プロカルシトニンは壊死性筋膜炎を予測できるか?
壊死性筋膜炎疑い。
プロカルシトニン高値。
プロカルシトニンは壊死性筋膜炎の予測に使えるのか?
プロカルシトニンのレビュー
血中PCTの上昇は、進行中の深刻な組織損傷を示唆する可能性がある。
⇒術後、1日目と2日目のプロカルシトニンの値が、外科的治療の成功を予測する。
プロカルシトニンの低下は治療効果判定にも使えるかもしれない。
Usefulness of serum procalcitonin for necrotizing fasciitis as an early diagnostic tool
◯背景
壊死性筋膜炎(NF)は早期診断が重要であり、良好な転帰をもたらす可能性があるが、蜂巣炎との鑑別が困難であり、適切な治療が遅れることがある。
◯対象者および方法
NFと蜂巣炎を正しく鑑別するための診断ツールを検討する目的で、本ケースコントロール研究を実施した。2014~2019年の間に当院でNFと診断された全患者をレトロスペクティブに検討した。対照群として、研究期間中に蜂巣炎と診断された患者を無作為に抽出した。
NFの重症度は、血清プロカルシトニン(PCT)、LRINECスコア、NTSI評価、SIARIスコアで評価した。
◯結果
本研究では、合計25名のNF患者が登録された。年齢中央値は68歳(範囲39-79)、18名(72%)が男性であった。
NF群と蜂巣炎群を比較すると、NF群は蜂巣炎群よりLRINECスコアと血清PCTが高かったが、血清PCTには統計的有意差はなかった。
NFと蜂巣炎を鑑別する診断価値に関して,血清PCTとLRINECスコアのROC曲線下面積は0.928[95%信頼区間(CI)0.864-0.992,p<0.001]と0.846(95%CI 0.757-0.936,p<0.001)であった.
適切な血清PCTカットオフ値は1.0であり,感度88%,特異度89%,陽性予測値81%,陰性予測値93%であった.
◯結論
血清PCTはNFと蜂巣炎の鑑別診断に有用なマーカーとなり得る。
プロカルシトニンはNTでは平均40だが蜂窩織炎では1.0が平均
Procalcitonin | 40.4 ± 60.3 | 1.0 ± 4.2 | 0.003 |
NFと蜂窩織炎のoutcomeの違い
◯AUCカーブはプロカルシトニンが最も値が良い。
◯感想
プロカルシトニンは壊死性軟部組織感染の診断に有用かもしれない
今回の研究はケースコントロール研究なので、選択バイアスの問題が否定できない。
さらにプロカルシトニンを測定した症例のみを集めているのでより、選択バイアスがありえる。
また大学病院であり重症例が集められているというのも選択バイアスとなるかもしれない。
NF群のほうがCKDが多いため、ベースラインの患者はNFが不良である可能性もある。
ただ、それでも明らかにNFでプロカルシトニンが上昇している傾向はある。
実臨床でもプロカルシトニンが著増している軟部組織感染では、NFを積極的に考えるという戦略はありかもしれない。
ただ、プロカルシトニンが増加していないから壊死性軟部組織感染ではないというのは、厳禁で全体的な臨床像で判断。
今後の、コホート研究に期待。