コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

陶山先生カンファ 2017年2月3日

 

先週は、陶山先生のカンファレンスがありました!!

PMRで治療後、血沈は陰性化しているが一時的に肩の痛みを訴えMRI撮像したところ、肩峰下滑液包炎の所見が! ⇒症状は乏しくても画像上は明らかな滑液包炎。経過観察でも良いかなと思ったのですが、肩関節のステロイド局注でよいと迷いなくご指摘。rheumatologistさすがです。

 

もうひと症例ご相談したのは、30台前半男性の腰痛。4年前からあった腰痛が増悪したため来院。

最初はただの腰痛症だろうと思っていたのですが。。 夜間~朝に増悪する腰痛で、運動で改善し、日内変動する痛み。。 といえばあれですね。

 

 

強直性脊椎炎です。

以前城東病院ブログでもまとめました。

jyoutoubyouinsougounaika.hatenablog.com

 

L4あたりに叩打痛があり、仙腸関節の圧痛も有りました。

レントゲンでは明らかな所見なし。

アキレス腱や末梢関節の異常はなかったものの、病歴が典型的すぎでした。

 

病歴に関しては高岸先生のブログに載っていました。非常に勉強になるので、皆様是非御覧ください。

Hospitalist ~病院総合診療医~: 炎症性背部痛の評価

 

仙腸関節MRIで明らかな異常なし。

L4椎体が少しSTIRで光っているようにみえるけど。。悩ましい。

陶山先生に見ていただいたところ、これは有意所見だとご指摘。

強直性脊椎炎のMRIの異常は脊椎の端から始まるとのこと。

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たしかにNEJMのレビューの画像を見ても、脊椎の角に異常信号を認めます(J)

 

治療はNSAIDS。ただ次の選択肢は抗TNFα抗体。

治療がうまくいけば人生が変わる疾患なので、rheumatorogistが診るべきと。

今回も勉強になりました。

陶山先生ありがとうございました。

 

ベル麻痺の治療について

最近、ベル麻痺が続いてる。

そういえば、ベル麻痺の治療について、根拠をはっきりと知らないことに気づき調べてみました。

https://www.jsnt.gr.jp/guideline/img/bell.pdf

日本神経治療学会のガイドラインより引用

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ステロイドの効果

上記のように神経治療学会のガイドラインでもステロイドは推奨。

Combined Corticosteroid and Antiviral Treatment for Bell Palsy | Facial Nerve | JAMA | The JAMA Network

18件の試験と2786の患者を対象としたメタアナリシスでは、グルココルチコイド単独による治療は、回復遅延のリスク低下と関連していた(相対リスク[RR] 0.69,95%CI 0.55-0.87) RR 1.14,95%CI 0.80-1.62)。

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20170130205433p:plain

 

ステロイドの使用は明らかに予後を改善させると言える。

実際、Up to Dateでもステロイドは全てのベル麻痺で投与と記載有り。

For all patients with idiopathic facial nerve palsy (Bell's palsy) or facial nerve palsy of suspected viral etiology, we recommend early treatment with oral glucocorticoids (Grade 1A).

 

ということで、ベル麻痺であればステロイドを使用するのは異存ないだろう。

量に関しては、Up to Dateでは、Our suggested regimen is prednisone (60 to 80 mg/day) for one week.とPSL 60-80mg/dayを1週間としている。

一方先の日本のガイドラインでは、成人ではprednisolone 1mg/kg/日 or 60mg/日を5~7 日間投与し,その後1 週間で漸減中止する (I-A).

・ 中等症以下の症例及び高齢者では prednisolone 0.5mg/kg/日 or 30mg/日を5~7 日間投与し,その後1 週間で漸減中止する(IV).

