戸原先生 摂食・嚥下障害への対応
戸原先生の誤嚥性肺炎の御講演を拝聴しました。
戸原先生の総説があったので、まとめてみました。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ajps/5/3/5_265/_article/-char/ja/
戸原先生の御指摘として、一側性の脳血管障害で嚥下障害を発症することは稀とのことでした。
嚥下は両側性支配なので、真の意味での嚥下障害は(脳幹梗塞などを除き)稀なので、安易に嚥下を諦めないことが大切と言うメッセージでした。
実際に胃瘻を増設しても後に食べれるようになるケースがありますし、本当は自然に食べれるようになったのにそのまま絶食になるということもあります。
下記のように実際には嚥下機能が保たれているにもかかわらず、絶食や嚥下食になっている例があります。
逆に、明らかに嚥下機能が低下しているにも関わらず常食を食べている例があり、そのような嚥下機能と食事形態の不一致が問題となります。
よって、嚥下評価が重要になります。
スクリーニングとしては以下が有用です。
反復唾液テストは極めて簡単ですね。ERでも出来ます。
水飲みテストとフードテストはSTじゃないと出来ないというイメージがあるかもしれませんが、誰でも出来ます。
身体診察です。
トロミ水とゼリーを実際に飲んでもらい、その様子を観察すれば良いだけです。
評価基準は以下の通り。
なお、覚醒して、座れて、喋れたら、嚥下機能はほぼ保たれているという戸原先生の御言葉は、その通りだと感じました。
なお、これは知りませんでしたがクエン酸生理食塩水吸入薬で咳嗽が誘発させることで咳反射を評価する方法もあるようです。
嚥下内視鏡は嚥下評価として極めて有用です。
私も、一度触らせてもらいましたが、最近はワイヤレスのタイプも出ていて在宅でも使用できるという利点があります。
噛む力や口腔機能の改善が食事やADLに好影響を与える可能性もあるため、歯科介入で口腔衛生を改善させることが重要です。
なお、舌萎縮を認める場合は舌接触補助床が有効なことがあります。
このような視点は嚥下を専門とした歯科ならではですね。
なお、噛む力だけでなく開口も重要です。
実際の嚥下障害患者に対して最大開口位まで開口させた状態で10 秒間保
持するのを1 回として,5 回1 セットで1 日2 セットの訓練を毎日行わせたところ,舌骨上方移動量,食塊の咽頭通過時間および食道入口部開大量に有意な改善が認められたという報告があります。
これは下記のように簡便に出来るため有効ですね。
ということで、今後摂食嚥下に関しては医科歯科連携が極めて重要になると考えます。
また、高齢者や嚥下障害がとても多いということは、チャンスであるとも思います。
つまり、臨床研究のテーマが豊富になるということなので、みんなで臨床研究していきたいですね!