コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

SAPHO症候群と掌蹠膿疱症性骨関節炎

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SAHPO症候群とPAOに関する最新のレビュー

必読です!

 

 

○概要

滑膜炎-膿疱症-骨過形成-骨炎(SAPHO)症候群は、掌蹠膿疱性関節骨炎(PAO)を含む多くの疾患を包含する稀な炎症性骨関節疾患である。骨炎、滑膜炎、骨膜過形成などの筋骨格系症状はSAPHO症候群の特徴であり、全身の様々な部位に発症する。最近の調査では、日本におけるSAPHO症候群の80%以上が1981年にSonozakiらによって提唱されたPAOであるのに対し、イスラエルにおけるSAPHO症候群参加者の皮膚疾患は重度の痤瘡が最も多く報告されている。

SAPHO症候群の有病率は不明であるが、日本では掌蹠膿疱症(PPP)の有病率は0.12%と報告されており、PPP患者の10-30%がPAOを有していることが判明している。

SAPHO症候群とPAOは、30代から50代の患者に多くみられ、両群とも女性に優位に見られる。

診断は通常、リウマチ専門医または皮膚科専門医によって行われる。

診断には、診断基準と同様に、概略を説明した様々な臨床的、放射線的、および検査的特徴の確認が行われる。

治療の目標は、健康関連のQOLを最大限に高め、構造変化や破壊を防ぎ、身体機能や社会参加を正常化することである。

 

 

○1981年に園崎が提唱したPAOの診断基準。
1 掌蹠膿疱症(PPP)と診断された患者
2 以下の2つの基準のいずれかを満たす患者。
(a) 肋鎖骨部または胸骨部の両側に圧痛を伴う明らかな腫脹があり、X線所見が陽性であるか否かを問 わず、肋鎖骨部または胸骨部の両側に圧痛がある。
(b) 肋骨部または胸骨部の両側に明らかな腫脹を伴わない圧痛があり、圧痛部位に X 線の陽性所見がある。

基準の1と2を両方満たしたら診断とする

 

 

○Kahn が提唱した SAPHO 症候群の診断基準  (2003 年に修正)
・包含基準 

 掌蹠膿疱症および尋常性乾癬に伴う骨関節病変 
     重症痤瘡に伴う骨関節炎 
     孤立性無菌性過骨症/骨膜炎(成人) 
     慢性再発性多巣性骨髄炎(小児) 
     腸疾患に伴う骨関節病変 


・除外基準

 感染性骨炎 
     骨の腫瘍性疾患 
     Non-inflammatory condensing lesions of the bone
診断 5つの包含基準の1つ、および3つの除外基準を満たす

 

 

 SAPHO症候群は掌蹠膿疱症のイメージが強いが、PAO、炎症性腸疾患(IBD)関連脊椎関節炎、乾癬性関節炎を含む多くの疾患を包括する傘(広い意味の症候群)と考えられている 

 

 

 

掌蹠膿疱症に伴う胸鎖関節炎をSAPHOと言いがちだが、むしろシンプルに掌蹠膿疱症性骨関節炎とするほうが堅実

日本ではSAPHO症候群の8割が掌蹠膿疱症で、痤瘡は2割弱 一方で、イスラエルでは痤瘡の報告が多い →そもそも、日本ではSAPHO症候群に痤瘡を合併することが少ない なお、重度の痤瘡はacne fulminansとも呼称され経口ステロイドを使用することも

 

 

 

○症状

骨関節症状

中国のSAPHO症候群の骨シンチグラフィーと磁気共鳴画像法(MRI)を受けた患者において、前胸壁病変(100%)、脊椎病変(60.6%)、仙腸関節病変(39.4%)、末梢関節病変(31%)、頭蓋骨病変(12.7%)、および骨盤病変(4.2%)であった 日本の多施設共同研究における165人のPAO患者の骨関節痛の部位は次のとおり 前胸壁(81%)、肩(21%)、腰椎(12%)、膝(8.5%)、頸椎(6.7%) 、指または足首(5.5%)、仙腸関節(4.8%)

→やはり前胸壁病変は多いが、脊椎関節炎に準じた病変も考慮する

 

滑膜炎

前胸壁病変は一般的であり、患者の76%(60%で両側)の胸鎖関節に病変を認める。

胸肋関節は患者の15%で病変を認める。

→SAPHO症候群を診断するには、これらの領域の圧痛、腫れ、発赤を評価する詳細な検査が重要。

なお、末梢関節病変は患者の約30%で報告

 

骨炎など

胸壁前壁および胸骨周囲の骨炎(MRIでの骨髄浮腫)もSAPHO症候群/PAOでよく見られる。

胸骨の骨硬化も認める

さらに仙腸関節や脊椎関節についても、脊椎関節炎に準じた病変を認める

 

皮膚病変

SAPHO症候群で見られる皮膚症状には、掌蹠膿疱症に加えて重度の痤瘡を認める。

皮膚病変が関節炎のあとから発症することも

 

 

→やはり脊椎関節炎に準じた身体所見が重要 胸鎖関節に注目しがちだが、脊椎や仙腸関節も重要

 CTで非常に特徴的な骨硬化所見を認める(胸骨など)

 MRIも骨炎の検出に有用

 掌蹠膿疱症の診断も重要であり皮膚科にコンサルトが必要

 

○治療

まずは禁煙

細菌感染症を合併しているなら感染症の治療も行う

 

薬物療法

脊椎関節炎の治療に準じて、十分量のNSAIDS(例 セレコキシブ400mg/日)

コルヒチンも効果があるという報告も(1mg/日程度?)

骨炎を合併している場合はCRMOに準じてビスホスホネートも使用

ビスホスホネートは点滴がベターだが日本では内服にせざるおえないことも

→NSAIDS+コルヒチン+ビスホスホネートの併用療法もあり?

 

それでも改善が乏しければ、脊椎関節炎(乾癬性関節炎)に準じて治療

DMARDとしてメトトレキサート、サラゾスルファピリジンが候補

乾癬性関節炎に準じて、ホスホジエステラーゼ4阻害薬も

 

Bioも有用。

こちらも、乾癬性関節炎に準じてTNFα阻害薬が有用

他には、IL17,IL23の阻害薬も同様に有用かもしれない

 

 

膠原病ではまずこの一冊