としている。

そこで、PSLの有用性を認めたLancetの2008年の大規模RCTを見てみると。。

http://www.thelancet.com/journals/laneur/article/PIIS1474-4422(08)70221-7/abstract

患者発症72時間以内のベル麻痺

PSLは60mg/dayを5日⇒10mg/dayを5日の合計10日 というレジュメ。

1年間のフォローアップ でPSL使用は、PSL不使用に比べ回復が明らかに早い傾向(hazard ratio [HR] 1.4, 95% CI 1.18-1.64) 

 

成人ではprednisolone 1mg/kg/日 or 60mg/日を5~7 日間投与し,その後1 週間で漸減中止する という日本のガイドラインの推奨が無難だと思われる。

 個人的には、中等症以下の症例及び高齢者では prednisolone 0.5mg/kg/日 or 30mg/日を5~7 日間投与し,その後1 週間で漸減中止するという日本のガイドラインの推奨も臨床的な実感としては妥当な印象。

 

 

ステロイドと抗ウイルス薬の併用 

一方、ステロイドと抗ウイルス薬の併用を全例で行うわけではなさそう。

先の神経治療学会のガイドラインにも下記の記載有り。 

「軽症Bell 麻痺対する抗ウイルス薬単独の使用を積極的に支持する研究はなく,抗ウイルス薬の有効性に関する明確なエビデンスがないことから,中等症以上のBell麻痺において副腎皮質ホルモンとの併用投与が望ましいと考えられる」

と、中等度以上のベル麻痺でのみ抗ウイルス療法を行うべきというのがガイドラインの推奨。

では、中等度とはどれくらいの指標なのか?

House-Brackmann法ではⅢ以上が中等度ということになるらしい。

それに準じて考えれば良いと思われる。

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では、Up to Dateではどうか?

For the subgroup of patients with severe facial palsy at presentation, defined as House-Brackmann grade IV or higher (table 1), we suggest early combined therapy with prednisone (60 to 80 mg per day) plus valacyclovir (1000 mg three times daily) for one week rather than glucocorticoids alone (Grade 2B).

 

と上記の House-Brackmann法でⅣ点以上で抗ウイルス薬を考慮としている。

 

つまり、日本神経治療学会ではⅢ点以上。Up to DateではⅣ点以上で抗ウイルス薬の併用を考慮としている。

 

http://www.thelancet.com/journals/laneur/article/PIIS1474-4422(08)70221-7/abstract

先のLancetの2008年の大規模RCTを見てみると。

バラシクロビルで治療するしないに関わらず回復までの時間は変わらなかった(HR 1.01,95%CI 0.85-1.19)。

さらに、バレラシクロビルとプレドニゾロンを併用しても回復までの時間はプレドニゾロン単独に比べ優れているわけではなかった。。

 

 

一方、日本初の多施設RCTによると。。

Valacyclovir and prednisolone treatment for Bell's palsy: a multicenter, randomized, placebo-controlled study. - PubMed - NCBI

P 発症7日以内のベル麻痺

I  PSL+バラシクロビル1000mg/dayを5日間 (VP)

C PSL+プラセボ                                       (PP)

O 顔面神経麻痺の回復

前向きの多施設のプラセボコントロールのRCT

(VP [n = 114]) , (PP [n = 107])に割り付け

・回復した割合

VP 96.5%

PP    89.7%

とVP郡がPP郡より優れる(P<0.05)⇒NNT:14.7

 

・さらに最初の顔面神経麻痺が重症 ~完全麻痺でサブ解析すると。。

VP  95.7% (n = 92)

PP    86.6% (n = 82)

とVP郡が同様にPP郡より優れる(P<0.05)⇒NNT:11

 

 

前述のJAMAのメタアナリシスでは、抗ウイルス薬+ステロイドも検討されている。

Combined Corticosteroid and Antiviral Treatment for Bell Palsy | Facial Nerve | JAMA | The JAMA Network

 抗ウイルス薬単剤では効果はなさそう。

一方、8個のRCTのメタアナリシスでは、グルココルチコイド単独療法と比較して、抗ウイルス薬とグルココルチコイド併用療法は回復遅延のリスク低下と関連していたが統計的に有意ではなかった(RR 0.75,95%CI 0.56- 1.0)。

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これらの結果をどう解釈するか?

