コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

ブチルスコポラミンは死前喘鳴に効くのか?

死前喘鳴でできることがあるのか?

www.seirei.or.jp

 

三方原の緩和ガイドではハイスコを推奨されているが、どれほど効くのか?

 

Effect of Prophylactic Subcutaneous Scopolamine Butylbromide on Death Rattle in Patients at the End of Life: The SILENCE Randomized Clinical Trial | End of Life | JAMA | JAMA Network

 

JAMAに掲載された論文

 

死前喘鳴とは,気道に粘液が存在するために起こる騒がしい呼吸と定義され,臨死期の患者に比較的よくみられる。臨床ガイドラインでは、非薬物療法がうまくいかなかった場合に、死の騒音を軽減するために抗コリン薬を推奨しているが、その有効性に関するエビデンスは不足している。抗コリン薬は粘液産生を減少させるだけであることから、予防的に投与することがより適切であるかは不明である。

 

目的 予防的なスコポラミンブチルブロミドの投与が死前喘鳴を減少させるかどうかを判断すること。

 

デザイン

オランダの 6 つのホスピスで、多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験を行った。

 

患者

ホスピスに入院した余命3日以上の患者を対象に、2017年4月10日から2019年12月31日まで、事前のインフォームドコンセントを依頼した。同意が認められると、適格基準を満たす患者を無作為化した。事前インフォームドコンセントを提供した229名の患者のうち、162名が最終的に無作為化された。最終フォローアップの日付は2020年1月31日であった。

 

介入

スコポラミンブチルブロミド20mgを1日4回皮下投与(n=79)、またはプラセボ(n=78)。

 

主要アウトカムおよび測定

主要アウトカムは、4時間間隔で連続する2つの時点で測定されたグレード2以上の死前喘鳴の発生であった。

副次的アウトカムとして、抗コリン作用の有害事象が含まれた。

 

結果

無作為化された162例のうち、157例(97%、年齢中央値76歳[IQR、66~84歳]、女性56%)が一次解析に含まれた。

死前喘鳴は、スコポラミン群では10人(13%)、プラセボ群では21人(27%)で発生した(差、14%;95%CI、2%-27%、P = 0.02)。

死前喘鳴までの時間は、ハザード比(HR)は0.44(95%CI、0.20-0.92;P = .03;48時間での累積発生率。スコポラミン群8% vs プラセボ群17%)。

スコポラミン群とプラセボ群では

落ち着きのなさは79人中22人(28%)対78人中18人(23%)

口渇は79人中8人(10%)対78人中12人(15%)

尿閉は26人中6人(23%)対18人中3人(17%)にそれぞれ発生した。

結論と意義

終末期の患者において、予防的なスコポラミンブチルブロミドの皮下投与は、プラセボと比較して、死前喘鳴の発生を有意に減少させた。

 

 

◯感想

今回の論文は予防的なブチルスコポラミンの投与をした論文であり、それなりの効果はありそう。

ただ死前喘鳴を起こしてからの投与はどれほど有用かは不明。

それでも試す価値はあるか。