性脊椎炎を念頭に、仙腸関節の叩打痛、パトリックを取りに行くと陽性。

下痢があるのでIBD関連の脊椎関節炎は鑑別に。

MRIでは shiny cornerを認め、最終的に強直性脊椎炎と診断。

病歴から鑑別を挙げて、身体診察と検査で詰める過程を共有しました。

以下、以前のまとめ。

強直性脊椎炎のレビュー - コミュニティホスピタリスト@東京城東

健診、検診のレクチャー 松本Dr

検診:特定の疾患を見つける(例 癌検診)

健診:特定の病気を見つけるわけではない。

 

CEAが無症状で見つかった場合は??

⇒大腸癌の可能性は4%程度??

choosing wiselyとしてはCEAは使用しない方向。

早期に消化器癌を見つけるメリットはある?

しかし96%の人が追加で精密検査を行うリスク・負担もある。。

寿命に関与することがないPSAの測定の意義は??

 

脳ドックの意義は??

無症候性脳虚血発作、無症候性内頚動脈閉塞、無症候性未破裂動脈瘤

無症候性脳梗塞に関しては抗血小板薬の投与は推奨されない(2015年から脳梗塞ガイドラインでも記載あり)

無症候性内頚動脈閉塞は治療適応乏しい?

無症候性未破裂動脈瘤は小さければ治療適応なし しかし動脈瘤に対する不安も。。

⇒癌検診とくれべて費用対効果は劣るという報告も。。ただ今後の血管内治療の報告で変わる可能性も。。

とはいえ、現地点では推奨されない。

 

では何をすればよいか??

us preventive task forceのアプリがお勧め!

AHRQ ePSS - Google Play の Android アプリ

日本と少し事情が違うところもあるが、年齢・性別・喫煙・sexualy activeを入力すれば推奨する検診を提示してくれる。

継続外来では特にお勧め!!!

 

例えば65歳男性で喫煙者、sexualy activeなし

推奨A 大腸癌、HIV(これは日本では当てはまらないか。。)、高血圧、禁煙

推奨B 転倒予防の運動、腹部大動脈瘤(エコー)、アルコール依存、血管リスクが高い場合のアスピリン使用(しかし、日本人ではこれも当てはまらないか。。)、うつ病、糖尿病、運動・減量、スタチン(LDL測定)、肥満、潜在性結核(これもルーチンでは難しいか。。)、B型肝炎C型肝炎(これもルーチンでは難しいか。。)、肺癌のスクリーニング

⇒ということで便潜血を含めた一般的な健診の項目に加えて禁煙、うつ病、運動・食事指導・腹部エコー、必要に応じて胸部CTを行うか。。