コクランレビュー HPVワクチン
意訳ですので、実際の適応は英語の原文を読んだうえで、ご自身の責任でお願いします。
〇背景
高リスクのヒトパピローマウイルス(hrHPV)型による持続感染は、子宮頸部前癌および癌の発生と因果関係がある。 HPVタイプ16および18は、世界中の子宮頸癌の約70%を引き起こす
〇目的
少女や成人女性における子宮頸部前癌およびHPV16 / 18感染に対する予防的ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの有害性および効果を評価すること。
〇検索の方法
MEDLINE、 Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL) 、 Embase (June 2017)を検索。
さらに、死亡率および重篤な有害事象の未発表データを特定するために、治験や企業のデータも検索した。
〇選択の基準
ランダム比較試験、でHPVワクチンの効果と安全性をプラセボ(アジュバンド or 他のワクチン)と比べた試験。
〇データの収集と解析
子宮頸部前癌病変(頸部上皮内異形成2型以上(CIN2 +)、CIN3以上[CIN3 +]、および上皮内腺癌 [AIS])に対する効果の確実性を評価するためにコクランの方法論およびGRADE systemを用いた。
参加者のベースラインHPV DNA状態によってワクチンの効果を分類した。
アウトカムは、HPVの型に関係がある前癌病変と、関係がない前癌病変である。
効果は、ワクチン郡と対照群のリスク比(RR)で計算する。
〇結果
26件のRCT(73,428人の参加者)を解析した。
1.3〜8年のフォローアップを伴う10件の試験では、CIN / AISに対する効果が取り上げられた。
ワクチンの安全性は、23の研究において6ヶ月から7年の期間にわたって評価された。 子宮頸癌(前癌病変でなく)の転帰を評価するのに十分な大きさではなく、または十分な期間ではなかった。
この試験の1つを除くすべてがワクチン製造業者によって資金提供された。
ほとんどの試験はバイアスのリスクが低いと判断した。
研究は一価(N = 1)、二価(N = 18)および四価ワクチン(N = 7)が含まれていた。
ほとんどの女性は26歳未満だった。
3つの試験で25歳以上の女性で検討した。
少なくとも1回の予防接種を受けた参加者でのワクチンの効果を検討。
〇hrHPV が陰性の場合
HPVワクチンは、青年期の女児および15歳から26歳の女性において、プラセボと比較して、HPV16 / 18に関連するCIN2 +、CIN3 +、AISを低下させた。
CIN2 +を164/10000から2/10000に低下させるRR 0.01(0〜0.05)
CIN3 +を70/10000から0 / 10,000に低下させるRR 0.01(0.00〜0.10)
AISを 9/10000 から 0/10,000に低下する RR 0.10 (0.01 to 0.82).
〇HPV16/18が陰性
15〜26歳の患者では、HPV16 / 18に関連するCIN2 +が113/100000から6 / 10,000に低下するRR 0.05(0.03〜0.10)
しかし、24歳以上の女性では、HPV16 / 18に関連するCIN2 +のリスク減少は若年者よりも小さい⇒ 45 /10000 から 14/10,000, (RR 0.30 (0.11 to 0.81)
HPVワクチンは、 若年女性のHPV16/18 に関連するCIN3+ と AIS をそれぞれ、 (RR 0.05 (0.02 to 0.14) RR 0.09 (0.01 to 0.72)と減少させる。
〇HPVDNAの状態にかかわらない場合
若年女性では、HPVワクチンは、HPV16 / 18に関連するCIN2 +が341/10000から157 / 10,000(RR 0.46(0.37〜0.57)とリスクを低減する。
HPV16 / 18に関連するCIN3 +についても、同様の危険性の低下が観察された。
HPV16 / 18に関連するAISを有する女性の数は、HPVワクチンでは14/10000から5 / 10,000に減少する。
HPVワクチンは、CIN2 +を559/10000から391 / 10,000 RR 0.70(0.58〜0.85)
そしてあらゆるAISを17/10000から5 / 10,000(RR 0.32(0.15〜0.67))に減少する。
CIN3 + のリスクの減少は、ワクチンタイプによって違った。二価ワクチン:RR 0.55(0.43〜0.71)および四価ワクチン:RR 0.81(0.69〜0.96)
〇副作用
重篤な有害事象のリスクは、すべての年齢の女性において対照およびHPVワクチンは同様であった。 (669対656 / 10,000、RR 0.98(0.92から1.05)
死亡率は対照群で11 / 10,000であるのに対してHPVワクチン郡は14 / 10,000(9〜22)(RR 1.29 [0.85〜1.98])とほぼ、同様であった。
死亡者数は全体的には低かったが、高齢女性では死亡者数が多い傾向だった。
〇結論
思春期の少女や15歳から26歳までの若い女性では、HPVワクチンが子宮頸部前癌を予防するという確かな証拠がある。HPV 16/18に関連する病変は、HPVの種類にかかわらない場合よりも高い効果を示し、登録時にhrHPVまたはHPV16 / 18DNAについて陰性である患者においては、HPV DNA状態について評価されていないものよりも大きい。
HPVワクチンは、HPV16 / 18陰性である高齢女性ではCIN2 +を低下させる。
重大な副作用のリスクが増加することはなかった。ワクチン接種を受けた25歳以上の女性には死亡者が多めだが、死亡者数は全体的には少なく、ワクチンに関連しないと判断された。
HPVワクチン接種後の有害な妊娠結果のリスクが完全に排除できないが、不妊や、流産リスクは変わりない。
今後は、子宮頸癌をワクチンが予防するか、あるいはワクチンによる稀な有害事象の発生およびワクチンによる妊娠への影響をモニターするためには、長期間のフォローアップが必要である。