コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

高齢者の寝たきり度と、認知症高齢者の自立度と、既存のADL指標との関連

 

bmcgeriatr.biomedcentral.com

 

寝たきり度

 

1年前の佐賀大学の多胡先生の論文ですが、さらっとまとめました。

この介護保険で使われている基準をほかの既知の基準と比較して妥当であるかを検討した研究になります。

個人的にこの多胡先生の研究の発想、めっちゃ好きです。

着目点が良いですし、なによりこの研究は、非常に応用が効きます。

ADL評価としてBarthel Indexは頻用されますが使いにくいです。

しかし、この多胡先生の研究があれば、介護保険で使われる上記基準をADLや認知機能の指標として今後の研究に使うことが可能になります。

まじで、ありがたい研究かなと。

たぶん、今後、引用されまくると思うので、IF以上の価値がありそうです。

 

 

〇要旨

背景
寝たきりランク(BR)や認知機能スコア(CFS)など、日本の公的な日常生活動作(ADL)分類の統計的妥当性については、まだ評価されていない。そこで、BRとCFSのADL評価能力を評価するために、評価者間信頼性と基準関連妥当性を用いて評価した。

方法
75歳以上の新入院患者を対象とした病院ベースの前向き観察研究。BRとCFSの評価は、主治医の看護師が1回、ソーシャルワーカーと医療事務員が1回行った。評価者間の信頼性は,一致率,カッパ係数,クロンバッ クのα,クラス内相関係数を算出し,評価者間の信頼性を評価した.また、Barthel Index、Katz Index と BR、CFS との相関を Spearman の相関係数を用いて推定した。

結果
登録された271名の患者について、初回評価時のBRは、正常66名、J1 10名、J2 15名、A1 18名、A2 31名、B1 37名、B2 35名、C1 22名、C2 32名であった。2回のBR評価間の一致率は68.6%,カッパ係数0.61,クロンバックのα0.91,クラス内相関係数0.83であり,良好な評価者間信頼性を示した.また、BRはBarthel指数(r=-0.848、p<0.001)およびKatz指数(r=-0.820、p<0.001)と負の相関があり、正当な基準関連妥当性を示していた。

一方、初回評価時の CFS は、正常 92、1a 47、2a 19、2b 30、3a 60、3b 8、4 8、M 0 であり、2 つの CFS 評価の一致率は 70.1% で、カッパ係数 0.62、Cronbach のα 0.87 、クラス内相関係数 0.78 であり、良好な相互信頼性も示され た。CFSはBarthel Index(r = - 0.667, p < 0.001)およびKatz Index(r = - 0.661, p < 0.001)と負の相関があり、正当な基準関連妥当性を示していた。

結論
BRとCFSは、急性期臨床や大規模スクリーニングにおいて、信頼性が高く使いやすいADL評価尺度となりうる。また、異なる職種の間で高い評価者間信頼性があり、ADL評価尺度として確立されているが、使い方が複雑な尺度と有意な相関がある。

 

 

綺麗にBarthel Indexと寝たきり度が相関していますね。

今後の研究としてはMMSEと認知機能スコア(CFS)の関連を調べるとのこと。

それも楽しみですね。

研究のアイディアを公開することは気が引けますが、僕ならとFAST(Functional Assessment Staging of Alzheimer's Disease)の関連について評価が気になります。

 

老年医学をしっかり研究したり深めることは日本のホスピタリスとにとって必須ですね。