コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

病院総合医のベースは内科か、家庭医療か。

病院総合医のベースは内科か、家庭医療か。

病院総合医の中でも意見が分かれているように思う。

僕は病院家庭医を提唱しているが、それにはいくつかの理由がある。

まず総合診療専門医と内科専門医の違いが何かわからなくなる。

総合診療専門医は小児科と救急が診れる内科医という訳が分からない話になる。

大概の方は、ここを間違っている。

総合診療は複雑系や全人的に診ることを専門にした診療科であり、その学問的基盤は家庭医療であるというのが大原則である。

ここが得心できるかどうかが重要になる。

病院総合医あるあるだが、誤嚥性肺炎や尿路感染、高齢者の社会的入院、心理社会的に複雑な症例、救急などを診させられているということになる。

本当は、俺は内科医で高尚な内科診断学や内科的に興味深い疾患の治療がしたいのに、こんな雑用ばかりさせれて。と心が荒む。

そうではなく、むしろそれらの複雑系を診ることが自分の専門性であると得心できれば、心は非常に楽になる。

そして、それらを深め専門にし教育活動を行ったり、出版したり、研究したりすることも可能になる。

よって病院家庭医を病院総合医の中核モデルに据えたほうが良いという理由はそこにある。。

ただ何事にも例外はあり、「総合内科」として病院総合医が内科疾患を幅広く診ることが出来る場合では内科を病院総合医コンピテンシーの中心に据えたほうが良いこともある。

多くは比較的大規模の急性期病院で急性期内科病棟における重症度が高く、さらに病院上層部の理解があり、総合内科トップのマネジメント能力が高く、院内での地位を確立している場合などが挙げられる。

また純粋に地方で内科医が不足している場合や、総合内科と言いつつも感染症膠原病の専門を持っている場合が挙げられる。

これらの場合は内科医として求められる能力が非常に高いものになるので「家庭医療をやっている場合ではない」ということになる。

そしてこれらの内科ベースの病院総合医では、後期研修医も総合診療ではなく内科の後期研修医ということになる。

これらの内科ベースの病院総合医の役割も大きい。将来、専門内科に進む内科専攻医にも幅広い内科知識や総合診療の心構えを伝えることが出来るからだ。

とはいえ。。

内科ベースの病院総合医であると、自分は内科医であるにも関わらず他の内科医が診たくない症例ばかりみているという発想にどうしてもなってしまう。

よって、うまく総合内科が機能している施設では良くても、他の施設では他の内科医が診たくない疾患ばかり、押し付けられるということになる。

誤嚥性肺炎や高齢者医療、心理社会的に複雑な問題、多併存疾患が自分の専門分野であり、遣り甲斐がある仕事と思えれば、内科ベースでも病院総合医は問題ない。

ただ現実的に、ただ内科をやっているだけでは複雑系は診れない。

よって、内科ベースだからこそどこかで、家庭医療を勉強したほうが潰しが効きやすいし、心も荒みにくい。

新しい病院総合診療専門研修でも病院家庭医の概念は非常に重要になるだろう。

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