コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

深部静脈血栓、肺塞栓の安静度

当院のレジデントがまとめてくれました!
 
■DVT/PE患者が入院した場合、安静度はどうしたらいいのか??
・これまでは施設、個人での判断になっていた
・肺塞栓は離床・活動中に発症する⇔離床・活動と肺塞栓発症に関連しない(それぞれ論文がある)
 
・日本離床研究会のアンケート
 
■2016年のアメリカ理学療法士学会のガイドラインでは
深部静脈血栓に対し治療を開始し、治療域であれば早期に離床をすすめている
 
■uptodate
ーOverview of the treatment of lower extremity deep vein thrombosis (DVT)
・急性DVTにおいて早期離床は安全
・小規模のRCTやメタ解析で早期離床は再発リスク、致死的肺塞栓リスクを増加させない
 
・post-thrombotic syndromeはDVT後の慢性静脈不全(急性DVT後1年以内、抗凝固療法によらず約50%の頻度で発症、浮腫(2/3程度で多い)ほか痛み・静脈拡張・皮膚色素沈着・皮膚潰瘍)
・RCTでメリットが明らかでなく、PTS予防での弾性ストッキングのルーチン使用は推奨していない
・使用する場合は抗凝固療法後、2週間内に、2年続けること
・PTSでは下肢挙上や下肢運動、弾性ストッキングを推奨(grade2C)
 
ーTreatment, prognosis, and follow-up of acute pulmonary embolism in adults
・早期離床は塞栓を悪化させない、可能なら治療されている急性PEでも早期離床をすすめる
・術後のため安静、DVTや低酸素血症で重度の症状があれば制限する
 
■dynamed
ーDVT治療から
・DVT患者において、早期離床+抗凝固療法はベッド上安静+抗凝固療法と比較し、血栓塞栓の有害アウトカムのリスクを減らす
 
・3269例のDVTで早期離床 vs ベッド上安静に関してシステマティックレビュー
(PLoS One 2015;10(4):e0121388)
>LMWH、ワーファリン、UFHなど1剤以上抗凝固療法は開始、Day0-2時点で早期離床、3-14日間ベッド上安静、特に指定しない、に分け、7日~6ヶ月フォロー
>肺塞栓・DVT発生の複合アウトカムの減少
 
ーPE治療から
・ベッド上安静はDVT/PE患者において新規PEリスクへ影響しないと思われる
 
・2650例の症候性急性DVT(2038例)、PE(612例)の後ろ向きコホートスタディ
(Chest 2005 May;127(5):1631)
>DVTの52%、PEの63%では最初の15日間はベッド上安静の指示
>ベッド上安静 vs 通常の活動の比較
 ・新規PE 0.5% vs 0.9%(有意差なし)
 ・致死的PE 0% vs 0.4%(有意差なし)
 ・出血(minor) 2.6% vs 0%(p=0.02, NNH 39)
 
■まとめ
・リハビリに支障をきたす問題がないかぎり急性期DVT/PEで抗凝固療法を開始した上で離床をすすめる
・酸素が必要な状態、全身状態によってはリハビリは制限する