先程の日本からの比較的大規模のRCTでは、バラシクロビル+PSLの併用療法は特に顔面神経麻痺が重症以上でより有用かもしれないと言える。

その意味では、Up to DateではⅣ点以上で抗ウイルス薬の併用を考慮とするのは妥当かもしれない。

ただ、先の日本神経治療学会のガイドラインでは、ラムゼイハント症候群とベル麻痺の鑑別が時に難しいと記載有り。

ラムゼイハント症候群では抗ウイルス療法が重要であるにも関わらず、14%では皮疹に先行して顔面神経麻痺が出現するため、ベル麻痺との鑑別が難しいとのこと。

Neurology. 1998 Oct;51(4):1202-5.

実際に中等症つまり House-Brackmann法でⅢでは抗ウイルス療法が効果が乏しく、Ⅳ以上では効果があると言えるだけの根拠も不明瞭。

つまり、日本のガイドラインの推奨通りにベル麻痺と鑑別が難しいラムゼイハント症候群の可能性も考え、 House-Brackmann法でⅢ以上のベル麻痺で抗ウイルス療法をPSLに併用するのはリーズナブルかもしれない。

 

 

では、抗ウイルス薬の量と投与期間は?

最近では、バラシクロビルが基本になりつつある。

投与期間は概ね5~7日と覚えれば間違いなさそう。

Up to Dateでは重症(House-Brackmann法でⅣ以上)では1000mg×3/day(3000mg/day)を1週間PSLと併用と推奨している。

ただ、前述の日本のRCTを受けて、日本のガイドラインでは500mg×

2/day(1000mg/day)の5~7日間投与を推奨している。

どちらが良いかは悩ましいが、House-Brackmann法でⅣ以上の場合は、3000mg/dayのバラシクロビルは許容されるかもしれない(ラムゼイハント症候群も完全に否定しきれないことを考えれば、帯状疱疹に準じて良いかもしれない。)

ここはケースバイケースで考える必要があるか。

 

 

 ・ドライアイへの対応。

地味だが、大切。重症の顔面神経麻痺では、閉眼が難しくなるためドライアイが起きうる。ヒアレインなどの人工涙液は、中等度以上ならルーチンで使用してよいだろう(副作用も皆無に等しいので躊躇する必要はない) 

 

 

・メコバラミン

コバラミンはベル麻痺に使用する根拠は乏しい。前述の神経治療学会のガイドラインで引用されているのは、下記の小規模なstudyのみ。

Methylcobalamin treatment of Bell's palsy. - PubMed - NCBI

そもそもメコバラミンは経口でなく筋注。さらにメコバラミンの効果が高すぎる印象(ステロイド単剤よりも優れている)。

コバラミン経口摂取に関してはStudyはなさそう。それでも経口でも筋注と同等の効果がある可能性があり、さらに副作用も少ないという点でガイドラインでは、経口のメコバラミンが記載されれている。。。確かに、筋注のメコバラミンはやり過ぎかもしれないが。。そもそもメコバラミンを使用する根拠が少ない印象。

とはいえ、経口のメコバラミンは確かに副作用も少なく、実際に専門家が使っていてガイドラインに書いているという現状を考えれば、ルーチンに使用しても良いかもしれない。量と投与期間はガイドラインに準じて使用する。

コバラミン1,500μg/日 分3を寛解または発症後8 週間まで投与する.

