総合診療の未来は明るい 第14回若手医師のための家庭医療学冬期セミナー 所感
今年の冬期セミナーも本当に盛り上がりました!
私も、若い先生方から元気を頂きました。
総合診療には専門性がないとよく言われますが、決してそんなことはないと考えます。
例えば、家庭医療学の専門性は分かりにくいだけで、実在すると思います。
マルチモビリティ、複雑性を扱う専門家であると言っても過言ではないと思います。
今回、ポートフォリオの発表会に参加したときに、藤沼先生と尾藤先生の解説を聞くことが出来ました。
家庭医療学の理論やフレームワークは、総合内科出身の私にとってもとっつきにくいものでしたが、最近徐々に腑に落ちるようになってきました。
藤沼先生もおっしゃっていましたが、それらの理論やフレームワークは「人柄が良い医者」ということとイコールではない、全人的に診るための専門的な技法なのだと思います。
とても藤沼先生や尾藤先生の深みにまではいけなさそうですが、確かにそれ自体に専門性があるということは感じることが出来ました。
では、家庭医療だけが総合診療の要素なのかというとそうではないと思います。
日本の総合診療は「Generalist Medicine」と呼びたい - 藤沼康樹事務所(仮)for Health Care Professional Education
藤沼先生のブログにあるように以下の大前提が成り立ちます。
日本の総合診療=家庭医療学×総合内科
つまり、ドクターG的な臨床推論も総合診療の範疇に入ってきます。
総合内科的に、不明熱の臨床推論を適切に行いスティル病と診断に結び付け専門家に繋げるというのも総合診療の魅力だと思います。
その一方で、認知症の誤嚥性肺炎患者に対してBPSモデルで状況を整理し、ICFに基づいたリハビリテーションを行い、退院前にACPを行う。
そして終末期になった際に家族カンファレンスを行い本人の推定意思決定をサポートし、さらに終末期の緩和ケアを行う。
このようなことも総合診療の範疇に入ります。
そのような幅広さが総合診療の面白さだと考えています。
そして、ただ幅広いというだけではなく前述の総合的に診る専門性がその中心にあるのだと考えています。
例えば、私のライフワークである誤嚥性肺炎に関しては総合診療の専門性を存分に発揮できます。
よって私は誤嚥性肺炎に関しては深い専門性があるのではと自負しています。
とはいえ、私は誤嚥性肺炎に関連してリハビリも勉強していますが、リハビリの専門医と言うわけではありません。
総合診療の専門性に関連するリハビリの領域については深めていますが、嚥下造影や嚥下内視鏡などのいわゆるリハビリ医が行う専門領域についてはそれほど知りません。
また老年医学の専門医ではありませんが、総合診療に関連した老年医学領域はCGAフレームワークとして深めようとしています。
このような総合診療の専門性を、サブスペシャリティというのは適切ではありません。
詳細は下記をご覧ください。
総合診療領域のサブスペシャリティとは? | The SPELL blog
とはいえ総合内科的な面白さも、総合診療をするうえでは捨てきれません。
内科の最新の知識をアップデートし続けることも総合診療医としては重要です。
たとえば下記のJHNというサイトでは良質な二次資料を無料で診ることが出来ます。
このような内科的な知識のアップデートも総合診療医には欠かせません。
Clinical question | JHospitalist Network
家庭医と総合内科の交わるところという意味で、病院総合医はキーポイントになってくると思います。
日本の総合診療=家庭医療学×総合内科ですので、人によって総合内科的な要素が強いという個別性があっても問題ないと考えています。
総合内科医も家庭医もひっくるめて、総合診療医であるというのがとても大切な観点だと思います。
少なくとも私は、臨床推論、内科マネージメントのみならず、緩和ケア、老年医学、リハビリ、臨床倫理、病院家庭医療学の実践、質改善、病院経営、教育など多方面において専門性を発揮する総合診療という分野が面白くて仕方がないと思っています。
総合診療の未来は明るいと確信しています。
冬期セミナーでイキイキと活躍する後輩の先生方を見て、なおその実感を強めました!