コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

Wide QRS tachycardia 上か下か

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昨日は当院の循環器内科をやっていたレジデントのレクチャーがありました。

Wide QRS tachycardiaがあったときに、上室性由来かVTかは悩ましいと思います。

 

基本原則は。。

・血行動態が不安定 or 心機能が不良なWide QRS tachycardiaは心室性として扱う
・悩ましければATP使用して改善あれば上室性 改善なければVT

 

そしてECGから上室性 or VTを鑑別するにはどうしたら良いかという話になりました。

 

 

基本は下記のブルガダアプローチ。

これに則って考えました。

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前胸部誘導でRSパターンがなければVT

RSコンプレックスがなければVTといえますが、あってもVTではいえないことに注意です。

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前胸部誘導でRSパターン>100msecか ⇒幅広ければVT

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房室解離があるかどうか!!!⇒房室解離があればVT

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この青矢印のところはP波にあたります。つまりP波と、全くバラバラに心室から波形が出ていることを示している⇒房室解離

 

 

 

上記3つの所見が基本です。

最後のブルガダアプローチの項目が、VTに特徴的な波形があるかですが。。

こちらは、正直少し難しく感じます。

 こちらの図が分かりやすいので一応、貼っておきます。

ECG Rhythms: Aberrancy

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他に特徴的な所見として。。

 

 

心室捕捉があればVT

下記のようにたまたま、P波が心室に届いた場合一時的に正常なnarro QRSの波形がでます。これを心室捕捉と言います。これがあればVT

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融合収縮があればVT

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一番最初のnarrow QRSは心室と上室性の波形が融合している。 続くnarrow QRSは心室捕捉

 

 

V1~V6誘導のQRSが同じ方向を向いている(concordant)⇒VT

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前胸部誘導でPositive concordance 

 

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前胸部誘導で NEGATIVE concordance 

 

 

 

下記のページは非常にまとまっています。ご一読を。

lifeinthefastlane.com

 

 

 

とはいえ、あくまで目安なので。。。

原則は、疑わしければ罰する。

つまり、よく分からないWide QRS tachycardiaは心室性として扱うのが妥当かと思われます。

チーフのGIM巡り 第2弾! 東京ベイ浦安市川医療センター

チーフのGIM巡り第2弾!

日本におけるホスピタリストの代名詞!

東京ベイ浦安市川医療センターに伺いました。

アメリカでは、ホスピタリストという病棟管理の専門家が、病棟診療を一手に請け負っているとのことですが、ホスピタリストシステムを導入している新進気鋭の病院になります。

ホスピタリストだけでなく、ER医、closed ICUの専属医が中心である最先端のシステムを構築されていました。

 

東京ベイ浦安市川医療センターがある浦安市は、あの超有名テーマパークがあることで有名な都市になります。

東京23区の最東端の江戸川区に隣接した場所に位置しているため、東京都へのアクセスも非常に良好です。

以下 wikipediaより

浦安市(うらやすし)は、千葉県北西部の葛南地域に位置するである。市内に東京ディズニーリゾートがあることで全国的に知られており、近年では財政力指数において常に上位に位置し(平成24年度では市として首位[1])、非常に豊かな市としても有名である。東京都特別区部への通勤率は49.5%(平成22年国勢調査)。

 

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以下東京ベイ浦安市川医療センターの写真(ホームページより)

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2012年にリニューアルオープンした病院なので非常に施設もきれいでした。

浦安の中でも内陸に位置しており、周囲は基本的には住宅地が多い場所です。

患者さんも高齢化しており、在宅医療もそれなりに発達している印象の地域になります。

実際、患者さんの高齢化率も高かったです。

 

 

 そして、本題の東京ベイ浦安市川医療センターの総合内科についてです。

まず、やはり皆さんモチベーションが非常に高かったです。

教育熱心でかつ勉強熱心な先生方が集まっていました。

新入院患者は朝にケースレビューを行っていましたが、プレゼンターへの教育的なコメントをされているのが印象的でした。

循環器のショートレクチャーもありましたが、個人的には知らない知識もあり大変勉強になりました。

 

その後チームの回診にも同行させていただきました。こちらは非常にオーソドックスかつ基本に忠実なスタイルで、全ての病棟患者をチームで回診していました。

患者ごとにレジデントの先生がプレゼンし、それに対してチームリーダーがフィードバックを行うスタイルでした。チーフの出身の京都の某GIMのスタイルとほぼ同様でした。

そして確かに全ての内科疾患を総合内科で病棟管理しており、まさにホスピタリストという印象でした。

入院の大半は救急からの入院とのことでしたが、救急にはER医が常駐しており、総合内科はホスピタリストとして病棟に集中できる印象でした。

患者さんのバリエーションにもとんでいたのですが、特に循環器内科領域は専門家との連携も良く、かなり専門性の高いところまで診療されている印象でした。

昼間にはACP journal clubを用いた勉強会もされており、そちらもレジデントの先生がほぼ出席されており、教育への高い意識があらわれていました。

日中も救急や外来からの新入院を受け入れ、さらに最後にチームで、振り返りも行っており、十分なフィードバックをされていました。

急性期病棟管理を集中して高いレベルで研修可能な印象でした。

中規模病院なので大病院のように、全ての領域で十分な専門家がいるわけではないようでしたが、幅広くかつ深いところまで診療されていました。

非常に勉強になりました。

平岡先生、山田先生、江原先生、平岩先生、吉野先生、そして案内してくださったレジデントの先生方、本当にありがとうございました。

個人的にも非常に得るものが大きかった見学でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

症例カンファレンス 2017年3月10日

 

 

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今日は症例カンファレンス。

60台 3日の経過の咳嗽・発熱で来院。

他特に症状なくバイタル安定。

胸部聴診所見、胸部レントゲン、インフルエンザ問題なし。

上気道炎で対処療法で帰宅。

⇒実は1ヶ月前から右前腕近位部の痛みがあり同日、整形受診し、尺骨の病的骨折を指摘され内科で精査を依頼!!

 

レントゲンは尺骨・橈骨が全体的にスカスカ。二次性の骨粗鬆症??

Ca/Pや甲状腺は正常。 

ただ、その後3日間発熱継続。全身状態は悪化。鑑別は??

 

病的骨折を診た時は。。

①二次性骨粗相症

②骨の悪性腫瘍

 

②の中でも原発性骨腫瘍、転移性骨腫瘍、多発性骨髄腫を主に考えました。

ただ、蛋白アルブミン解離は認めず。

溶骨性骨転移の代表格は、肺癌・乳癌・腎癌。

それらを念頭に全身CTを考慮します。

 

ただ。。

今回の症例では。。

初診時に見逃していた所見が再診時に見つかり確診に至りました。

 

全身リンパ節が著明に腫大していました!

さらにLDHも最初から上昇していたのが再診時にさらに上昇。

もうお分かりですね。

後日、DLBCLと判明しました。 

 

jyoutoubyouinsougounaika.hatenablog.com