 

 

・ボツリヌス毒素など

 後遺症として顔面神経の病的共同運動・連合運動・持続収縮が起きるとされている。その場合はボツリヌス毒素が有効とされる

 他には、顔面神経麻痺が回復しない場合は、外科的な顔面神経麻痺の矯正もあるとのこと。

 

 

 

 

 

ベル麻痺のマネージメント Up to Date

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ジャーナル流し読み 2017年1月30日 

米国で医療費がかかる疾患について

Spending on US Health Care, 1996-2013 | Health Care Economics, Insurance, Payment | JAMA | The JAMA Network

1996年から2013年までの政府予算、保険請求、施設調査、世帯調査、および米国の公式記録を収集し、結合した。 後ろ向き研究。

○研究手法

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最も2013年に医療費が高額だったのはDM、次に虚血性心疾患、腰部・頚部痛、高血圧の治療、転倒

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1996~2013年にかけて、糖尿病と腰部・頸部痛とで医療費増大が大きい、

他には、高血圧・脂質異常症うつ病・転倒など。

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○コメント

やはり生活習慣病にはお金がかかる。日本も同様の傾向だろう。。。

日本では、当然糖尿病の医療費は高そう(特にDPP-Ⅳ)、高血圧にかかる医療費が高い気がする(特にARB

 

 

 

 

Fish Oil–Derived Fatty Acids in Pregnancy and Wheeze and Asthma in Offspring

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1503734

 

P 妊娠 24 週の女性

I n–3 系 LCPUFA(魚油)2.4 g/日を摂取

C プラセボ

O  primary  新生児の持続性の喘鳴または喘息

    secondory 下気道感染,喘息急性増悪,湿疹,アレルギーの感作

 前向きのRCT 担当医にも最初はブラインド

新生児 695 例が組み入れ。95.5%が 3 年間の追跡を追跡

 

○持続性の喘鳴または喘息

n-3群  16.9%

プラセボ 23.7%

(ハザード比 0.69,95%信頼区間 [CI] 0.49~0.97,P=0.035)⇒NNT:14.7

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サブルグープ解析では、ベースラインの血中のDHAEPAの値が低いほど有効

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結果のまとめ

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なお、副作用の記載は特になし

 

 

○コメント

確かに効果がありそう。。

N-3脂肪酸EPADHAがメイン。

日本でもサプリメントが売られている。

DHA・EPAサプリ完全攻略【人気の15商品を徹底調査】

今後、妊婦では葉酸だけでなくこのようなサプリの摂取も推奨される??

 

 

 

 

Comparison of risk scoring systems for patients presenting with upper gastrointestinal bleeding: international multicentre prospective study | The BMJ

欧州・北米・アジア・オセアニアおいて、2014年3月~2015年3月の12ヵ月間にわたり上部消化管出血患者連続3,012例について評価した前向きの多施設研究

 

内視鏡検査前のリスク評価スコア(admission Rockall、AIMS65、Glasgow Blatchford)と内視鏡検査後のリスク評価スコア(full Rockall、progetto nazionale emorragia digestive[PNED])を比較した。

 

○アウトカム

複合エンドポイント(輸血、内視鏡治療、介入術、30日死亡)、内視鏡治療、30日死亡、再出血、入院期間。

 

 

○結果

介入(輸血、内視鏡的治療、血管内治療または手術)または30日死亡予測におけるスコアの比較⇒Glasgow Blatchrofd scoreが最も優れる傾向

 

GBS 1点以下が、介入不要で生存することを予測する最適のスコア(感度98.6%、特異度34.6%)。

Fig 1 Comparisons of scores in prediction of need for any intervention (transfusion, endoscopic treatment, interventional radiology or surgery) or 30 day mortality (n=1704). All figures compare patients with complete data for all compared scores. AUROC=area under the receiver operating characteristic curve

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Fig 3 Comparisons of scores in prediction of 30 day mortality (n=1707). AUROC=area under the receiver operating characteristic curv

死亡率の予測には、PNEDおよびAIMS65が優れる傾向

 

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○結論

Glasgow Blatchfordスコアは、病院での介入の必要性または死亡率を予測する際に高い精度を有する。同スコア 1以下は、患者を患者を外来で管理できるかの最適な閾値となる。

 

http://www.jges.net/app/webroot/files/uploads/pdf/gideline201506.pdf

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https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/10.1001/jama.2016.19425

Effect of Longer-Interval vs Standard Dosing of Zoledronic Acid on Skeletal Events in Patients With Bone Metastases

P  年齢18歳以上かつ1つ以上の骨転移を有する転移性乳がん or 転移性前立腺がん or多発性骨髄腫の患者

I  ゾレドロン酸を12週毎に投与

C ゾレドロン酸を4週毎に投与

O   primary outdome

少なくとも1つの骨関連事象を有する患者の割合であった(臨床的骨折、脊髄圧迫、放射線治療または手術)

 

米国の269の施設で実施された無作為化された、オープンラベルの臨床試験

 1822人の患者を対象 非劣性試験

 

○結果

primary outcome

12週投与群28.6%(253例)

4週投与群は29.5%(260例)

12週投与群の4週投与群に対する非劣性が確認(p<0.001)

 

疼痛スコア、パフォーマンスステータス、顎骨壊死の発生率、および腎機能障害も有意差は無かった。

 

 

○結論

http://database.japic.or.jp/pdf/newPINS/00060836.pdf

日本の添付文章でもゾメタのこれらの患者への投与は3~4週ごとに4mgを点滴静注と記載。

これらの患者へのゾレンドロン酸の12週投与は許容されるかも

頭痛のフレーム

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頭痛のフレームは雷鳴様頭痛、頭蓋内疾患、頭蓋外疾患、機能性・全身疾患の4つに分けて考えると良いと思います。

突然発症の頭痛は雷鳴様頭痛として、常にSAHを考える。頭部CTは必須。必要であれば、ルンバールやMRI・MRAを

増悪傾向・最悪の頭痛は頭蓋内疾患を念頭に、意識変容、神経脱落症状などチェック。髄膜炎・脳炎は常に念頭に。

頭蓋外疾患の原因としては、副鼻腔や歯・眼などが原因。そらにfocusを当てた診察やROSを。

全身性頭痛としては薬物やCO中毒も考える。

それらが否定的なら、機能性頭痛に矛盾しないかどうか。

喘息に対するLAMAの効果 RCT

スピリーバが喘息の適応が通っているとのことだが実際はどうなのか??

 

Up to Date のTreatment of severe asthma in adolescents and adultsを見ると。。

In patients who do not achieve adequate control with a combination of a high dose inhaled GC and LABA, we suggest adding an additional controller medication (Grade 2C). Choices include an antileukotriene agent, tiotropium, or theophylline. If asthma control does not improve after a reasonable trial the added medication should be discontinued.

とICS+LABAでコントロールできないときの次の1手として、テオフィリンと抗ロイコトリエンと同様に扱われている。

 

Up to Dateの喘息におけるtiotropiumで扱われているNEJMの2012年のRCTを読んでみた。

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1208606

 

アブストラクトは以下を参照。

標準併用療法ではコントロール不良な喘息に対するチオトロピウム | 日本語アブストラクト | The New England Journal of Medicine(日本国内版)

 

Boehringer Ingelheim ,Pfizer から研究助成を受けている論文

 

P  吸入ステロイド(800μg以上のブデゾミド)とLABAを投与されている18~75歳の喘息患者 5年以上の罹患歴が有り、40歳より前に喘息と診断 Asthma Control Questionnaire7 (ACQ-7)が1.5以上で持続的な気流制限が呼吸機能検査で証明  

さらに、吸入ステロイド使用下で急性増悪を起こし、喫煙歴が10年以下で現在喫煙していない。

 

・除外基準

COPDと診断、併存疾患、抗コリン薬使用など

 

除外の詳細

3.3.2 Exclusion criteria
1. Patients with a significant disease other than asthma. A significant disease is defined
as a disease which, in the opinion of the investigator, may (i) put the patient at risk
because of participation in the trial, or (ii) influence the results of the trial, or (iii)
cause concern regarding the patient’s ability to participate in the trial.
2. Patients with clinically relevant abnormal screening haematology or blood chemistry
will be excluded if the abnormality defines a significant disease as defined in
exclusion criterion 1.
3. Patients with a recent history (i.e. six months or less) of myocardial infarction.
4. Patients who have been hospitalised for cardiac failure during the past year.
5. Patients with any unstable or life threatening cardiac arrhythmia or cardiac arrhythmia
requiring intervention or a change in drug therapy within the past year.
6. Patients with malignancy for which the patient has undergone resection, radiation
therapy or chemotherapy within the last five years. Patients with treated basal cell
carcinoma are allowed.
7. Patients with lung diseases other than asthma (e.g. COPD).
8. Patients with known active tuberculosis.
9. Patients with significant alcohol or drug abuse within the past two years.
10. Patients who have undergone thoracotomy with pulmonary resection. Patients with a
history of thoracotomy for other reasons should be evaluated as per exclusion
criterion No. 1.
11. Patients who are currently in a pulmonary rehabilitation program or have completed a
pulmonary rehabilitation program in the 6 weeks prior to the screening visit (Visit 1).
Patients using oral corticosteroid medication at stable doses exceeding 5 mg
prednisolone or prednisolone equivalent every day or 10 mg prednisolone or
prednisolone equivalent every second day.
13. Patients with known hypersensitivity to anticholinergic drugs, BAC, EDTA or any
other components of the tiotropium inhalation solution.
14. Pregnant or nursing women.
15. Women of childbearing potential not using a highly effective method of birth control.
Highly effective methods of birth control are defined as those which result in a low
failure rate (i.e. less than 1% per year) when used consistently and correctly such as
implants, injectables, combined oral contraceptives, some intrauterine devices (IUDs),
sexual abstinence or vasectomised partner. Barrier methods of contraception are
accepted if condom or occlusive cap are used together with spermicides (e.g. foam,
gel). Female patients will be considered to be of childbearing potential unless
surgically sterilised by hysterectomy or bilateral tubal ligation/salpingectomy, or postmenopausal
for at least two years.
16. Patients who have taken an investigational drug within four weeks or six half-lives
(whichever is greater) prior to Visit 1.
17. Patients who have been treated with the long-acting anticholinergic tiotropium
(Spiriva®) within four weeks prior to the Screening Visit (Visit 1) or during the
screening period.
18. Patients who have been treated with beta-blocker medication within four weeks prior
to Screening Visit (Visit 1) or during the screening period. Topical cardio-selective
beta-blocker eye medications for treatment of non-narrow angle glaucoma are
allowed.
19. Patients who have been treated with oral beta-adrenergics within four weeks prior to
Screening Visit (Visit 1) or during the screening period.
20. Patients who have been treated with other non-approved and according to
international guidelines not recommended ´experimental´ drugs for routine asthma
therapy (e.g. TNF-alpha blockers, methotrexate, cyclosporin) within four weeks prior
to Screening Visit (Visit 1) or during the screening period.
21. Patients with any asthma exacerbation in the four weeks prior to the Screening Visit
(Visit 1) or during the 2-week screening period. In the case of an asthma exacerbation
during the screening period patients may be randomised four weeks following
recovery from the exacerbation.
22. Patients with any respiratory tract infection in the four weeks prior to the Screening
Visit (Visit 1) or during the 2-week screening period. In the case of a respiratory
infection during the screening period patients may be randomised four weeks
following recovery from the infection.

23. Patients who have previously been randomised in this trial or in the respective twin
trial or are currently participating in another trial.
24. Patients with a known narrow-angle glaucoma.

 

⇒つまり、心血管リスクが高い、心疾患のある集団は除外

 

I  チオトロピウム(総投与量 5 μg)レスピマット

C プラセボ

O 呼吸機能検査におけるFEV1の変化と重度な急性増悪までの期間

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●secondory endpoint

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他には、Quality of Life–5 Dimensions questionnaireも評価

 

 

A②その試験は設定された課題に答えるための研究方法がとられているか?
The two replicate trials had a randomized, doubleblind,
placebo-controlled, parallel-group design, with a 48-week study period.
⇒内的妥当性あり
 

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ただ、製薬会社の影響が強いstudyではある。

 
A③ 患者はそれぞれの治療群にどのように割り付けられたか?

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ブロック法を用いてrandomizationされている。

 平均年齢は53歳 乱数を用いてランダム化している

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Baselinecharacteristics were similar in the two trials
and well balanced between the study groups 
両群でベースラインに差はないとのこと
 
 
A④研究対象者、現場担当者、研究解析者は目隠しされている?

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サプリメントにのみ記載があり。ベーリンガーインゲルハイムが blindingをしていると。。。

さらに著者は全てのデータにアクセスできる

さらに製薬会社がトライアルのデザインをしている。

実際にどこまでblindできてるか不明

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A⑤研究にエントリーした研究者が適切に評価されたか?
ITT解析かは記載なし。

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ITT解析かは記載なし。
2つのstudyを行いあとで解析するというやや複雑なやり方。
脱落群も解析しているようなので、一応フォローは出来ている模様
 
A⑥研究対象となった介入以外は両方のグループで同じような治療がされていたか?

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一応、両群で差はなさそう

ただ、抗ヒスタミン薬はtiotoropium群で多い。

 
A⑦その研究のための対象患者数は偶然の影響を小さくとどめるのに十分な数か?

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重症な発作が起こるまでの期間で計算。数は足りている模様

 

B結果は何か?
B⑧a 結果はどのように示されたか? 

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●FEV1はLAMAを使用すると有意に改善 

 

●FEV1は有意に改善

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重度の急性増悪について

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⇒NNT:17

 

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c 副作用は

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ただ、アレルギー性鼻炎はLAMAで少し多い

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C臨床にこの結果はどのように応用できるか? 
 

 確かに呼吸機能はLAMAをICS+LABAを追加すると、改善する。重度の急性増悪に関してもNNT17と一定の効果はあるように思う。ではICS+LABAでコントロールが難しければLAMAを使うのか。

注意点としては製薬会社がdesignに濃厚に関与しているので、効果がより大きく出ている可能性もあるということ。

平均年齢も53歳と比較的若く、さらにAMIや心不全などは除外されている。さらに喫煙者も除外されているという点も注意が重要。

 

さらに今回使用しているLAMAはレスピマット製剤である点に注意。

レスピマット製剤は死亡率が上昇する危険性がある。

http://www.bmj.com/content/bmj/342/bmj.d3215.full.pdf

これは、レスピマットにより濃度が高くなり、副作用が出やすいからと言われてる。

 

そもそもLAMA自体が心血管リスクを上げるという指摘がある。

Inhaled Anticholinergics and Risk of Major Adverse Cardiovascular Events in Patients With Chronic Obstructive Pulmonary Disease | Cardiology | JAMA | The JAMA Network

 

心血管リスクを考えれば、ICS+LABAでコントロール不良のときの次の一手は、抗ロイコトリエン薬のほうが無難かもしれない。

ICS+LABAを怠薬なく使用し、喫煙もしていないにも関わらずコントロール不良でさらに重度の急性増悪をきたした、比較的若年の基礎疾患がないという患者群では追加治療としてLAMA吸入を考慮しても良いか。

ただ、そのような喘息患者は少ないうえに、プライマリ・ケア医が診るべきではない気もします。

つまり、僕らが喘息患者にLAMAを使用することは、ほぼないのかもしれません。